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楽器演奏者(管楽器・弦楽器)の歯や顎への負担とケア方法~その1:管楽器・弦楽器が歯や顎へ及ぼす影響について~

2025年11月2日

はじめに

「管楽器や弦楽器は歯や顎に悪い」
なんとなく、そんなイメージを持っている方が多いようです。
「子供が管弦楽の部活に入りたいっていうんだけれども、歯並びが悪くなりそうで・・・」
「管弦楽は顎関節症になりやすいって本当?」
しかし、実際は「何が」「どのように」悪影響を与えているのかは曖昧な方が多いのではないでしょうか。
今回は、どのような楽器が、どのように身体に負担をかける可能性があるのかを、歯科の視点から整理していきましょう。
次回は、その対処策を考えていきますので、併せて参考にしてみてください。

目次

1. 管楽器と歯・顎の関係
 1-1. シングルリードの楽器(クラリネット、サクソフォンなど)
 1-2. ダブルリードの楽器(オーボエ、ファゴットなど)
 1-3. リップリードの楽器(トランペット、トロンボーン、ホルンなど)
 1-4. エアリードの楽器(フルート、リコーダーなど)
2. 弦楽器と歯・顎の関係
3. まとめ

1. 管楽器と歯・顎の関係

まずは、楽器ごとの特性と、歯や顎に及ぼす影響について考えてみましょう。
管楽器とは、管がある楽器で、息を吹き込むことで管の中の空気を振動させ、音を出す楽器のことを指します。
演奏者が管楽器を吹くときの口の形、及び、それに関わる口周囲の筋肉の使い方のことを「アンブシュア」といいます。
アンブシュアは人それぞれの形があり、「この楽器にはこの形でなければいけない」という決まりがあるわけではありません。
本文では、わかりやすく説明するために、代表的なアンブシュアの形の違いから楽器を4種類に分けてお話していきます。

1-1. シングルリードの楽器(クラリネット、サクソフォンなど)

「リード」とは、葦などの植物や金属などで作られた、板状の薄い部品です。
管楽器に装着して息を吹き込むことでリードが振動し、その振動によって様々な音が生み出されていきます。
クラリネットやサクソフォンなどは、楽器のマウスピースの片面に1枚のリード(シングルリード)を固定し、息を吹き込むことで音が生まれます。
ここで重要なのが、シングルリードの楽器を演奏する際のアンブシュアです。
シングルリードのアンブシュアは、下唇を下の歯に軽く被せ、上の歯は直接マウスピースに当てるようにしてマウスピースをくわえます。(シングルリップ奏法)
この際、上の歯と下唇で咬み込んで顎の力で楽器を支えるのではなく、口の回りの筋肉でマウスピースを包み込んで支えるようにします。
正しいアンブシュアが維持出来れば、顎や歯に過剰な負担がかかることはありません。
むしろ、唇を閉じる筋肉が鍛えられるので、お口がポカンと空いてしまう癖の抑制にもなります。
しかし、初心者の場合はどうしてもマウスピースに噛みつくようなアンブシュアになってしまいがちなようです。
それによって、上の前歯は内側から唇側(外側)に押される力が加わりやすくなります。
また、下唇が下の前歯とマウスピースに挟まれて痛みを感じたり、傷が出来てしまうこともあります。
グッと咬み込んで顎の力で支えようとすることで、顎関節にも負担がかかってしまいがちです。
正しいアンブシュアを習得し、余計な力を抜いて、出来るだけリラックスした状態での演奏を心がけましょう。

1-2. ダブルリードの楽器(オーボエ、ファゴットなど)

オーボエ・ファゴットなどは、2枚のリード(ダブルリード)を重ねて根元で固定し、息を吹き込むことで音が生まれます。
ダブルリードのアンブシュアは、シングルリップ奏法に加えて、上下の唇を巻き込むようにして咥え、口の回りの筋肉でマウスピースを包み込んで楽器を支えるダブルリップ奏法もあります。
この場合も、正しいアンブシュアで余計な力が入らなければ、歯や顎に負担はかかりませんが、最初はなかなか難しいようです。

1-3. リップリードの楽器(トランペット、トロンボーン、ホルンなど)

リップリードの楽器は、上下の歯と歯の間を軽く開いた状態で、上下の唇に楽器のマウスピースを当て、息を吹き込みます。
「出っ歯の人はリップリードの楽器に向かない」といった話もあるようですが、さほど影響はないと思って良いでしょう。
しかし、これから矯正治療を受けようかと検討されている方は、少し注意が必要です。
矯正治療には、症例によって様々な方法があります。
その中の1つである唇側ワイヤー矯正治療の場合は、歯の表面(唇側)にブラケットと呼ばれる矯正装置を付け、その間にワイヤーを通して歯の位置を動かしていきます。
この装置を装着した状態で演奏する場合、楽器のマウスピースを唇に押し当てることで、唇の内側と前歯の表面との間に矯正装置が挟み込まれることになります。
そのため、今までのアンブシュアと異なる感覚が生じてしまうのです。
しかし、「リップリードの楽器演奏者は矯正治療が出来ない」というわけではありません。
矯正装置を装着した状態でアンブシュアを会得するという方法もあります。
唇側ワイヤー矯正以外の矯正方法を選択することもできます。
矯正治療は、治療前のお口の中の状況によって、治療の方法も治療期間も全く異なってきます。
矯正治療を検討される場合は、矯正医に楽器の種類や1日の練習メニューなども伝えた上で、治療計画を立てていくことが大切です。

1-4. エアリードの楽器(フルート、リコーダーなど)

エアリードの楽器は、楽器の頭部管にある穴(歌口)に息を吹き込み、音を出します。
頭部管のリッププレートのカーブに合わせて顎を当て、穴の3分の1くらいを下唇でふさぐような形をとるので、他の楽器に比べると歯や顎への負担は軽いといえます。

2. 弦楽器と歯・顎の関係

次に、弦楽器と歯・顎の関係です。
ここでは、バイオリンの構えかたをみていきましょう。
バイオリンは、左側の肩甲骨の少し下の部分と下顎の間に楽器を挟むようにして構えます。
慣れないうちは、肩と顎のみで楽器を保持しようとするために、首や肩が緊張しがちになります。
左肩を上に上げることで、肩まわりの筋肉に力が入り、肩こりや首こりの原因となります。
また、楽器を顎で上から抑え込もうとすることで、顎に力が入り、上下の歯をぐっと咬みしめてしまう、いわゆる「くいしばり」が生じやすくなります。
さらに、初心者の場合は、演奏中に弦を押さえる左指の位置を凝視してしまいがちです。
手元をみようとすればするほど、下顎を後ろに引く形になりやすいため、そこでもまた「くいしばり」が生じやすくなります。
下顎を無理に後方に引くことで、顎関節にも負荷が生じてしまいやすくなります。
また、左右非対称な体勢での演奏を余儀なくされる楽器の場合は、身体の歪みも生じやすくなります。
正しい演奏姿勢を習得することが、弦楽器と長く向き合っていくためには必要だといえるでしょう。

3. まとめ

  • ・クラリネット・オーボエといったシングルリード・ダブルリードの楽器は、楽器の構え方によっては上顎前歯が唇側(外側)に向かって押される力が加わる、前歯が唇に当たって痛みを感じる、顎関節に負担がかかる可能性がある。
  • ・トランペット・トロンボーンといったリップリードの楽器は、唇に楽器のマウスピースを押し当てるため、唇側ワイヤー矯正などの矯正治療を検討されている方は、矯正医としっかり相談する必要がある。
  • ・フルート・リコーダーといったエアリードの楽器は、他の楽器に比べると歯や顎への負担は軽い。
  • ・バイオリン・ビオラといった弦楽器は、楽器の構え方によってはくいしばり癖が生じやすく、顎関節へ負担がかかることも多い。

今回は、管楽器・弦楽器によってかかる歯や顎への負担についてお話しました。
しかし、悪いことばかりではありません。
顔面の表情筋とよばれる筋肉をしっかりと使って演奏することで、口元が引き締まりやすく、顎のラインなど小顔効果も期待できます。
もちろん、音楽を奏でることによる癒し効果もありますね。
次回は歯や顎への負担に対する対処方法についてお話していきます。
お口の中の気になること、困りごとなどがございましたら、笠貫歯科クリニックにご相談ください。

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