キービジュアル

世界で広く普及している虫歯予防法『水道水のフロリデーション』

2024年7月18日

フッ素は、むし歯の予防に非常に効果的ですね。

では、フッ素を用いたむし歯予防法には、どのようなものがあるでしょう。

 

日本では局所的応用が主流ですが、全世界をみてみると、水道水フロリデーションという方法が広く普及しています。

今回は、水道水フロリデーションについて、お話していきましょう。

 

 

目次
1.水道水フロリデーションとは
2.日本の水道水は?
3.海外における水道水フロリデーション事情
4.まとめ

 

 

1.水道水フロリデーションとは 

むし歯予防のフッ化物(フッ素)利用法の種類をみていきましょう。

まず、局所応用といわれる方法です。これは、お口の中に直接フッ化物を作用させていくものです。

フッ化物歯面塗布・フッ化物洗口・フッ化物配合歯磨剤 などが挙げられます。

日本では、この局所応用が広く行われています。

 

 

次に、全身応用といわれる方法です。水道水やサプリメント、食品などからフッ化物を摂取し、体内に吸収されたのちに、口腔周囲に届き効果を発揮するものです。
水道水フロリデーション・フッ化物サプリメント(錠剤・液剤など)・食品へのフッ化物添加(食塩・ミルクなど)が挙げられます。

全身応用は現在、日本では行われていません。

 

 

この中の、フッ化物全身応用にあたる「水道水フロリデーション」について、みていきます。

水道水フロリデーションとは、水道水の中に含まれるフッ化物を適切な濃度に調整し、その水道水を摂取することによってむし歯の発生を抑制する方法です。
水道水フロリデーションは、アメリカの一部地域で初めて行われました。今では、水道水中のフッ化物濃度を0ppmから1.2ppmに上げるにつれて、むし歯の発生がどんどん減少していくということが実証されています。

 

 

しかし、水道水中のフッ化物濃度を高くすればよい、というわけではありません。フッ化物の過剰摂取は、歯牙フッ素症を引き起こすという側面も持ち合わせているのです。
歯牙フッ素症とは、歯の形成障害の一種で、歯の表面のエナメル質に境界不明瞭な白斑、白濁や、不透明な縞模様などが認められます。

 

これは、エナメル質が作られる時期に高濃度のフッ素を体内に取り込むことで生じるもので、既に萌出している歯面へのフッ素塗布や、歯磨き粉などの局所応用では発生しません。
水道水フロリデーションでは、歯牙フッ素症が発生しない濃度で、なおかつむし歯の発生を抑制する濃度に水道水のフッ化物濃度を調整します。

 

WHO(世界保健機構)では、水質基準としてのフッ化物濃度を1.5ppm以下、むし歯予防のための推奨水道水フッ化物濃度を0.7〜1.0ppmと定めています。
一般的には、水道水フロリデーションの濃度は1.0ppmが最も効果的であると言われています。

 

 

 

2.日本の水道水は? 

日本でも、過去に水道水フロリデーションが試験的に行われています。京都市山科地区で1952年から1965年までの13年間、そして、沖縄県、三重県でも行われたことがあります。

なかでも京都市山科地区では、水道水のフッ化物濃度を0.6ppmに調整して実施され、実際にむし歯予防効果が報告されたそうです。

 

しかし、現在では日本において水道水フロリデーションは行われていません。

日本の水道法における飲料水中フッ化物濃度は0.8ppm以下と定められていますが、実際はこれよりもはるかに低い値であると推察されます。
つまり、現在、日本の水道水にはむし歯予防効果はない、ということができます。

 

 

 

 

3.海外における水道水フロリデーション事情 

「海外では、水道水で手軽にむし歯予防が簡単で出来ていいなあ。」
そう思われたかたも、多いのではないでしょうか。

 

 

実際、水道水フロリデーションを行っている国は多く、アメリカのほかにもイギリス、オーストラリア、シンガポールなど、人口にすると3億人以上の人が水道水フロリデーションによってむし歯を予防しているのです。また、それぞれの国や民族、生活様式やむし歯有病状況の違いがあるにもかかわらず、大きなむし歯予防効果が報告されているそうです。

 

 

しかし、国や地域による背景の違いについても理解しなければいけません。
水道水フロリデーションは、天然の水の中に存在するフッ化物の量を適正な濃度に調整して、飲料水として摂取する方法です。天然水の水質は地域によってさまざまなので、天然水の中に含まれるフッ化物濃度が高すぎるために、フッ化物を除去するという意味での調整が必要な地域もあります。

 

 

経済的な理由などで、歯科を受診する割合が低い国でのむし歯予防対策として、全ての人が平等に予防措置を受けることが出来るように、という理由で水道水フロリデーションを導入している国もあるでしょう。

 

 

フッ化物を人工的に取り入れることは、薬物療法にあたると考え、拒否感を示す方もいます。
水道水フロリデーションでは、個人の選択権がありませんね。フッ化物の応用を望む人と望まない人、それぞれの意見を尊重するために、水道水フロリデーションを行わないという決断をした国もあるでしょう。

 

 

また、水道水フロリデーションにおけるフッ化物の濃度は、その土地の気温によって左右されます。
暖かい地域では水道水を飲用する量が多いために、フッ化物の濃度を低く、寒い地域では高く設定するのです。

 

 

日本のように、四季による温度変化や、北と南の気候の差が大きいという環境は、水道水フロリデーションを行う上でのフッ化物濃度の基準作りを難しくさせているのかもしれません。

このようなことから、日本ではフッ化物塗布や歯磨剤へのフッ化物添加など、フッ素の局所応用が虫歯予防の主軸となっていることが推察されます。

 

 

 

 

4.まとめ 

・ フッ化物の利用法は、大きく分けて2種類に分類される。
全身応用:水道水フロリデーション、フッ化物サプリメント、食品へのフッ化物添加
局所応用:フッ化物歯面塗布、フッ化物洗口、フッ化物配合歯磨剤

 

 

・ 水道水フロリデーションとは、水道水の中に含まれるフッ化物の濃度を適正な濃度になるよう、フッ化物の添加もしくは除去を行うことによって調整する。
それによって、むし歯の発生、および歯のフッ素症を抑制していく。

 

 

・ 日本では、過去に水道水フロリデーションが試験的に行われていたが、現在では行われていない。

 

・ 海外では、水道水フロリデーションは広く行われているが、その考え方や、実施する上での背景は国によって異なる。  

日本でも、将来的には水道水フロリデーションが行われる時代が来るかもしれません。
それまでは、日常生活においてはフッ化物配合の歯磨剤やうがい薬の使用などの局所応用でむし歯予防を行っていくのが良いでしょう。

もちろん、定期健診も大切です。

 

フッ素を用いた理想的なむし歯予防として、お家での毎日のケアに加えて、歯科医院にてお口の中を定期的にチェックして、クリーニングを行った上でフッ素塗布を行うことをおすすめします。

お口の中で気になることなどありましたら、お気軽にご相談ください。

初診「個別」相談へのご案内

当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
ご興味がある方は下記からお問い合わせください。

このページの先頭に戻る

ご予約/お問い合わせ

笠貫歯科クリニックを
受診される患者様へ

お電話でお問い合わせされる前に
ご確認ください