生まれてきてくれてありがとう!~口唇裂について~
2024年6月25日
皆さん、こんにちは!こんばんは!
以前、口唇口蓋裂についてのお話しをしました。
そこで今回は口唇裂に焦点をあてて、お話ししていきたいと思います。
口唇口蓋裂は日本人に500人〜600人に1人の割合で生じるとされています。
これは日本人の乳幼児に生じる先天性疾患のうち、最も発生頻度が高い疾患とされています。
なので、口唇口蓋裂は決して縁も所縁もない疾患とは言えません。
この記事を読んでくださっている読者さんの中には、ご自身が口唇口蓋裂の方や、親族や身近な人に口唇口蓋裂の方がいるという人もいらっしゃると思います。
「どうして自分だけが・・・。」と思い悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、やっぱり、命は美しいものです。ですので、どんな方でも「生まれてきてくれてありがとう」と感じます。
さて、前置きが長くなりましたが、今回はそんな身近な「口唇裂」のお話をします。
目次
①口唇裂とは?
◆いったいどんな病気?
◆原因はあるのか?
② 口唇裂の問題点
◆審美障害
◆哺乳障害
◆歯列咬合の問題
③口唇口蓋裂の治療
◆哺乳管理
◆口唇形成術
◆二次的修正術
④まとめ
口唇裂とは?
口唇裂は口唇口蓋裂の病態の一つです。口唇口蓋裂は唇やお口の天井部分に割れ目がある病気でした。口唇裂はこのうち、唇のみに割れ目がある病気です。
いったいどんな病気?
口唇裂は唇が生まれつき割れている疾患です。人間の唇は、左右と真ん中の3つのパーツによって作られています。口唇裂は、胎児の時に、これら3つのパーツのうち、左右どちらか、あるいは、左右両方のパーツがくっつくことなく生まれてくる疾患です。片方のみに裂がある場合は片側性、左右どちらも裂がある場合は両側性と呼ばれます。一般的に、片側性の邦画は両側性に比べて発生頻度が高く、片側性の場合は、左側に多いと報告されています。
また、裂が鼻の穴まで及ぶ場合を完全裂、及ばない場合を不完全裂と呼びます。
このように、口唇裂には、様々な形があり、それぞれによって治療アプローチが異なってくることがあります。
口唇口蓋裂の原因
全身疾患の中には、原因となっている遺伝子がはっきりとしている疾患もあります。その一方で、喫煙や食習慣などの様々な環境因子などが絡み合って疾患が生じる場合も少なくありません。
口唇口蓋裂は、様々な報告がありますが、現時点では「多因子疾患」と位置付けられています。つまり、遺伝子的要因や環境因子など多くの因子が複雑に絡み合って発症するとされています。つまり、原因はイマイチはっきりしないと言えます。
まずは口唇裂がどのような病気かをご理解いただけましたか?病気について知ることは、相手を理解することと同じです。お互いが理解し合っていきましょう。
口唇裂による問題
口唇裂によって生じる問題はたくさんあります。次に、口唇裂によって引き起こされる問題点を解説しましょう。
審美障害
最初は、見た目の問題です。口唇裂は、お顔の皮膚も割れています。つまり、内臓疾患と違い、相手から見てわかるということです。
それに加え、鼻の形が変形します。これは、鼻を支える組織が口唇裂によって不足するために生じます。一般的に、裂がある側の鼻が扁平になります。
哺乳障害
皆さんもものを飲み込む時は唇を閉じますよね。人間がものを飲み込むときは唇を閉じなければうまくものを飲み込むことはできません。赤ちゃんの場合は、ミルクを飲むときに、唇を閉じなければなりません。
口唇裂を持つ赤ちゃんは、裂によって、唇をうまく飲み込むことができません。このため、ミルクが鼻漏れしたり、うまく飲み込めずに咳き込んだりすることもあります。また、ミルクの摂取量が少なくなる傾向にあるため体の成長が遅くなる傾向にあります。
歯列・咬合の問題
成長に伴って、乳歯や永久歯が生えてきます。おおよそ3歳ごろに乳歯が生え揃い、12歳くらいに永久歯が生え揃います(親知らずが18歳ごろに生えてくる方もいます)。
口唇裂がある場合、歯が生える土台部分(顎堤:「がくてい」と呼びます)の骨も割れている場合も少なくありません。歯は骨の上に生えるため、骨の欠損があると、歯が生える部分が少なくなり、歯並びが悪くなります。これによって、適切な噛み合わせを獲得することも困難になります。
口唇裂患者はこの他にも、永久歯の問題や、心理的な側面など多くの問題点を抱えています。したがってより多面的な治療が必要になってきます。
口唇口蓋裂の治療
さて口唇裂を持つ患者さんの問題点に対して様々な治療が行われます。具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。
哺乳管理
最も大切なのが哺乳管理です。赤ちゃんが健やかに成長するためには欠かせません。口唇裂を持つ子供は口蓋裂も合併している場合があります。赤ん坊が適切に哺乳できるように最適な哺乳瓶の使用や、NAM(ナム)やHotz床(ホッツしょう)といった哺乳を補助する器具を作成し、哺乳指導を行います。
口唇形成術
赤ん坊の体重が約6kgになるのを目安に全身麻酔下で口唇形成術を行います。これは唇周囲の筋肉や皮膚を再建する手術を行います。これによって、哺乳の改善や審美性の向上が図れます。
二次的修正術
口唇修正術を行った後に必要に応じて行います。5歳ごろに行うときもあります。また、成長に伴い18歳以降に修正術を再度行い、鼻の形の修正や唇にできた傷跡をきれいにする手術を行います。
ここで、紹介した以外にも、矯正治療や言語治療、母子心理カウンセリングなど、多くの問題を抱えているからこそ、より多くのアプローチで自立を目指しています。先天性疾患の場合、日本の保険制度を用いて、一定の条件下で保険治療が可能になります。なので、経済的な面からも国の後押しを受けて治療を行うことができます。
まとめ
今回は口唇裂の実際や治療についてお話しました。皆さんの友人や知人に口唇裂をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。一人で悩まず、手を差し伸べてみてください。どんな病気を持っていようが、どんな境遇で産まれようが、命は尊いものです。すべての人に「生まれてきてくれてありがとう」と言える世界があるといいですね。