エナメル質形成不全②
2024年7月14日
前回は、エナメル質形成不全の原因と、家庭での見分け方についてお話していきました。
今回は、エナメル質形成不全とは一体何がいけないのか、そして、どのように対処していったら良いのかについて、お話していきましょう。
目次
1. エナメル質形成不全の問題点
1-1. 見た目
1-2. 知覚過敏を生じやすい
1-3. むし歯になりやすい
1-4. しっかりと咬み合わなくなる
1-5. 歯並びの乱れにつながる
2.エナメル質形成不全にどう対処していくか
2-1. 家庭で出来る対処法
2-2. 歯科医院でできる対処法
3.まとめ
1.エナメル質形成不全の問題点
エナメル質形成不全であることによって、どのような問題があるのかをみていきましょう。
1-1.見た目
エナメル質は、エナメル小柱と呼ばれる細長い柱状の構造が規則正しく並んで出来ています。
その色は半透明で、艶があります。
場所によっては内部の象牙質の色がうっすらと透けて見えるので、黄色味を帯びて見えることもあります。
エナメル質形成不全の場合は、エナメル質の形成が不規則になったり、厚みが薄くなったりします。
そのため、他の部位と比較して白色、黄色、褐色といった色の変化が認められます。
また、表面がザラザラしていることが多く、そのような部位には、外からの着色も付きやすくもなります。
1-2.知覚過敏を生じやすい
歯の表面をガードしているエナメル質が一部分でも欠損すると、そこから冷温刺激が歯の内部に伝わりやすくなるために、知覚過敏が生じます。
1-3.むし歯になりやすい
歯の大部分を占める象牙質は、その表面をエナメル質によって守られています。
エナメル質は非常に硬く、象牙質と比べてむし歯の進行もゆるやかです。
しかし、そのエナメル質がうまく作られていない、つまりエナメル質形成不全の部位は、むし歯の進行が非常に早くなります。
それに加えて、形成不全の部位は凹凸や深い溝などがあり、清掃が難しいことが多いので、汚れが残りやすくなります。
つまり、エナメル質形成歯は清掃が困難なためにむし歯のリスクが高く(虫歯になりやすく)、また、いったんむし歯になると進行が非常に速いということができるのです。
1-4.しっかりと咬み合わなくなる
エナメル質形成不全は、その形成不全部位が咬合面(奥歯の咬む面)に広く認められると、反対側の歯とうまく咬み合わなくなります。
多数歯にエナメル質形成不全が認められると、大きな咬み合わせのズレにつながります。
1〜2歯だけの場合でも、上下の歯がバランスよく咬むことができないために、全体的な咬み合わせが悪くなる可能性があります。
1-5.歯並びの乱れにつながる
エナメル質形成不全によっては、歯自体が小さく生えてくることもあります。
また、大きく歯が欠けてしまうことなどにより、歯と歯の間に大きなすき間ができることがあります。
そのすき間に、隣の歯が移動してきたり、倒れ込んできたりすることで、全体的な歯並びの乱れにつながってしまうことがあります。
特に、幼い頃の歯並びの乱れは、発音や顎の成長の妨げになってしまうこともありますので、注意が必要です。
2.エナメル質形成不全にどう対処していくか
エナメル質形成不全は、萌出直後からわかるものと、萌出後しばらくしてから歯が欠けたりして発見されるものがあります。
そんなエナメル質形成不全にどう対処していったら良いのかを、みていきましょう。
2-1.家庭でできる対処法
・ お口の中を観察する習慣をつける
毎日でなくとも構いません。
仕上げ磨きをする前に、時々でもお子さんのお口の中を観察してみてください。
「歯に穴が開いていないかな」
「色がついていないかな」
「舌や頬の内側、歯茎はツルツルでピンク色かな」
何となくで構いません。
日頃からお口の中を見慣れておくことで、異常に気が付きやすくなります。
そして、何かいつもと違うところや、「あれっ?」と思うことがあれば、検診も兼ねて歯科医院で相談してみてください。
また、乳歯に大きなむし歯があった場合は、その下から生えてくる永久歯は注意して観察しましょう。
全身的な理由でのエナメル質形成不全の可能性を指摘された場合は、エナメル質形成不全が疑われる部分の歯を、特に注意してみていくと良いでしょう。
・ 毎日のていねいなブラッシング
何といっても大切なのは、毎日行う家庭での歯磨きです。
エナメル質形成不全の部分は、特に気を付けて磨くように心掛けましょう。
全ての歯が永久歯に生え変わるまでは、大人の仕上げ磨きが必要です。
ピンポイントでも良いので、エナメル質形成不全の部位や、お子さんが磨きにくい部位は、大人が仕上げ磨きを行うようにしましょう。
家庭用フッ素の使用も効果的です。
2-2.歯科医院でできる対処法
・ むし歯になりやすい部位の予防処置
エナメル質形成不全によって汚れがたまりやすく、家庭での清掃が難しい部位は、むし歯の予防処置を行っていきます。
状態によって異なりますが、シーラントというお薬で複雑な溝を埋めたり、定期的に高濃度のフッ素を塗布したりしていきます。
・欠けている部位、欠損が大きい部位の修復
欠けてしまった部位や、もともと形成されなかった部位を、白いプラスチックのお薬を用いて修復していきます。
大きく欠けている場合は、咬み合わせを回復させるために、歯全体に被せ物をする場合もあります。
乳歯であっても、被せ物をすることは可能です。
永久歯の場合は、乳歯と違って一生使う歯になります。
そのため、永久歯に被せ物をする際には、歯が完全に萌出して、周囲の歯肉の形が安定するのを待ってから、治療を行うのがベストです。
暫間処置という、最終的な被せ物の治療までに歯及び咬み合わせを保つ処置を行いつつ、様子をみる場合もあります。
・定期的な検診
エナメル質形成不全では、経過観察が非常に大切です。
今あるエナメル質形成不全歯が、新たに欠けたりしていないか。
他の部位に異常はみられないか
今の時期に出来る処置はないか
などを、定期的に診ていきます。
その際に、機械を用いたクリーニングや、ブラッシング指導、フッ素塗布などを行うことをおすすめします。
3.まとめ
エナメル質形成不全の問題点としては、
・ 見た目が良くない(変色・形状)
・ 知覚過敏を生じやすい
・ むし歯になりやすい
・ 咬み合わせ、歯並びの乱れにつながる
ことが挙げられる。
家庭でできる対処としては、お口の中を観察する習慣をつけること、毎日のブラッシングをていねいに行うことである。
歯科医院における対処としては、
・ むし歯の予防処置
・ エナメル質が形成されなかった部位を補う処置
・ 定期健診を行い、その時期に必要となる処置を行い、お口の中の健康を保っていくこと
である。
エナメル質形成不全は、10〜20%の割合でおこると言われています。つまり、5〜10人に1人はエナメル質形成不全が認められるということですね。
形成不全の程度は、全顎的な治療が必要になるものから、そのまま様子をみていくものまで様々です。
学校健診などでエナメル質形成不全を指摘された、ご家庭で「あれ?」と思う歯を見つけた場合は、歯科医院を受診するようにしましょう。
そして、何らかの処置が必要なのか、このまま注意深く経過観察をしていくのかなど、今後について方針を立てていくことをおすすめします。
お口の中に、気になることがございましたら、ご相談ください。
笠貫歯科クリニックでは、皆様のお口の中の健康を守っていくことができるよう、お手伝いさせていただきます。