歯周病は早産・低体重児のリスクを高める?妊娠前から始める口腔ケアの重要性
2026年5月21日
◯はじめに
「妊娠中に歯ぐきから血が出るようになった」「なんだか歯がうずく気がする」、そんな変化を感じながらも、「妊娠中だし、歯医者は後でいいか」と後回しにしてしまっていませんか?
実は、妊娠中の歯周病を放置すると、お母さん自身だけでなく、お腹の赤ちゃんにも影響する可能性があります。今回は、歯周病と早産・低体重児出産の関係について、研究データも交えながらわかりやすく解説します。
◯目次
- ◯妊娠中はなぜ歯周病になりやすいのか
- ◆ホルモン変化が口の中を変える
- ◆食生活・生活習慣の変化も影響する
- ◯歯周病が早産・低体重児のリスクを高めるメカニズム
- ◆プロスタグランジンと子宮収縮の関係
- ◆妊娠中の歯周病リスクはどのくらい?
- ◯「妊娠前」から歯科へ行くべき理由
- ◆岡山大学の研究が示す新事実
- ◆安心して受けられる治療時期とは
- ◯まとめ
◯妊娠中はなぜ歯周病になりやすいのか
◆ホルモン変化が口の中を変える
妊娠中は、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が大きく増加します。実はこの女性ホルモン、歯周病菌の一部にとっての栄養源となることがわかっています。そのため妊娠中は、普段と同じ歯磨きをしていても歯周病菌が増えやすく、歯ぐきに炎症が起こりやすい状態になってしまいます。
「妊娠性歯肉炎」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。これは、妊娠中に起こりやすい歯ぐきの腫れや出血を指す状態です。適切なケアをしないままでいると、歯周病へと進行する可能性があります。
◆食生活・生活習慣の変化も影響する
つわりによって歯みがきが十分にできなかったり、食事の回数が増えたりと、妊娠中は口の中の環境が乱れやすくなります。こうした生活の変化も、歯周病菌が増えやすい状態につながります。
「妊娠中は仕方ない」と思いがちですが、こういう時期だからこそ、いつも以上に意識してケアを行うことが大切です。
◯歯周病が早産・低体重児のリスクを高めるメカニズム
◆プロスタグランジンと子宮収縮の関係
歯周病による炎症が進むと、体内では「プロスタグランジン」と呼ばれる物質が増えやすくなります。このプロスタグランジンは、本来、出産時に子宮を収縮させる働きを持つ物質です。
歯周病の炎症によってこの物質が過剰に増えると、子宮が早い段階から収縮しやすくなり、早産(妊娠37週未満での出産)や低出生体重児出産(出生体重2,500g未満)のリスクにつながる可能性があります。
◆妊娠中の歯周病リスクはどのくらい?
「歯周病と早産の関係なんて、大げさではないか?」と思う方もいるかもしれません。ですが、歯周病が早産や低出生体重児出産のリスクファクターとなる可能性は、複数の研究で示されています。
報告によって幅はありますが、メタアナリシスでは、歯周病がある妊婦では早産のリスクが約2倍、低出生体重児出産のリスクが約2.2倍に高まるとされています。
もちろん、すべての方に同じような影響が出るわけではありません。ただ、妊娠中の歯周病は「口の中だけの問題」とは言い切れず、赤ちゃんへの影響も考慮すべき状態といえます。
◯「妊娠前」から歯科へ行くべき理由
◆岡山大学の研究が示す新事実
これまで、歯周病と赤ちゃんの体重の関係は「出生時の体重」との比較で語られることがほとんどでした。しかし、岡山大学大学院の研究グループが2020年に発表した研究(英国学術誌「Scientific Reports」掲載)では、より具体的な知見が示されています。
妊娠初期の時点で歯周病があると、その後出産に至るまでの期間を通じて、胎児の推定体重が歯周病のない人と比べて継続的に低い値を推移することが明らかになりました。
この研究から見えてくる大切なポイントは、「妊娠してから歯科に行けばいい」のではなく、「妊娠前の段階から歯周状態を整えておくことが、赤ちゃんの発育にも関わる可能性がある」ということです。妊活中の方にこそ、早めの歯科受診を検討していただきたい理由はここにあります。
◆安心して受けられる治療時期とは
「妊娠中に歯の治療をしても大丈夫?」と不安に感じる方も多いですが、安定期にあたる妊娠中期(5〜7か月ごろ)は、比較的歯科治療を受けやすい時期とされています。
厚生労働省の資料でも、つわりがおさまる4〜5か月頃に歯科健診を受け、体調の安定した妊娠中期に必要な治療を行うことが勧められています。レントゲン撮影についても、必要に応じて防護エプロンを着用し、撮影範囲を最小限にするなどの配慮のもとで行われます。
まずは、かかりつけの歯科医院に妊娠中であることを伝えたうえで相談してみてください。治療の内容や時期を調整しながら、無理のない形で進めてもらえます。
◯まとめ
妊娠中の歯周病は、早産や低体重児出産のリスクに関わる可能性があります。その背景には、歯周病による炎症が、子宮収縮に関わるプロスタグランジンの増加につながることが指摘されている点があります。
さらに、岡山大学の研究では、妊娠前からの歯周状態が胎児の発育にも継続的に関わる可能性が示されており、妊活中からの口腔ケアの重要性が改めて注目されています。
赤ちゃんのために葉酸を飲んだり、食生活に気をつけたりするのと同じように、口の中の健康管理も大切な妊娠準備のひとつです。「気になっているけれど、まだ行っていない」という方は、ぜひこの機会に歯科受診を検討してみてください。

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