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エナメル質形成不全

2024年6月29日

学校の歯科健診や、定期健診などで「エナメル質形成不全歯があります」と言われたら・・・不安になってしまいますね。
「乳歯がエナメル質形成不全だと、永久歯もエナメル質形成不全になるの?」
「私のせいで、子どもの歯が形成不全になってしまったのかな・・・」
そんな不安な声も聞こえてきます。
歯の形成不全は、けっして珍しいものではありません。
そして、お母さんが責められるものでもありません。
大切なのは、形成不全の原因および程度ごとに、しっかりとした対処が必要だということです。

ここでは、エナメル質形成不全について、2回に分けてお話していきます。
今回は、エナメル質形成不全とはどのようなものなのか、そして、その見分け方について、お話していきましょう。

 

 

 

目次

1.エナメル質形成不全とは?
2.エナメル質形成不全の原因
 2-1.遺伝性のエナメル質形成不全
 2-2.全身的な原因によるエナメル質形成不全(非遺伝性)
 2-3.局所的な原因によるエナメル質形成不全(非遺伝性)
 2-4.原因不明のもの:MIH(molar incisor hypomineralization)
3. エナメル質形成不全の見分け方
4. まとめ

 

 

 

1. エナメル質形成不全とは? 

歯の表面は、エナメル質という、人体で最も硬い組織によって覆われています。
エナメル質は、硬い食べ物を咬むことによる歯へのダメージを防御したり、熱いもの・冷たいものといった刺激が、歯の内部に伝わるのを防いだりする働きがあります。
そんなエナメル質がうまく作られないことを「エナメル質形成不全」といいます。
エナメル質形成不全には、エナメル質の量の障害による「エナメル質減形成」と、エナメル質の質の障害による「石灰化不全」の2種類があります。
この2つを確定診断として見分けることは難しく、その対処法も同じなので「エナメル質形成不全」という1つのくくりとして考えて良いでしょう。

 

 

2. エナメル質形成不全の原因

エナメル質形成不全の原因は、遺伝性のものと、遺伝性でないもの(非遺伝性のもの)、そして、原因不明のものに分けられます。それぞれをみていきましょう。

2-1. 遺伝性のエナメル質形成不全 

遺伝性のエナメル質形成不全は、血族内で遺伝していきます。乳歯・永久歯全ての歯に形成障害が認められ、その症状も様々であることから、乳歯の萌出時期から小児歯科にて長期的な計画を立てて、専門的な歯科治療を継続して行うことが必要になってきます。

 

 

 

2-2. 全身的な原因によるエナメル質形成不全(非遺伝性)

全身的な原因とは、歯が形成される時期に全身に何らかの問題が生じ、それによって歯の形成も影響を受けることをいいます。歯が顎骨の中で形成され始めるのは、赤ちゃんが生まれてくるずっと前の、お母さんのお腹で成長している時期になります。歯が形成される時期は左右ほぼ同じなので、全身的な原因による形成不全は、左右対称に認められることが特徴です。

 

 

全身的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
・ 母体の栄養障害や代謝障害、妊娠初期の感染症や、特定薬物の長期継続投与
・ 幼少期の発熱性疾患
・ 栄養障害(カルシウム、リン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD欠乏など)
・ 内分泌異常
・ 風疹などの感染症
・ 早産による代謝障害、低酸素症、新生児重症黄疸、栄養障害など

 

 

お母さんの中には、乳歯に形成不全が見つかると自分のせいだと感じてしまう方、思い悩んでしまう方が少なくありません。
しかし、原因がどこにあるのかは、はっきりしないことのほうが多いのです。それよりも、全身的な原因である場合は、エナメル質形成不全が左右対称に認められる可能性が高いということのほうが重要です。

 

そのため、
・ 形成不全が明らかになった歯の反対側の歯に、異常がないかを確認すること
・ 今は何もなくても、歯が欠けたり、虫歯になりやすかったりといった形成不全の兆候が、今後出てくる可能性などを予測すること
・ 同じ時期に形成された歯を、注意深く経過観察すること
などが、大切になってくるのです。

 

 

2-3. 局所的な原因によるエナメル質形成不全(非遺伝性)

局所的原因によるエナメル質形成不全の場合は、その原因が生まれてから生じることが多いために、永久歯に認められることがほとんどです。
1~2歯に限局することが多く、左右対称には認められないのが特徴です。
原因としては、以下のようなことが挙げられます。
・ 乳歯への外傷
・ 乳歯のむし歯の進行による、歯根周囲の炎症
・ 慢性的な顎骨内での炎症
乳歯に大きなむし歯があった場合は、その下から生えてくる永久歯に何らかの影響を与えることがあります。
「乳歯だから、むし歯になっても平気」
ではなく、しっかりとしたケアを行っていくことが大切ですね。

 

 

2-4. 原因不明のもの : MIH(molar incisor hypomineralization)

エナメル質形成不全には、原因不明のものがあります。MIHと呼ばれるエナメル質形成不全は、2001年に初めて発表されました。
そして、原因は、未だに解明されていません。

 

MIHの特徴としては、エナメル質形成不全が第一大臼歯(前から6番目の奥歯。6歳臼歯とも呼ばれる)と、永久歯の前歯に現れ、その重症度は左右非対称です。

 

 

具体的な症状としては、変色や歯質欠損、知覚過敏などが挙げられます。このMIH、歯が生えた直後は「変色がある程度かな・・・」と、思われていたのに、暫くしてから、歯が大きく欠けたりすることがあるので、注意が必要です。MIHが疑われる場合は、定期的な前歯と第一大臼歯のチェックが必須となるのです。

3. エナメル質形成不全の見つけ方

エナメル質形成不全は、学校の歯科健診や、歯科医院での口腔内チェックの際に発見されることが多いでしょう。では、ご家庭で気を付けることとしては、どのようなポイントがあるのか、みていきましょう。

 

 

・ 歯の一部分に変色がみられ、表面がでこぼこしている
エナメル質形成不全では、生えてすぐの段階から歯の一部分に白色・黄色・褐色の部分が認められることがあります。また、歯の表面がザラザラしている、凹凸があることが多くあります。

 

そのため、着色汚れがつきやすく、その結果として変色して見えることもあります。むし歯の初期症状でもホワイトスポットと呼ばれる白色の変化があり、形成不全とむし歯の初期症状を区別するのは困難です。

 

 

しかし、形成不全であっても、むし歯の初期症状であっても、そこに汚れがたまることによってむし歯へと発展していくことに変わりありません。変色があるところ、表面がザラザラしているところは、日頃からしっかりと歯ブラシを当てて、磨くようにしましょう。
そして、一度歯科で診てもらうことをおすすめします。

 

 

・ 歯の形が複雑
エナメル質形成不全では、咬み合わせの面にクレーターのようなくぼみができ、その最深部は黄色味がかったように見えることがあります。これは、エナメル質がうまく作られなかったために、エナメル質の層表面に穴が開いている、もしくは欠けてしまって、内部の象牙質の色が透けて見えている状態です。歯が生えた時からある場合と、萌出後しばらくしてから表面が欠けてしまう場合があるので、むし歯との区別がつきにくいかと思います。

 

エナメル質内に限局した欠損ならばよいのですが、象牙質が露出してしまっている場合は、冷温刺激によって痛みを感じやすくなります。

 

また、くぼみが深いと、清掃しにくいことからむし歯の発生リスクが高くなります。
いったんむし歯になってしまうと、進行が非常に速いため、出来るだけ早めに歯科医院にて診てもらい、必要があればむし歯の予防処置をすることをおすすめします。

 

 

 

 

まとめ

・ エナメル質形成不全とは、歯の表面を覆っているエナメル質がうまく作られなかったことによるものである
・ 遺伝性のエナメル質形成不全は、早い時期に専門機関にて長期的な治療計画を立てる必要がある
・ 非遺伝性で全身的な原因によるエナメル質形成不全は、左右対称に認められることが多い
・ 非遺伝性で局所的な原因によるエナメル質形成不全は、乳歯の深いむし歯や外傷によって、その下の永久歯に影響が出る場合が多い
・ 原因不明のものは、永久歯の前歯、第一大臼歯に認められることが多い
・ 家庭では、歯の変色や、形の複雑さ、穴が空いているように見える歯がないか、などを観察すると良い
・ 疑わしい歯を見つけた場合は、歯科医院を受診することを勧める。

 

 

乳歯にエナメル質形成不全が認められたからといって、永久歯にもエナメル質形成不全があるとは限りません。しかし、エナメル質形成不全が1本あると、他の部位にも形成不全歯がある可能性はありますので、注意が必要ですね。

 

また、エナメル質形成不全は、適切な処置を行っていけば、怖い疾患ではありません。

 

次回は、
エナメル質形成不全の何がいけないのか
エナメル質形成不全があった場合、具体的にどうすれば良いのか
について、お話していきましょう。

 

 

お子さんの歯で気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

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