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マタニティー歯科の勧め マイナス1歳から始める虫歯予防④

2024年11月19日

妊娠中の口腔ケアのポイント

「人生100年時代」と言われるように、日本の平均寿命は延び続けていますが、日常生活に制限のない、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」と平均寿命の間には、約10年の開きがあります。健康上の問題などで、支援や介護を必要とする日常生活に制限のある期間が、約10年もあるということです。いつまでも元気に過ごすためには「健康寿命」を延ばすことが大切です。

生きていくために欠かせないことは、「呼吸をすること」と「食べること」。一生使う口の土台は、お腹の中にいる時=マイナス1歳から作られます。妊婦さんの心と身体の健康を大切にすることは、生まれてくる赤ちゃんの一生涯の健康を守ることにつながります。

妊娠中は、悪阻により口内環境が悪くなりやすいです。歯磨き自体が吐き気を催す原因になるため、十分に歯垢を落とし切れずに歯磨きを終えてしまうこともあるかもしれません。悪阻による嘔吐でお口の中が酸性に傾きやすくなるのも、虫歯ができやすくなる原因になります。また、歯周病菌の中には女性ホルモンを好む菌がいます。そのため、妊娠中に女性ホルモンの働きが活発になると歯周病になる可能性が高くなるのです。

悪阻で歯磨きが難しい時期は、以下のようなことに気をつけてお口のケアをすると良いと思います。

  • ①体調の良い時間帯に歯磨きをする
    悪阻がひどい時期は、無理に歯磨きをせずに、体調の良い時間帯を見計らって歯を磨くようにしましょう。ただし、夜寝る前だけはできるだけ歯を磨くように心掛けましょう。寝ている間は唾液の分泌量が減るので、口の中の細菌が増えやすく、虫歯や歯周病になりやすくなります。
  • ②奥から前に向かって歯磨きをする
    口に伝わる刺激が少ないと、吐き気を催しにくくなることがあります。悪阻の時は、歯ブラシを小刻みに動かしながら、ゆっくりと奥から前に向かって磨くようにしましょう。奥歯を磨く時には、横から歯ブラシを入れると、嘔吐反射が起きにくくなります。
  • ③顔を下に向けたまま歯磨きをする
    口の中に唾液や泡が溜まると、吐き気を催しやすくなります。顔を下に向けて、口の中に唾液や泡を溜めないようにしながら歯を磨くようにしましょう。
  • ④デンタルフロスや歯間ブラシを使用する
    悪阻の時は磨き残しが増えるので、デンタルフロスや歯間ブラシを使用して、歯と歯の間の汚れをしっかりと除去しましょう。デンタルフロスは、持ち手がついている「ホルダータイプ」が、口への刺激が少ないのでお勧めです。
  • ⑤刺激の少ない歯磨剤を使う
    歯磨剤の味や臭いで気持ちが悪くなってしまうことがあります。味や臭いの刺激が少ない歯磨剤を使いましょう。泡が立ちにくく、少量の使用で済むフォーム状の歯磨剤を使うのもお勧めです。場合によっては、歯磨剤を使わない磨き方もあります。
  • ⑥歯ブラシはヘッドの小さいコンパクトなものを使う
    歯ブラシが頰の内側や舌、歯肉に触れると、嘔吐反射が起きやすくなります。ヘッド(歯ブラシの毛の生えている部分)が小さい歯ブラシは、口に入れた時の圧迫感が少なく、頰や舌、歯肉を刺激せずに磨くことができます。
  • ⑦洗口液を使う
    どうしても歯磨きが難しい場合は、洗口液を使って口の中の汚れを洗い流しましょう。前後左右に液体を動かすイメージで、しっかりぶくぶくうがいをすることがポイントです。洗口液は、補助的なものですので、体調が良くなったタイミングで、1日1回は歯磨きをしましょう。
  • ⑧キシリトール製品を利用する
    天然の甘味料であるキシリトールには、虫歯菌の働きを弱め、プラークを着きにくくする効果があります。取り入れられるようであれば、キシリトール製品を利用しましょう。口の中に長く留まるガムやタブレットの形で摂取することがお勧めです。出産前に一定期間キシリトールを摂取した母親から生まれた子供は、虫歯のリスクが低くなるという報告もあります。

妊娠中の歯科処置による赤ちゃんへの影響

妊婦さんが歯科処置を受ける際に、レントゲン撮影や麻酔、投薬などのお腹の赤ちゃんへの影響を心配するのは自然なことです。

麻酔による赤ちゃんへの影響

虫歯処置で使われるのは局所麻酔です。胎盤を通じて、お腹の赤ちゃんに麻酔薬が届くことはありません。歯科処置で一般的に麻酔として使われているのは、キシロカインという薬です。キシロカインは、無痛分娩にも用いられているもので、通常の歯科処置に使う量であれば、問題無いと言われています。身体への負担が少ないものを、最小限の量使用します。妊婦さんが痛みを我慢するストレスはお腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼすため、局所麻酔を使って無痛的にきちんと処置を行った方が安全であると言われています。妊娠16週~27週の安定期であれば、ほとんど心配はありません。

レントゲンの赤ちゃんへの影響

赤ちゃんへの被爆が心配になると思います。妊娠15週までの初期は、感受性が高いためできるだけ避けます。妊娠16週~27週の安定期以降であれば、特に問題ありません。多くの歯科医院で使われているレントゲン撮影装置は、デジタルレントゲン撮影装置で、非常に低い線量で撮影することが可能です。ですが、どうしても心配な場合には、撮影せずにできる処置もありますので、ためらわずに歯科医師にお伝えください。

飲み薬の赤ちゃんへの影響

妊婦さんには、抗菌薬や鎮痛剤(痛み止め)を使うような抜歯などの処置は、できるだけ出産や授乳の時期を過ぎてから行うようにお勧めしますが、どうしても処置を行う必要がある場合もあります。どんな薬も、お腹の中の赤ちゃんへの安全性は保証されていません。妊娠中や授乳中でも安全に使用できる抗生剤や鎮痛剤を選び、最小限の量を使用します。

まとめ

・悪阻の時期は、口腔ケアに工夫が必要

・歯科処置に伴う赤ちゃんへの影響は、ほとんど心配がない

マタニティー歯科の勧め マイナス1歳から始める虫歯予防③

2024年11月12日

マタニティー歯科を受診するには?

「人生100年時代」と言われるように、日本の平均寿命は延び続けていますが、日常生活に制限のない、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」と平均寿命の間には、約10年の開きがあります。

健康上の問題などで、支援や介護を必要とする日常生活に制限のある期間が、約10年もあるということです。いつまでも元気に過ごすためには「健康寿命」を延ばすことが大切です。

生きていくために欠かせないことは、「呼吸をすること」と「食べること」。呼吸が楽にできる鼻、きちんと噛めて飲み込める口は、人生の質を左右します。そして、一生使う口の土台は、お腹の中にいる時=マイナス1歳から作られるのです。

お口の健康は体の健康、心の健康にもつながります。妊娠・出産をすると、女性の心と身体はいつもとは違うデリケートな状態になります。妊婦さんの心と身体の健康を大切にすることは、生まれてくる赤ちゃんの健康を守ることにつながります。

生まれてくる赤ちゃんのために、出産前の歯科検診、口腔ケア、虫歯の処置を行いましょう。

妊娠中に起こりやすいトラブル

  • ①虫歯の悪化
    唾液の質・量の変化や悪阻で、口の中が虫歯になりやすい状態になります。また、出産後の生活パターンの変化により歯磨きが疎かになりやすいことも、虫歯が悪化しやすい要因になります。子供の虫歯リスクを考える場合、いちばん接する時間が長い母親の口の中の状態がとても重要です。母親が定期的にメインテナンスを受けている場合、子供の虫歯になるリスクがそうでない場合の半分になると言われています。
  • ②妊娠性歯周炎
    女性ホルモンの影響で、普段よりも歯肉が腫れやすく、歯周病菌の活動が活発になり、妊娠性歯肉炎を発症しやすくなります。妊娠性歯周炎は、妊婦さんの約50%が経験すると言われています。適切なケアが為されないと、出産後も歯周炎が継続する場合があります。
  • ③酸蝕歯
    悪阻による嘔吐や味覚の変化で歯が溶かされやすく、「酸蝕歯(さんしょくし)」になりやすくなります。酸蝕歯とは、飲食物や薬品などの酸によって歯の表面のエナメル質が溶けた状態のことで、歯の表面にあるエナメル質が傷つき、徐々に薄くなることで、歯の先端部分から透明になっていきます。症状としては、熱い物や冷たい物がしみる(知覚過敏)、歯の艶が失くなる、歯が擦り減って象エナメル質の下の象牙質が露出して斑らに見えたりします。虫歯は虫歯菌が原因ですが、酸蝕歯には細菌が関与していません。
  • ④妊娠性エプーリス
    エプーリスは歯肉にできる良性のしこりのようなもの(腫瘤)で、炎症や刺激に対する反応により形成されます。歯磨きにより出血したり、痛みが生じる場合があります。大きくなると、歯が動かされて、歯並びが悪くなることがあります。妊娠性エプーリスは出産後に自然に消退することが多く、経過観察となりますが、自然に消退しない場合には、外科的に切除することがあります。
  • ⑤姿勢の変化による腰痛・咬み合わせのずれ
    お腹が大きくなってくると体の重心バランスが変化します。反り腰になりやすく、咬み合わせに影響が出る場合があります。
  • ⑥親不知などの炎症の悪化
    赤ちゃんを母親の免疫機能から守るための免疫機能の低下(免疫寛容)により、元々炎症がある箇所が悪化する場合があります。
  • ⑦妊娠糖尿病
    妊娠すると、ホルモンの影響で、インスリンが効きにくい状態になり、血糖値が上昇しやすくなります。妊婦さんの約1%~3%が、妊娠糖尿病を発症すると言われています。糖尿病になると、細菌に対する抵抗力や組織の修復力の低下、口腔内の乾燥が生じ、歯周病を悪化させます。歯周病にかかってしまった妊婦さんは、歯周病菌によりインスリンの働きが阻害され、血糖コントロールを悪くしてしまうため、糖尿病のリスクが高まります。

妊娠中の歯科受診のタイミング

  • ①妊娠初期:15週まで
    切迫早産が起こりやすい時期です。歯の痛みや歯茎の腫れなどの急性症状がある場合には、応急処置のみ行います。特に4週~8週は慎重に治療にあたり、12週までは口腔内の診査やクリーニング程度にしておきます。レントゲン撮影や、麻酔、投薬などは注意が必要です。
  • ②妊娠中期:16週~27週
    安定期になります。ほとんどの歯科治療を行えます。レントゲン撮影や、麻酔、投薬なども可能になります。出産前の比較的安定しているこの時期に、治療を行うことが望ましいです。
  • ③妊娠後期:28週以降
    お腹がかなり大きくなり、治療体位が苦しくなることがあります。早産や急な陣痛に備え、治療は応急処置に留めます。治療が必要な場合は出産後に改めて治療を行います。

妊娠中の歯科受診時に注意すること

  • 治療前に、妊娠第何週であるかを歯科医師にきちんと伝えましょう。受診時には、母子手帳を持参しましょう。
  • 歯科処置では、長時間同じ体勢を取り続けることになります。通常、歯科処置中は仰向けになります。姿勢が苦しいと感じる場合には、すぐ歯科医師に知らせ、別の楽な姿勢にしてもらいましょう。
  • 処置中に体調が悪くなった場合や、処置に対して不安がある場合は、遠慮なく歯科医師に伝えましょう。

「十月十日」というくらい、妊娠期間は長期間に及びます。妊娠中は悪阻や唾液の減少など、口内環境が悪化しやすくなります。妊娠中に虫歯処置を受けても大丈夫ですから、痛みを我慢しないで歯科を受診するようにしましょう。

とは言え、レントゲン撮影や麻酔、抗生物質の服用などを妊娠中に行うことについて、胎児への影響を考えて不安な気持ちを持つ妊婦さんは多いと思います。妊娠中の歯科処置をできるだけ避けるために、妊娠する前の段階=普段から、お口の中を良い状態にしておくことが理想です。

妊娠中・出産を望む方は、未来を見据えて、計画的に歯科を受診することが大切になってきます。

まとめ

・妊娠中は、口腔内環境が悪化し、トラブルが起こりやすい

・妊娠中の歯科処置は、16週~27週の安定期が望ましい

・妊娠前から口の中を良い状態にしておくことが望ましい

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