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生まれてきてくれてありがとう!~口唇裂について~

2024年7月31日

皆さん、こんにちは!こんばんは!

以前、口唇口蓋裂についてのお話しをしました。

 

そこで今回は口唇裂に焦点をあてて、お話ししていきたいと思います。

口唇口蓋裂は日本人に500人〜600人に1人の割合で生じるとされています。これは日本人の乳幼児に生じる先天性疾患のうち、最も発生頻度が高い疾患とされています。なので、口唇口蓋裂は決して縁も所縁もない疾患とは言えません。

 

この記事を読んでくださっている読者さんの中には、ご自身が口唇口蓋裂の方や、親族や身近な人に口唇口蓋裂の方がいるという人もいらっしゃると思います。

「どうして自分だけが・・・。」と思い悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、やっぱり、命は美しいものです。ですので、どんな方でも「生まれてきてくれてありがとう」と感じます。

さて、前置きが長くなりましたが、今回はそんな身近な「口唇裂」のお話をします。

 

 

 

目次

①口唇裂とは?

 ◆いったいどんな病気?

 ◆原因はあるのか?

②口唇裂の問題

 ◆審美障害

 ◆哺乳障害

 ◆歯列咬合の問題

③口唇口蓋裂の治療

 ◆哺乳管理

 ◆口唇形成術

 ◆二次的修正術

④まとめ

 

 

 

 

 

①口唇裂とは?

口唇裂は口唇口蓋裂の病態の一つです。口唇口蓋裂は唇やお口の天井部分に割れ目がある病気でした。口唇裂はこのうち、唇のみに割れ目がある病気です。

 

◆いったいどんな病気?

口唇裂は唇が生まれつき割れている疾患です。人間の唇は、左右と真ん中の3つのパーツによって作られています。口唇裂は、胎児の時に、これら3つのパーツのうち、左右どちらか、あるいは、左右両方のパーツがくっつくことなく生まれてくる疾患です。片方のみに裂がある場合は片側性、左右どちらも裂がある場合は両側性と呼ばれます。一般的に、片側性の邦画は両側性に比べて発生頻度が高く、片側性の場合は、左側に多いと報告されています。

また、裂が鼻の穴まで及ぶ場合を完全裂、及ばない場合を不完全裂と呼びます。

このように、口唇裂には、様々な形があり、それぞれによって治療アプローチが異なってくることがあります。

 

 

◆口唇口蓋裂の原因

全身疾患の中には、原因となっている遺伝子がはっきりとしている疾患もあります。その一方で、喫煙や食習慣などの様々な環境因子などが絡み合って疾患が生じる場合も少なくありません。

口唇口蓋裂は、様々な報告がありますが、現時点では「多因子疾患」と位置付けられています。つまり、遺伝子的要因や環境因子など多くの因子が複雑に絡み合って発症するとされています。つまり、原因はイマイチはっきりしないと言えます。

まずは口唇裂がどのような病気かをご理解いただけましたか?病気について知ることは、相手を理解することと同じです。お互いが理解し合っていきましょう。

 

 

 

 

②口唇裂による問題

口唇裂によって生じる問題はたくさんあります。次に、口唇裂によって引き起こされる問題点を解説しましょう。

 

◆審美障害

最初は、見た目の問題です。口唇裂は、お顔の皮膚も割れています。つまり、内臓疾患と違い、相手から見てわかるということです。

それに加え、鼻の形が変形します。これは、鼻を支える組織が口唇裂によって不足するために生じます。一般的に、裂がある側の鼻が扁平になります。

 

 

◆哺乳障害

皆さんもものを飲み込む時は唇を閉じますよね。人間がものを飲み込むときは唇を閉じなければうまくものを飲み込むことはできません。赤ちゃんの場合は、ミルクを飲むときに、唇を閉じなければなりません。

口唇裂を持つ赤ちゃんは、裂によって、唇をうまく飲み込むことができません。このため、ミルクが鼻漏れしたり、うまく飲み込めずに咳き込んだりすることもあります。また、ミルクの摂取量が少なくなる傾向にあるため体の成長が遅くなる傾向にあります。

 

 

◆歯列・咬合の問題

成長に伴って、乳歯や永久歯が生えてきます。おおよそ3歳ごろに乳歯が生え揃い、12歳くらいに永久歯が生え揃います(親知らずが18歳ごろに生えてくる方もいます)。

口唇裂がある場合、歯が生える土台部分(顎堤:「がくてい」と呼びます)の骨も割れている場合も少なくありません。歯は骨の上に生えるため、骨の欠損があると、歯が生える部分が少なくなり、歯並びが悪くなります。これによって、適切な噛み合わせを獲得することも困難になります。

口唇裂患者はこの他にも、永久歯の問題や、心理的な側面など多くの問題点を抱えています。したがってより多面的な治療が必要になってきます。

 

 

 

 

 

③口唇口蓋裂の治療

さて口唇裂を持つ患者さんの問題点に対して様々な治療が行われます。具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。

 

◆哺乳管理

最も大切なのが哺乳管理です。赤ちゃんが健やかに成長するためには欠かせません。口唇裂を持つ子供は口蓋裂も合併している場合があります。赤ん坊が適切に哺乳できるように最適な哺乳瓶の使用や、NAM(ナム)やHotz床(ホッツしょう)といった哺乳を補助する器具を作成し、哺乳指導を行います。

 

 

◆口唇形成術

赤ん坊の体重が約6kgになるのを目安に全身麻酔下で口唇形成術を行います。これは唇周囲の筋肉や皮膚を再建する手術を行います。これによって、哺乳の改善や審美性の向上が図れます。

 

 

◆二次的修正術

口唇修正術を行った後に必要に応じて行います。5歳ごろに行うときもあります。また、成長に伴い18歳以降に修正術を再度行い、鼻の形の修正や唇にできた傷跡をきれいにする手術を行います。

ここで、紹介した以外にも、矯正治療や言語治療、母子心理カウンセリングなど、多くの問題を抱えているからこそ、より多くのアプローチで自立を目指しています。先天性疾患の場合、日本の保険制度を用いて、一定の条件下で保険治療が可能になります。なので、経済的な面からも国の後押しを受けて治療を行うことができます。

 

 

 

 

④まとめ

今回は口唇裂の実際や治療についてお話しました。皆さんの友人や知人に口唇裂をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。一人で悩まず、手を差し伸べてみてください。どんな病気を持っていようが、どんな境遇で産まれようが、命は尊いものです。すべての人に「生まれてきてくれてありがとう」と言える世界があるといいですね。

親知らずを抜くときの合併症と対策

2024年7月30日

歯を抜くということは、一定のリスクがつきものです。

今回はその中でも合併症が多く起こりやすい、親知らずを抜歯したときについて説明していきます。

 

目次

◯起こりやすい合併症

 ◆腫れ、痛み
 ◆出血
 ◆ドライソケット
 ◆神経麻痺

◯合併症が起きた時は?

 ◆ドライソケット
 ◆神経麻痺

◯まとめ

起こりやすい合併症

親知らずを抜いた時に起こりやすい合併症は次に挙げる4つがあります。

◆腫れ、痛み

親知らずに限ったことではありませんが、歯を抜いたときは腫れや痛みが生じることがあります。腫れも痛みも歯を抜いてから2〜3日がピークとなり、1週間ほどで徐々に落ち着いてくることが多いです。痛みが出たら鎮痛薬を飲むと、生活に支障が出ずに過ごせるでしょう。

◆出血

歯を抜いた後は血が止まりにくいことがあります。血液をサラサラにする薬を飲んでいる患者さんなどは特に血が止まりにくくなる傾向にあります。

血がなかなか止まらないときは、ガーゼを強く噛んで圧迫することで血が止まりやすくなります。ガーゼがないときは清潔なタオルなどを使いましょう。ティッシュは水分を含みやすいのであまりよくありません。また強いうがいはしないようにしましょう。

◆ドライソケット

歯を抜いた場所は血が固まり、かさぶたのようになって、それが治って歯ぐきとなっていきます。うがいをしすぎたり、舌や指で抜いた場所を触ったりしていると、かさぶたが剥がれてしまいます。そうなると歯ぐきができず、まわりの骨がむき出しになってしまい、激痛を伴うようになります。

この状態を「ドライソケット」といいます。

ドライソケットが治るまで1ヶ月以上かかることもあります。歯を抜いてから1週間以上痛みが続く場合は、このドライソケットを疑います。

 

◆神経麻痺

下あごには下歯槽神経や舌神経という唇や頬の感覚を司る神経が走っています。下の親知らずがあごの深いところに埋まっている場合はそれらの神経にとても近かったり、神経と接触している場合があります。

歯を抜くときに神経に触れて傷めてしまうと、麻酔が切れた後でも唇や頬にしびれる感じや違和感を生じることがあります。

神経が完全に切れてしまった場合などは、手で触れても全く何も感じないこともあります。

歯科医師が最も注意するのがこの神経麻痺です。

神経麻痺のリスクを少しでも減らすために、レントゲン写真をとって歯の位置や神経の走行を確認します。

合併症が起きたときは?

◆ドライソケット

ドライソケットになったかもしれないと思ったときは、まず抜いた歯医者さんに相談しましょう。

 

ドライソケットだった場合は痛みを抑えるための鎮痛剤と感染を防ぐための抗生物質を飲むことで悪化を防ぎます。

ドライソケットが重症化して骨に感染してしまった場合は抜歯した場所の汚れを取り除き、もう一度麻酔をして出血させてかさぶたをつくる処置をすることがあります。

 

▽詳細はこちらをご覧ください▽

【歯科医師が徹底解説】抜歯後の痛みがひどい時の対応!それはドライソケットかも?

 

◆神経麻痺

歯を抜いた当日は麻酔が残っている可能性がありますが、歯を抜いた次の日まで痺れる感じが取れない場合は、神経麻痺が起きている可能性があります。そのときは歯を抜いた歯医者さんに相談しましょう。

 

神経麻痺の特徴は、唇やあごを触った感覚が鈍い、またはない、親知らずより手前の歯に違和感がある、歯がしみる感じがある、などです。

神経麻痺にはいくつか種類があります。

CTを撮影することで原因が判明することが多いです。

 

▶︎神経麻痺の特徴

神経麻痺の特徴は、唇やあごを触った感覚が鈍い、またはない、親知らずより手前の歯に違和感がある、歯がしみる感じがある、などです。

CTを撮影することで原因が判明することが多いです。

 

▶︎神経麻痺の種類

神経麻痺にはいくつか種類があります。

大まかに分けて、下記の3つが考えられます。

 

①神経が圧迫されている場合

歯を抜いたときの出血が抜いた穴に溜まって、神経を圧迫する場合があります

 

②神経が部分的に傷ついた場合

神経が歯に近かったり、一部接していたりすると、歯を抜くときの操作で神経の一部が傷ついてしまうことがあります。

 

③神経が断裂した場合

歯があごの奥深くにあって、歯を割って抜かなければならないときなどに、歯を割ったり削ったりする機械で神経を切ってしまうことがまれにあります。

 

▶︎神経麻痺時の対応

基本的にはどのパターンでもビタミンB12を摂ることをおすすめします。

 

ただ対応は同じですが、①〜③によって治る日数も異なってきます。

 

おおよそ目安としては、

①数日で治ることが多いです

②半年〜1年ほどかかることが多いです。

③神経が断裂してしまった場合は完全に治癒することは見込めないといわれています。

 

(※あくまで目安であり、個人差もございます。またビタミンB12を摂ったからと言って、必ず治るというわけではございません)

 

まとめ

上にあげたリスクがありますが、親知らずの状態によっては抜かないこともリスクとなります。そのため、利益とリスクを考えて、歯医者さんと相談して抜くかどうか決めるようにしましょう。

 

ドライソケットにならないようにするためには、抜いたあと強いうがいをしない、舌で抜いたところを触らない、などで防ぐことができます。神経麻痺に関しても、抜く前にレントゲンをとって位置を把握することでリスクを最小限に抑えることができます。

 

また、若ければ若いほど合併症が起きたときの治癒もはやく、骨の質もいいので難易度が下がります。そのため、親知らずを抜くのは早めに相談したほうがよいです。

 

 

親知らずを抜いたほうがいいのか気になったときは、ぜひ当院へご相談ください。

世界で広く普及している虫歯予防法『水道水のフロリデーション』

2024年7月18日

フッ素は、むし歯の予防に非常に効果的ですね。

では、フッ素を用いたむし歯予防法には、どのようなものがあるでしょう。

 

日本では局所的応用が主流ですが、全世界をみてみると、水道水フロリデーションという方法が広く普及しています。

今回は、水道水フロリデーションについて、お話していきましょう。

 

 

目次
1.水道水フロリデーションとは
2.日本の水道水は?
3.海外における水道水フロリデーション事情
4.まとめ

 

 

1.水道水フロリデーションとは 

むし歯予防のフッ化物(フッ素)利用法の種類をみていきましょう。

まず、局所応用といわれる方法です。これは、お口の中に直接フッ化物を作用させていくものです。

フッ化物歯面塗布・フッ化物洗口・フッ化物配合歯磨剤 などが挙げられます。

日本では、この局所応用が広く行われています。

 

 

次に、全身応用といわれる方法です。水道水やサプリメント、食品などからフッ化物を摂取し、体内に吸収されたのちに、口腔周囲に届き効果を発揮するものです。
水道水フロリデーション・フッ化物サプリメント(錠剤・液剤など)・食品へのフッ化物添加(食塩・ミルクなど)が挙げられます。

全身応用は現在、日本では行われていません。

 

 

この中の、フッ化物全身応用にあたる「水道水フロリデーション」について、みていきます。

水道水フロリデーションとは、水道水の中に含まれるフッ化物を適切な濃度に調整し、その水道水を摂取することによってむし歯の発生を抑制する方法です。
水道水フロリデーションは、アメリカの一部地域で初めて行われました。今では、水道水中のフッ化物濃度を0ppmから1.2ppmに上げるにつれて、むし歯の発生がどんどん減少していくということが実証されています。

 

 

しかし、水道水中のフッ化物濃度を高くすればよい、というわけではありません。フッ化物の過剰摂取は、歯牙フッ素症を引き起こすという側面も持ち合わせているのです。
歯牙フッ素症とは、歯の形成障害の一種で、歯の表面のエナメル質に境界不明瞭な白斑、白濁や、不透明な縞模様などが認められます。

 

これは、エナメル質が作られる時期に高濃度のフッ素を体内に取り込むことで生じるもので、既に萌出している歯面へのフッ素塗布や、歯磨き粉などの局所応用では発生しません。
水道水フロリデーションでは、歯牙フッ素症が発生しない濃度で、なおかつむし歯の発生を抑制する濃度に水道水のフッ化物濃度を調整します。

 

WHO(世界保健機構)では、水質基準としてのフッ化物濃度を1.5ppm以下、むし歯予防のための推奨水道水フッ化物濃度を0.7〜1.0ppmと定めています。
一般的には、水道水フロリデーションの濃度は1.0ppmが最も効果的であると言われています。

 

 

 

2.日本の水道水は? 

日本でも、過去に水道水フロリデーションが試験的に行われています。京都市山科地区で1952年から1965年までの13年間、そして、沖縄県、三重県でも行われたことがあります。

なかでも京都市山科地区では、水道水のフッ化物濃度を0.6ppmに調整して実施され、実際にむし歯予防効果が報告されたそうです。

 

しかし、現在では日本において水道水フロリデーションは行われていません。

日本の水道法における飲料水中フッ化物濃度は0.8ppm以下と定められていますが、実際はこれよりもはるかに低い値であると推察されます。
つまり、現在、日本の水道水にはむし歯予防効果はない、ということができます。

 

 

 

 

3.海外における水道水フロリデーション事情 

「海外では、水道水で手軽にむし歯予防が簡単で出来ていいなあ。」
そう思われたかたも、多いのではないでしょうか。

 

 

実際、水道水フロリデーションを行っている国は多く、アメリカのほかにもイギリス、オーストラリア、シンガポールなど、人口にすると3億人以上の人が水道水フロリデーションによってむし歯を予防しているのです。また、それぞれの国や民族、生活様式やむし歯有病状況の違いがあるにもかかわらず、大きなむし歯予防効果が報告されているそうです。

 

 

しかし、国や地域による背景の違いについても理解しなければいけません。
水道水フロリデーションは、天然の水の中に存在するフッ化物の量を適正な濃度に調整して、飲料水として摂取する方法です。天然水の水質は地域によってさまざまなので、天然水の中に含まれるフッ化物濃度が高すぎるために、フッ化物を除去するという意味での調整が必要な地域もあります。

 

 

経済的な理由などで、歯科を受診する割合が低い国でのむし歯予防対策として、全ての人が平等に予防措置を受けることが出来るように、という理由で水道水フロリデーションを導入している国もあるでしょう。

 

 

フッ化物を人工的に取り入れることは、薬物療法にあたると考え、拒否感を示す方もいます。
水道水フロリデーションでは、個人の選択権がありませんね。フッ化物の応用を望む人と望まない人、それぞれの意見を尊重するために、水道水フロリデーションを行わないという決断をした国もあるでしょう。

 

 

また、水道水フロリデーションにおけるフッ化物の濃度は、その土地の気温によって左右されます。
暖かい地域では水道水を飲用する量が多いために、フッ化物の濃度を低く、寒い地域では高く設定するのです。

 

 

日本のように、四季による温度変化や、北と南の気候の差が大きいという環境は、水道水フロリデーションを行う上でのフッ化物濃度の基準作りを難しくさせているのかもしれません。

このようなことから、日本ではフッ化物塗布や歯磨剤へのフッ化物添加など、フッ素の局所応用が虫歯予防の主軸となっていることが推察されます。

 

 

 

 

4.まとめ 

・ フッ化物の利用法は、大きく分けて2種類に分類される。
全身応用:水道水フロリデーション、フッ化物サプリメント、食品へのフッ化物添加
局所応用:フッ化物歯面塗布、フッ化物洗口、フッ化物配合歯磨剤

 

 

・ 水道水フロリデーションとは、水道水の中に含まれるフッ化物の濃度を適正な濃度になるよう、フッ化物の添加もしくは除去を行うことによって調整する。
それによって、むし歯の発生、および歯のフッ素症を抑制していく。

 

 

・ 日本では、過去に水道水フロリデーションが試験的に行われていたが、現在では行われていない。

 

・ 海外では、水道水フロリデーションは広く行われているが、その考え方や、実施する上での背景は国によって異なる。  

日本でも、将来的には水道水フロリデーションが行われる時代が来るかもしれません。
それまでは、日常生活においてはフッ化物配合の歯磨剤やうがい薬の使用などの局所応用でむし歯予防を行っていくのが良いでしょう。

もちろん、定期健診も大切です。

 

フッ素を用いた理想的なむし歯予防として、お家での毎日のケアに加えて、歯科医院にてお口の中を定期的にチェックして、クリーニングを行った上でフッ素塗布を行うことをおすすめします。

お口の中で気になることなどありましたら、お気軽にご相談ください。

エナメル質形成不全②

2024年7月14日

前回は、エナメル質形成不全の原因と、家庭での見分け方についてお話していきました。
今回は、エナメル質形成不全とは一体何がいけないのか、そして、どのように対処していったら良いのかについて、お話していきましょう。

 

 

目次
1. エナメル質形成不全の問題点
 1-1. 見た目
 1-2. 知覚過敏を生じやすい
 1-3. むし歯になりやすい
 1-4. しっかりと咬み合わなくなる
 1-5. 歯並びの乱れにつながる
2.エナメル質形成不全にどう対処していくか
 2-1. 家庭で出来る対処法
 2-2. 歯科医院でできる対処法
3.まとめ

 

 

 

1.エナメル質形成不全の問題点 

エナメル質形成不全であることによって、どのような問題があるのかをみていきましょう。

 

 

1-1.見た目 

エナメル質は、エナメル小柱と呼ばれる細長い柱状の構造が規則正しく並んで出来ています。
その色は半透明で、艶があります。
場所によっては内部の象牙質の色がうっすらと透けて見えるので、黄色味を帯びて見えることもあります。
エナメル質形成不全の場合は、エナメル質の形成が不規則になったり、厚みが薄くなったりします。
そのため、他の部位と比較して白色、黄色、褐色といった色の変化が認められます。
また、表面がザラザラしていることが多く、そのような部位には、外からの着色も付きやすくもなります。

 

 

1-2.知覚過敏を生じやすい 

歯の表面をガードしているエナメル質が一部分でも欠損すると、そこから冷温刺激が歯の内部に伝わりやすくなるために、知覚過敏が生じます。

 

 

1-3.むし歯になりやすい 

歯の大部分を占める象牙質は、その表面をエナメル質によって守られています。
エナメル質は非常に硬く、象牙質と比べてむし歯の進行もゆるやかです。
しかし、そのエナメル質がうまく作られていない、つまりエナメル質形成不全の部位は、むし歯の進行が非常に早くなります。
それに加えて、形成不全の部位は凹凸や深い溝などがあり、清掃が難しいことが多いので、汚れが残りやすくなります。
つまり、エナメル質形成歯は清掃が困難なためにむし歯のリスクが高く(虫歯になりやすく)、また、いったんむし歯になると進行が非常に速いということができるのです。

 

 

1-4.しっかりと咬み合わなくなる 

エナメル質形成不全は、その形成不全部位が咬合面(奥歯の咬む面)に広く認められると、反対側の歯とうまく咬み合わなくなります。
多数歯にエナメル質形成不全が認められると、大きな咬み合わせのズレにつながります。
1〜2歯だけの場合でも、上下の歯がバランスよく咬むことができないために、全体的な咬み合わせが悪くなる可能性があります。

 

 

1-5.歯並びの乱れにつながる 

エナメル質形成不全によっては、歯自体が小さく生えてくることもあります。
また、大きく歯が欠けてしまうことなどにより、歯と歯の間に大きなすき間ができることがあります。
そのすき間に、隣の歯が移動してきたり、倒れ込んできたりすることで、全体的な歯並びの乱れにつながってしまうことがあります。
特に、幼い頃の歯並びの乱れは、発音や顎の成長の妨げになってしまうこともありますので、注意が必要です。

 

 

 

 

2.エナメル質形成不全にどう対処していくか

エナメル質形成不全は、萌出直後からわかるものと、萌出後しばらくしてから歯が欠けたりして発見されるものがあります。
そんなエナメル質形成不全にどう対処していったら良いのかを、みていきましょう。

 

 

2-1.家庭でできる対処法 

・ お口の中を観察する習慣をつける
毎日でなくとも構いません。
仕上げ磨きをする前に、時々でもお子さんのお口の中を観察してみてください。

 

「歯に穴が開いていないかな」
「色がついていないかな」
「舌や頬の内側、歯茎はツルツルでピンク色かな」

何となくで構いません。

 

日頃からお口の中を見慣れておくことで、異常に気が付きやすくなります。
そして、何かいつもと違うところや、「あれっ?」と思うことがあれば、検診も兼ねて歯科医院で相談してみてください。

 

また、乳歯に大きなむし歯があった場合は、その下から生えてくる永久歯は注意して観察しましょう。
全身的な理由でのエナメル質形成不全の可能性を指摘された場合は、エナメル質形成不全が疑われる部分の歯を、特に注意してみていくと良いでしょう。

 

 

 

毎日のていねいなブラッシング
何といっても大切なのは、毎日行う家庭での歯磨きです。
エナメル質形成不全の部分は、特に気を付けて磨くように心掛けましょう。
全ての歯が永久歯に生え変わるまでは、大人の仕上げ磨きが必要です。
ピンポイントでも良いので、エナメル質形成不全の部位や、お子さんが磨きにくい部位は、大人が仕上げ磨きを行うようにしましょう。
家庭用フッ素の使用も効果的です。

 

 

 

2-2.歯科医院でできる対処法 

 

・ むし歯になりやすい部位の予防処置
エナメル質形成不全によって汚れがたまりやすく、家庭での清掃が難しい部位は、むし歯の予防処置を行っていきます。
状態によって異なりますが、シーラントというお薬で複雑な溝を埋めたり、定期的に高濃度のフッ素を塗布したりしていきます。

・欠けている部位、欠損が大きい部位の修復
欠けてしまった部位や、もともと形成されなかった部位を、白いプラスチックのお薬を用いて修復していきます。
大きく欠けている場合は、咬み合わせを回復させるために、歯全体に被せ物をする場合もあります。
乳歯であっても、被せ物をすることは可能です。
永久歯の場合は、乳歯と違って一生使う歯になります。
そのため、永久歯に被せ物をする際には、歯が完全に萌出して、周囲の歯肉の形が安定するのを待ってから、治療を行うのがベストです。
暫間処置という、最終的な被せ物の治療までに歯及び咬み合わせを保つ処置を行いつつ、様子をみる場合もあります。

 

・定期的な検診
エナメル質形成不全では、経過観察が非常に大切です。
今あるエナメル質形成不全歯が、新たに欠けたりしていないか。
他の部位に異常はみられないか
今の時期に出来る処置はないか
などを、定期的に診ていきます。
その際に、機械を用いたクリーニングや、ブラッシング指導、フッ素塗布などを行うことをおすすめします。

 

 

 

 

3.まとめ

エナメル質形成不全の問題点としては、

・ 見た目が良くない(変色・形状)
・ 知覚過敏を生じやすい
・ むし歯になりやすい
・ 咬み合わせ、歯並びの乱れにつながる

 

ことが挙げられる。

 

 

家庭でできる対処としては、お口の中を観察する習慣をつけること、毎日のブラッシングをていねいに行うことである。

歯科医院における対処としては、
・ むし歯の予防処置
・ エナメル質が形成されなかった部位を補う処置
・ 定期健診を行い、その時期に必要となる処置を行い、お口の中の健康を保っていくこと
である。

 

 

エナメル質形成不全は、10〜20%の割合でおこると言われています。つまり、5〜10人に1人はエナメル質形成不全が認められるということですね。
形成不全の程度は、全顎的な治療が必要になるものから、そのまま様子をみていくものまで様々です。

 

 

 

学校健診などでエナメル質形成不全を指摘された、ご家庭で「あれ?」と思う歯を見つけた場合は、歯科医院を受診するようにしましょう。
そして、何らかの処置が必要なのか、このまま注意深く経過観察をしていくのかなど、今後について方針を立てていくことをおすすめします。

 

 

お口の中に、気になることがございましたら、ご相談ください。
笠貫歯科クリニックでは、皆様のお口の中の健康を守っていくことができるよう、お手伝いさせていただきます。

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当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
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