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世界で広く普及している虫歯予防法『水道水のフロリデーション』

2024年7月18日

フッ素は、むし歯の予防に非常に効果的ですね。

では、フッ素を用いたむし歯予防法には、どのようなものがあるでしょう。

 

日本では局所的応用が主流ですが、全世界をみてみると、水道水フロリデーションという方法が広く普及しています。

今回は、水道水フロリデーションについて、お話していきましょう。

 

 

目次
1.水道水フロリデーションとは
2.日本の水道水は?
3.海外における水道水フロリデーション事情
4.まとめ

 

 

1.水道水フロリデーションとは 

むし歯予防のフッ化物(フッ素)利用法の種類をみていきましょう。

まず、局所応用といわれる方法です。これは、お口の中に直接フッ化物を作用させていくものです。

フッ化物歯面塗布・フッ化物洗口・フッ化物配合歯磨剤 などが挙げられます。

日本では、この局所応用が広く行われています。

 

 

次に、全身応用といわれる方法です。水道水やサプリメント、食品などからフッ化物を摂取し、体内に吸収されたのちに、口腔周囲に届き効果を発揮するものです。
水道水フロリデーション・フッ化物サプリメント(錠剤・液剤など)・食品へのフッ化物添加(食塩・ミルクなど)が挙げられます。

全身応用は現在、日本では行われていません。

 

 

この中の、フッ化物全身応用にあたる「水道水フロリデーション」について、みていきます。

水道水フロリデーションとは、水道水の中に含まれるフッ化物を適切な濃度に調整し、その水道水を摂取することによってむし歯の発生を抑制する方法です。
水道水フロリデーションは、アメリカの一部地域で初めて行われました。今では、水道水中のフッ化物濃度を0ppmから1.2ppmに上げるにつれて、むし歯の発生がどんどん減少していくということが実証されています。

 

 

しかし、水道水中のフッ化物濃度を高くすればよい、というわけではありません。フッ化物の過剰摂取は、歯牙フッ素症を引き起こすという側面も持ち合わせているのです。
歯牙フッ素症とは、歯の形成障害の一種で、歯の表面のエナメル質に境界不明瞭な白斑、白濁や、不透明な縞模様などが認められます。

 

これは、エナメル質が作られる時期に高濃度のフッ素を体内に取り込むことで生じるもので、既に萌出している歯面へのフッ素塗布や、歯磨き粉などの局所応用では発生しません。
水道水フロリデーションでは、歯牙フッ素症が発生しない濃度で、なおかつむし歯の発生を抑制する濃度に水道水のフッ化物濃度を調整します。

 

WHO(世界保健機構)では、水質基準としてのフッ化物濃度を1.5ppm以下、むし歯予防のための推奨水道水フッ化物濃度を0.7〜1.0ppmと定めています。
一般的には、水道水フロリデーションの濃度は1.0ppmが最も効果的であると言われています。

 

 

 

2.日本の水道水は? 

日本でも、過去に水道水フロリデーションが試験的に行われています。京都市山科地区で1952年から1965年までの13年間、そして、沖縄県、三重県でも行われたことがあります。

なかでも京都市山科地区では、水道水のフッ化物濃度を0.6ppmに調整して実施され、実際にむし歯予防効果が報告されたそうです。

 

しかし、現在では日本において水道水フロリデーションは行われていません。

日本の水道法における飲料水中フッ化物濃度は0.8ppm以下と定められていますが、実際はこれよりもはるかに低い値であると推察されます。
つまり、現在、日本の水道水にはむし歯予防効果はない、ということができます。

 

 

 

 

3.海外における水道水フロリデーション事情 

「海外では、水道水で手軽にむし歯予防が簡単で出来ていいなあ。」
そう思われたかたも、多いのではないでしょうか。

 

 

実際、水道水フロリデーションを行っている国は多く、アメリカのほかにもイギリス、オーストラリア、シンガポールなど、人口にすると3億人以上の人が水道水フロリデーションによってむし歯を予防しているのです。また、それぞれの国や民族、生活様式やむし歯有病状況の違いがあるにもかかわらず、大きなむし歯予防効果が報告されているそうです。

 

 

しかし、国や地域による背景の違いについても理解しなければいけません。
水道水フロリデーションは、天然の水の中に存在するフッ化物の量を適正な濃度に調整して、飲料水として摂取する方法です。天然水の水質は地域によってさまざまなので、天然水の中に含まれるフッ化物濃度が高すぎるために、フッ化物を除去するという意味での調整が必要な地域もあります。

 

 

経済的な理由などで、歯科を受診する割合が低い国でのむし歯予防対策として、全ての人が平等に予防措置を受けることが出来るように、という理由で水道水フロリデーションを導入している国もあるでしょう。

 

 

フッ化物を人工的に取り入れることは、薬物療法にあたると考え、拒否感を示す方もいます。
水道水フロリデーションでは、個人の選択権がありませんね。フッ化物の応用を望む人と望まない人、それぞれの意見を尊重するために、水道水フロリデーションを行わないという決断をした国もあるでしょう。

 

 

また、水道水フロリデーションにおけるフッ化物の濃度は、その土地の気温によって左右されます。
暖かい地域では水道水を飲用する量が多いために、フッ化物の濃度を低く、寒い地域では高く設定するのです。

 

 

日本のように、四季による温度変化や、北と南の気候の差が大きいという環境は、水道水フロリデーションを行う上でのフッ化物濃度の基準作りを難しくさせているのかもしれません。

このようなことから、日本ではフッ化物塗布や歯磨剤へのフッ化物添加など、フッ素の局所応用が虫歯予防の主軸となっていることが推察されます。

 

 

 

 

4.まとめ 

・ フッ化物の利用法は、大きく分けて2種類に分類される。
全身応用:水道水フロリデーション、フッ化物サプリメント、食品へのフッ化物添加
局所応用:フッ化物歯面塗布、フッ化物洗口、フッ化物配合歯磨剤

 

 

・ 水道水フロリデーションとは、水道水の中に含まれるフッ化物の濃度を適正な濃度になるよう、フッ化物の添加もしくは除去を行うことによって調整する。
それによって、むし歯の発生、および歯のフッ素症を抑制していく。

 

 

・ 日本では、過去に水道水フロリデーションが試験的に行われていたが、現在では行われていない。

 

・ 海外では、水道水フロリデーションは広く行われているが、その考え方や、実施する上での背景は国によって異なる。  

日本でも、将来的には水道水フロリデーションが行われる時代が来るかもしれません。
それまでは、日常生活においてはフッ化物配合の歯磨剤やうがい薬の使用などの局所応用でむし歯予防を行っていくのが良いでしょう。

もちろん、定期健診も大切です。

 

フッ素を用いた理想的なむし歯予防として、お家での毎日のケアに加えて、歯科医院にてお口の中を定期的にチェックして、クリーニングを行った上でフッ素塗布を行うことをおすすめします。

お口の中で気になることなどありましたら、お気軽にご相談ください。

エナメル質形成不全②

2024年7月14日

前回は、エナメル質形成不全の原因と、家庭での見分け方についてお話していきました。
今回は、エナメル質形成不全とは一体何がいけないのか、そして、どのように対処していったら良いのかについて、お話していきましょう。

 

 

目次
1. エナメル質形成不全の問題点
 1-1. 見た目
 1-2. 知覚過敏を生じやすい
 1-3. むし歯になりやすい
 1-4. しっかりと咬み合わなくなる
 1-5. 歯並びの乱れにつながる
2.エナメル質形成不全にどう対処していくか
 2-1. 家庭で出来る対処法
 2-2. 歯科医院でできる対処法
3.まとめ

 

 

 

1.エナメル質形成不全の問題点 

エナメル質形成不全であることによって、どのような問題があるのかをみていきましょう。

 

 

1-1.見た目 

エナメル質は、エナメル小柱と呼ばれる細長い柱状の構造が規則正しく並んで出来ています。
その色は半透明で、艶があります。
場所によっては内部の象牙質の色がうっすらと透けて見えるので、黄色味を帯びて見えることもあります。
エナメル質形成不全の場合は、エナメル質の形成が不規則になったり、厚みが薄くなったりします。
そのため、他の部位と比較して白色、黄色、褐色といった色の変化が認められます。
また、表面がザラザラしていることが多く、そのような部位には、外からの着色も付きやすくもなります。

 

 

1-2.知覚過敏を生じやすい 

歯の表面をガードしているエナメル質が一部分でも欠損すると、そこから冷温刺激が歯の内部に伝わりやすくなるために、知覚過敏が生じます。

 

 

1-3.むし歯になりやすい 

歯の大部分を占める象牙質は、その表面をエナメル質によって守られています。
エナメル質は非常に硬く、象牙質と比べてむし歯の進行もゆるやかです。
しかし、そのエナメル質がうまく作られていない、つまりエナメル質形成不全の部位は、むし歯の進行が非常に早くなります。
それに加えて、形成不全の部位は凹凸や深い溝などがあり、清掃が難しいことが多いので、汚れが残りやすくなります。
つまり、エナメル質形成歯は清掃が困難なためにむし歯のリスクが高く(虫歯になりやすく)、また、いったんむし歯になると進行が非常に速いということができるのです。

 

 

1-4.しっかりと咬み合わなくなる 

エナメル質形成不全は、その形成不全部位が咬合面(奥歯の咬む面)に広く認められると、反対側の歯とうまく咬み合わなくなります。
多数歯にエナメル質形成不全が認められると、大きな咬み合わせのズレにつながります。
1〜2歯だけの場合でも、上下の歯がバランスよく咬むことができないために、全体的な咬み合わせが悪くなる可能性があります。

 

 

1-5.歯並びの乱れにつながる 

エナメル質形成不全によっては、歯自体が小さく生えてくることもあります。
また、大きく歯が欠けてしまうことなどにより、歯と歯の間に大きなすき間ができることがあります。
そのすき間に、隣の歯が移動してきたり、倒れ込んできたりすることで、全体的な歯並びの乱れにつながってしまうことがあります。
特に、幼い頃の歯並びの乱れは、発音や顎の成長の妨げになってしまうこともありますので、注意が必要です。

 

 

 

 

2.エナメル質形成不全にどう対処していくか

エナメル質形成不全は、萌出直後からわかるものと、萌出後しばらくしてから歯が欠けたりして発見されるものがあります。
そんなエナメル質形成不全にどう対処していったら良いのかを、みていきましょう。

 

 

2-1.家庭でできる対処法 

・ お口の中を観察する習慣をつける
毎日でなくとも構いません。
仕上げ磨きをする前に、時々でもお子さんのお口の中を観察してみてください。

 

「歯に穴が開いていないかな」
「色がついていないかな」
「舌や頬の内側、歯茎はツルツルでピンク色かな」

何となくで構いません。

 

日頃からお口の中を見慣れておくことで、異常に気が付きやすくなります。
そして、何かいつもと違うところや、「あれっ?」と思うことがあれば、検診も兼ねて歯科医院で相談してみてください。

 

また、乳歯に大きなむし歯があった場合は、その下から生えてくる永久歯は注意して観察しましょう。
全身的な理由でのエナメル質形成不全の可能性を指摘された場合は、エナメル質形成不全が疑われる部分の歯を、特に注意してみていくと良いでしょう。

 

 

 

毎日のていねいなブラッシング
何といっても大切なのは、毎日行う家庭での歯磨きです。
エナメル質形成不全の部分は、特に気を付けて磨くように心掛けましょう。
全ての歯が永久歯に生え変わるまでは、大人の仕上げ磨きが必要です。
ピンポイントでも良いので、エナメル質形成不全の部位や、お子さんが磨きにくい部位は、大人が仕上げ磨きを行うようにしましょう。
家庭用フッ素の使用も効果的です。

 

 

 

2-2.歯科医院でできる対処法 

 

・ むし歯になりやすい部位の予防処置
エナメル質形成不全によって汚れがたまりやすく、家庭での清掃が難しい部位は、むし歯の予防処置を行っていきます。
状態によって異なりますが、シーラントというお薬で複雑な溝を埋めたり、定期的に高濃度のフッ素を塗布したりしていきます。

・欠けている部位、欠損が大きい部位の修復
欠けてしまった部位や、もともと形成されなかった部位を、白いプラスチックのお薬を用いて修復していきます。
大きく欠けている場合は、咬み合わせを回復させるために、歯全体に被せ物をする場合もあります。
乳歯であっても、被せ物をすることは可能です。
永久歯の場合は、乳歯と違って一生使う歯になります。
そのため、永久歯に被せ物をする際には、歯が完全に萌出して、周囲の歯肉の形が安定するのを待ってから、治療を行うのがベストです。
暫間処置という、最終的な被せ物の治療までに歯及び咬み合わせを保つ処置を行いつつ、様子をみる場合もあります。

 

・定期的な検診
エナメル質形成不全では、経過観察が非常に大切です。
今あるエナメル質形成不全歯が、新たに欠けたりしていないか。
他の部位に異常はみられないか
今の時期に出来る処置はないか
などを、定期的に診ていきます。
その際に、機械を用いたクリーニングや、ブラッシング指導、フッ素塗布などを行うことをおすすめします。

 

 

 

 

3.まとめ

エナメル質形成不全の問題点としては、

・ 見た目が良くない(変色・形状)
・ 知覚過敏を生じやすい
・ むし歯になりやすい
・ 咬み合わせ、歯並びの乱れにつながる

 

ことが挙げられる。

 

 

家庭でできる対処としては、お口の中を観察する習慣をつけること、毎日のブラッシングをていねいに行うことである。

歯科医院における対処としては、
・ むし歯の予防処置
・ エナメル質が形成されなかった部位を補う処置
・ 定期健診を行い、その時期に必要となる処置を行い、お口の中の健康を保っていくこと
である。

 

 

エナメル質形成不全は、10〜20%の割合でおこると言われています。つまり、5〜10人に1人はエナメル質形成不全が認められるということですね。
形成不全の程度は、全顎的な治療が必要になるものから、そのまま様子をみていくものまで様々です。

 

 

 

学校健診などでエナメル質形成不全を指摘された、ご家庭で「あれ?」と思う歯を見つけた場合は、歯科医院を受診するようにしましょう。
そして、何らかの処置が必要なのか、このまま注意深く経過観察をしていくのかなど、今後について方針を立てていくことをおすすめします。

 

 

お口の中に、気になることがございましたら、ご相談ください。
笠貫歯科クリニックでは、皆様のお口の中の健康を守っていくことができるよう、お手伝いさせていただきます。

エナメル質形成不全

2024年6月29日

学校の歯科健診や、定期健診などで「エナメル質形成不全歯があります」と言われたら・・・不安になってしまいますね。
「乳歯がエナメル質形成不全だと、永久歯もエナメル質形成不全になるの?」
「私のせいで、子どもの歯が形成不全になってしまったのかな・・・」
そんな不安な声も聞こえてきます。
歯の形成不全は、けっして珍しいものではありません。
そして、お母さんが責められるものでもありません。
大切なのは、形成不全の原因および程度ごとに、しっかりとした対処が必要だということです。

ここでは、エナメル質形成不全について、2回に分けてお話していきます。
今回は、エナメル質形成不全とはどのようなものなのか、そして、その見分け方について、お話していきましょう。

 

 

 

目次

1.エナメル質形成不全とは?
2.エナメル質形成不全の原因
 2-1.遺伝性のエナメル質形成不全
 2-2.全身的な原因によるエナメル質形成不全(非遺伝性)
 2-3.局所的な原因によるエナメル質形成不全(非遺伝性)
 2-4.原因不明のもの:MIH(molar incisor hypomineralization)
3. エナメル質形成不全の見分け方
4. まとめ

 

 

 

1. エナメル質形成不全とは? 

歯の表面は、エナメル質という、人体で最も硬い組織によって覆われています。
エナメル質は、硬い食べ物を咬むことによる歯へのダメージを防御したり、熱いもの・冷たいものといった刺激が、歯の内部に伝わるのを防いだりする働きがあります。
そんなエナメル質がうまく作られないことを「エナメル質形成不全」といいます。
エナメル質形成不全には、エナメル質の量の障害による「エナメル質減形成」と、エナメル質の質の障害による「石灰化不全」の2種類があります。
この2つを確定診断として見分けることは難しく、その対処法も同じなので「エナメル質形成不全」という1つのくくりとして考えて良いでしょう。

 

 

2. エナメル質形成不全の原因

エナメル質形成不全の原因は、遺伝性のものと、遺伝性でないもの(非遺伝性のもの)、そして、原因不明のものに分けられます。それぞれをみていきましょう。

2-1. 遺伝性のエナメル質形成不全 

遺伝性のエナメル質形成不全は、血族内で遺伝していきます。乳歯・永久歯全ての歯に形成障害が認められ、その症状も様々であることから、乳歯の萌出時期から小児歯科にて長期的な計画を立てて、専門的な歯科治療を継続して行うことが必要になってきます。

 

 

 

2-2. 全身的な原因によるエナメル質形成不全(非遺伝性)

全身的な原因とは、歯が形成される時期に全身に何らかの問題が生じ、それによって歯の形成も影響を受けることをいいます。歯が顎骨の中で形成され始めるのは、赤ちゃんが生まれてくるずっと前の、お母さんのお腹で成長している時期になります。歯が形成される時期は左右ほぼ同じなので、全身的な原因による形成不全は、左右対称に認められることが特徴です。

 

 

全身的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
・ 母体の栄養障害や代謝障害、妊娠初期の感染症や、特定薬物の長期継続投与
・ 幼少期の発熱性疾患
・ 栄養障害(カルシウム、リン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD欠乏など)
・ 内分泌異常
・ 風疹などの感染症
・ 早産による代謝障害、低酸素症、新生児重症黄疸、栄養障害など

 

 

お母さんの中には、乳歯に形成不全が見つかると自分のせいだと感じてしまう方、思い悩んでしまう方が少なくありません。
しかし、原因がどこにあるのかは、はっきりしないことのほうが多いのです。それよりも、全身的な原因である場合は、エナメル質形成不全が左右対称に認められる可能性が高いということのほうが重要です。

 

そのため、
・ 形成不全が明らかになった歯の反対側の歯に、異常がないかを確認すること
・ 今は何もなくても、歯が欠けたり、虫歯になりやすかったりといった形成不全の兆候が、今後出てくる可能性などを予測すること
・ 同じ時期に形成された歯を、注意深く経過観察すること
などが、大切になってくるのです。

 

 

2-3. 局所的な原因によるエナメル質形成不全(非遺伝性)

局所的原因によるエナメル質形成不全の場合は、その原因が生まれてから生じることが多いために、永久歯に認められることがほとんどです。
1~2歯に限局することが多く、左右対称には認められないのが特徴です。
原因としては、以下のようなことが挙げられます。
・ 乳歯への外傷
・ 乳歯のむし歯の進行による、歯根周囲の炎症
・ 慢性的な顎骨内での炎症
乳歯に大きなむし歯があった場合は、その下から生えてくる永久歯に何らかの影響を与えることがあります。
「乳歯だから、むし歯になっても平気」
ではなく、しっかりとしたケアを行っていくことが大切ですね。

 

 

2-4. 原因不明のもの : MIH(molar incisor hypomineralization)

エナメル質形成不全には、原因不明のものがあります。MIHと呼ばれるエナメル質形成不全は、2001年に初めて発表されました。
そして、原因は、未だに解明されていません。

 

MIHの特徴としては、エナメル質形成不全が第一大臼歯(前から6番目の奥歯。6歳臼歯とも呼ばれる)と、永久歯の前歯に現れ、その重症度は左右非対称です。

 

 

具体的な症状としては、変色や歯質欠損、知覚過敏などが挙げられます。このMIH、歯が生えた直後は「変色がある程度かな・・・」と、思われていたのに、暫くしてから、歯が大きく欠けたりすることがあるので、注意が必要です。MIHが疑われる場合は、定期的な前歯と第一大臼歯のチェックが必須となるのです。

3. エナメル質形成不全の見つけ方

エナメル質形成不全は、学校の歯科健診や、歯科医院での口腔内チェックの際に発見されることが多いでしょう。では、ご家庭で気を付けることとしては、どのようなポイントがあるのか、みていきましょう。

 

 

・ 歯の一部分に変色がみられ、表面がでこぼこしている
エナメル質形成不全では、生えてすぐの段階から歯の一部分に白色・黄色・褐色の部分が認められることがあります。また、歯の表面がザラザラしている、凹凸があることが多くあります。

 

そのため、着色汚れがつきやすく、その結果として変色して見えることもあります。むし歯の初期症状でもホワイトスポットと呼ばれる白色の変化があり、形成不全とむし歯の初期症状を区別するのは困難です。

 

 

しかし、形成不全であっても、むし歯の初期症状であっても、そこに汚れがたまることによってむし歯へと発展していくことに変わりありません。変色があるところ、表面がザラザラしているところは、日頃からしっかりと歯ブラシを当てて、磨くようにしましょう。
そして、一度歯科で診てもらうことをおすすめします。

 

 

・ 歯の形が複雑
エナメル質形成不全では、咬み合わせの面にクレーターのようなくぼみができ、その最深部は黄色味がかったように見えることがあります。これは、エナメル質がうまく作られなかったために、エナメル質の層表面に穴が開いている、もしくは欠けてしまって、内部の象牙質の色が透けて見えている状態です。歯が生えた時からある場合と、萌出後しばらくしてから表面が欠けてしまう場合があるので、むし歯との区別がつきにくいかと思います。

 

エナメル質内に限局した欠損ならばよいのですが、象牙質が露出してしまっている場合は、冷温刺激によって痛みを感じやすくなります。

 

また、くぼみが深いと、清掃しにくいことからむし歯の発生リスクが高くなります。
いったんむし歯になってしまうと、進行が非常に速いため、出来るだけ早めに歯科医院にて診てもらい、必要があればむし歯の予防処置をすることをおすすめします。

 

 

 

 

まとめ

・ エナメル質形成不全とは、歯の表面を覆っているエナメル質がうまく作られなかったことによるものである
・ 遺伝性のエナメル質形成不全は、早い時期に専門機関にて長期的な治療計画を立てる必要がある
・ 非遺伝性で全身的な原因によるエナメル質形成不全は、左右対称に認められることが多い
・ 非遺伝性で局所的な原因によるエナメル質形成不全は、乳歯の深いむし歯や外傷によって、その下の永久歯に影響が出る場合が多い
・ 原因不明のものは、永久歯の前歯、第一大臼歯に認められることが多い
・ 家庭では、歯の変色や、形の複雑さ、穴が空いているように見える歯がないか、などを観察すると良い
・ 疑わしい歯を見つけた場合は、歯科医院を受診することを勧める。

 

 

乳歯にエナメル質形成不全が認められたからといって、永久歯にもエナメル質形成不全があるとは限りません。しかし、エナメル質形成不全が1本あると、他の部位にも形成不全歯がある可能性はありますので、注意が必要ですね。

 

また、エナメル質形成不全は、適切な処置を行っていけば、怖い疾患ではありません。

 

次回は、
エナメル質形成不全の何がいけないのか
エナメル質形成不全があった場合、具体的にどうすれば良いのか
について、お話していきましょう。

 

 

お子さんの歯で気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

生まれてきてくれてありがとう!~口唇裂について~

2024年6月25日

皆さん、こんにちは!こんばんは!
以前、口唇口蓋裂についてのお話しをしました。

 

そこで今回は口唇裂に焦点をあてて、お話ししていきたいと思います。
口唇口蓋裂は日本人に500人〜600人に1人の割合で生じるとされています。

 

これは日本人の乳幼児に生じる先天性疾患のうち、最も発生頻度が高い疾患とされています。

なので、口唇口蓋裂は決して縁も所縁もない疾患とは言えません。

 

この記事を読んでくださっている読者さんの中には、ご自身が口唇口蓋裂の方や、親族や身近な人に口唇口蓋裂の方がいるという人もいらっしゃると思います。

 

「どうして自分だけが・・・。」と思い悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、やっぱり、命は美しいものです。ですので、どんな方でも「生まれてきてくれてありがとう」と感じます。
さて、前置きが長くなりましたが、今回はそんな身近な「口唇裂」のお話をします。

 

 

 

目次

①口唇裂とは?
 ◆いったいどんな病気?
 ◆原因はあるのか?

② 口唇裂の問題点
 ◆審美障害
 ◆哺乳障害
 ◆歯列咬合の問題

③口唇口蓋裂の治療
 ◆哺乳管理
 ◆口唇形成術
 ◆二次的修正術

④まとめ

 

 

口唇裂とは?

口唇裂は口唇口蓋裂の病態の一つです。口唇口蓋裂は唇やお口の天井部分に割れ目がある病気でした。口唇裂はこのうち、唇のみに割れ目がある病気です。

 

 

いったいどんな病気?

口唇裂は唇が生まれつき割れている疾患です。人間の唇は、左右と真ん中の3つのパーツによって作られています。口唇裂は、胎児の時に、これら3つのパーツのうち、左右どちらか、あるいは、左右両方のパーツがくっつくことなく生まれてくる疾患です。片方のみに裂がある場合は片側性、左右どちらも裂がある場合は両側性と呼ばれます。一般的に、片側性の邦画は両側性に比べて発生頻度が高く、片側性の場合は、左側に多いと報告されています。
また、裂が鼻の穴まで及ぶ場合を完全裂、及ばない場合を不完全裂と呼びます。
このように、口唇裂には、様々な形があり、それぞれによって治療アプローチが異なってくることがあります。

 

 

口唇口蓋裂の原因

全身疾患の中には、原因となっている遺伝子がはっきりとしている疾患もあります。その一方で、喫煙や食習慣などの様々な環境因子などが絡み合って疾患が生じる場合も少なくありません。
口唇口蓋裂は、様々な報告がありますが、現時点では「多因子疾患」と位置付けられています。つまり、遺伝子的要因や環境因子など多くの因子が複雑に絡み合って発症するとされています。つまり、原因はイマイチはっきりしないと言えます。

まずは口唇裂がどのような病気かをご理解いただけましたか?病気について知ることは、相手を理解することと同じです。お互いが理解し合っていきましょう。

 

 

 

口唇裂による問題

口唇裂によって生じる問題はたくさんあります。次に、口唇裂によって引き起こされる問題点を解説しましょう。

 

 

審美障害

最初は、見た目の問題です。口唇裂は、お顔の皮膚も割れています。つまり、内臓疾患と違い、相手から見てわかるということです。
それに加え、鼻の形が変形します。これは、鼻を支える組織が口唇裂によって不足するために生じます。一般的に、裂がある側の鼻が扁平になります。

 

 

哺乳障害

皆さんもものを飲み込む時は唇を閉じますよね。人間がものを飲み込むときは唇を閉じなければうまくものを飲み込むことはできません。赤ちゃんの場合は、ミルクを飲むときに、唇を閉じなければなりません。
口唇裂を持つ赤ちゃんは、裂によって、唇をうまく飲み込むことができません。このため、ミルクが鼻漏れしたり、うまく飲み込めずに咳き込んだりすることもあります。また、ミルクの摂取量が少なくなる傾向にあるため体の成長が遅くなる傾向にあります。

 

 

歯列・咬合の問題

成長に伴って、乳歯や永久歯が生えてきます。おおよそ3歳ごろに乳歯が生え揃い、12歳くらいに永久歯が生え揃います(親知らずが18歳ごろに生えてくる方もいます)。
口唇裂がある場合、歯が生える土台部分(顎堤:「がくてい」と呼びます)の骨も割れている場合も少なくありません。歯は骨の上に生えるため、骨の欠損があると、歯が生える部分が少なくなり、歯並びが悪くなります。これによって、適切な噛み合わせを獲得することも困難になります。

口唇裂患者はこの他にも、永久歯の問題や、心理的な側面など多くの問題点を抱えています。したがってより多面的な治療が必要になってきます。

 

 

 

 

口唇口蓋裂の治療

さて口唇裂を持つ患者さんの問題点に対して様々な治療が行われます。具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。

 

 

哺乳管理

最も大切なのが哺乳管理です。赤ちゃんが健やかに成長するためには欠かせません。口唇裂を持つ子供は口蓋裂も合併している場合があります。赤ん坊が適切に哺乳できるように最適な哺乳瓶の使用や、NAM(ナム)やHotz床(ホッツしょう)といった哺乳を補助する器具を作成し、哺乳指導を行います。

 

 

口唇形成術

赤ん坊の体重が約6kgになるのを目安に全身麻酔下で口唇形成術を行います。これは唇周囲の筋肉や皮膚を再建する手術を行います。これによって、哺乳の改善や審美性の向上が図れます。

 

 

二次的修正術

口唇修正術を行った後に必要に応じて行います。5歳ごろに行うときもあります。また、成長に伴い18歳以降に修正術を再度行い、鼻の形の修正や唇にできた傷跡をきれいにする手術を行います。

 

ここで、紹介した以外にも、矯正治療や言語治療、母子心理カウンセリングなど、多くの問題を抱えているからこそ、より多くのアプローチで自立を目指しています。先天性疾患の場合、日本の保険制度を用いて、一定の条件下で保険治療が可能になります。なので、経済的な面からも国の後押しを受けて治療を行うことができます。

 

 

 

 

まとめ

今回は口唇裂の実際や治療についてお話しました。皆さんの友人や知人に口唇裂をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。一人で悩まず、手を差し伸べてみてください。どんな病気を持っていようが、どんな境遇で産まれようが、命は尊いものです。すべての人に「生まれてきてくれてありがとう」と言える世界があるといいですね。

口唇口蓋裂について知ろう!!

2024年6月22日

みなさん、こんにちは!こんばんは!

「口唇口蓋裂」という病気を皆さんご存知でしょうか。

 

最近では、芸能人のパーパーほしのディスコさんが口唇口蓋裂であることを公表しました。また、海外俳優や海外の女優、スポーツ選手の中にも、口唇口蓋裂であることを公表している方も多くいらっしゃいます。

さらには、ウソか真かわかりませんが、エジプト王のツタンカーメンも口唇口蓋裂であった説まであるほどです。
このように、口唇口蓋裂は意外と身近な疾患であると言えます。

 

今回は、そんな口唇口蓋裂について、理解を深めていきましょう。

 

 

 

 

目次

 

① 口唇口蓋裂とは?

 ◆どんな病気か?
 ◆原因

② 口唇口蓋裂の問題点
 ◆審美障害
 ◆哺乳障害
 ◆中耳炎

③口唇口蓋裂の治療

 

 

 

口唇口蓋裂とは?

口唇口蓋裂は古くから存在している疾患です。多くは、出生児の時に指摘を受けます。現在では、術前のエコー検査の進歩により、出生前診断でも胎児の口唇口蓋裂がわかるようになってきました。まずは、口唇口蓋裂がどのような疾患なのか、そこに焦点を当てていきたいと思います。

どんな病気か?

口唇口蓋裂は先天性疾患の1つです。この病気は文字通り、口唇つまり、唇と口蓋、つまりお口の中の天井部分に裂が生じている状態です。つまり、本来、塞がっている唇やお口の天井部分が割れている病気です。
口唇裂と口蓋裂は併発している場合やそれぞれ単独で生じていることもあります。口唇裂と口蓋裂を併発している場合、「口唇口蓋裂」や「唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)」と呼ばれます。
我が国日本では、これまでの報告で約500〜600人に1人の発生頻度とされ、最も発声頻度の高い、先天性疾患とされています。
実は、この病気は漫画やドラマで有名な「コウノドリ」でも紹介された疾患です。
口唇口蓋裂は大きく①口唇裂のみ、②唇顎裂、③口蓋裂のみ、④唇顎口蓋裂の4つに分類されます。
詳しい情報や治療法、生じる障害などについては、今後更新していきたいと思いますので、お楽しみに!!!

 

 

口唇口蓋裂の原因

そんな口唇口蓋裂ですが、では一体なぜ生じるのでしょうか?これまでに国内外で様々な研究が行われてきましたが、実のところ、その原因については、不明なままです。現時点での考え方としては、「多因子疾患」として位置付けられています。つまり、確たる原因はないものの遺伝子要因や環境要因が組み合わさって生じるとされています。
人間の顔面の発生は、母体の中にいる頃、左右の組織が合体(癒合)して一つの顔となります。口唇口蓋裂では、先ほど述べたように、左右の組織が様々な原因が合わさって、合体しなかったために、生まれながらに、唇や上顎の天井が割れた状態で生まれると考えられています。

さて、まずは、口唇口蓋裂が、どのような疾患であるかイメージを持っていただけたでしょうか。先天性疾患の中では、数が多く、みなさんがこれまで出会った人の中でも1人2人いてもおかしくありません。それくらい、身近な存在であると思ってください。

 

 

 

 

口唇口蓋裂による問題

口唇口蓋裂をもつ方には、様々な問題が生じます。どのような問題が生じるのでしょうか。少し解説しましょう。

 

 

審美障害

まず何よりも審美障害です、つまり、見た目の問題です。唇が割れているということはもちろんですが、唇周囲の筋肉は鼻を支えています。したがって、鼻の形が左右非対称になりやすく、また、扁平(潰れて見える)になるといった問題があります。

 

 

哺乳障害

乳幼児の場合、これが問題になりやすいです。唇が割れているため、飲み込む時に唇を閉じることができないためにミルクを飲み込みにくくなります。また。上顎の天井部分が割れているため、ミルクが、お鼻から漏れてくるようになったり、お口の中を陰圧にできないために上手に哺乳を行うことができなくなります。
ミルクは赤子にとっては重要な栄養源です。これが、できなくなってしまうと乳児の成長に悪影響を及ぼします。
海外などでは、医療が十分に発達していないために、これが原因となって亡くなってしまう方もいらっしゃいます。

 

 

中耳炎

耳の病気とどんな関連があるのかと疑問に思う方も多いと思います。これは口蓋裂を持っている方に守られる問題です。口蓋裂ではものを飲み込む時に口蓋を持ち上げる筋肉にも問題が生じています。この筋肉は耳の穴の内圧の調整や、耳の中に溜まった老廃物を外に出すための管と繋がっています。口蓋裂の場合、この働きがうまく機能せずに中耳炎を引き起こす場合があります。中耳炎が長期間放置されていると、難聴の原因になるため、早期の治療が必要です。

今回取り上げた以外にも、咬合や歯列の問題、言葉の問題、心理面での問題など、口唇口蓋裂を持っている方には様々な問題が生じます。これらを理解することが大切です。

 

 

口唇口蓋裂の治療

口唇口蓋裂に対しての治療は日本では確立されているといっていいでしょう。口唇口蓋裂患者さんに対しては、赤ちゃんの頃から、全身麻酔の手術を行わなければなりません。また、手術も1回や2回といった少ない回数ではなく、18歳〜20歳くらいになるまで多くの手術を経験することも多いです。患者さんの負担はもちろんのこと、そのご家族の心理的、社会的負担も非常に大きいです。詳しい治療法については、シリーズ第二弾としてまとめたいと思いますが、患者さんを支えるには、社会全体で患者さんをサポートする必要があります。そのためには、まずは病気を知ることから始めましょう。

歯科医に聞きたい!「この治療、あと何回で終わりますか?」

2024年6月11日

歯科医に聞きたい「この治療、あと何回で終わりますか?」
診療中に患者さんからよく尋ねられる質問の一つにこのタイトルの言葉があります。

 

歯医者に通院するといえば、しばらくの期間通わなければならない、通院回数が多い、というイメージを持たれている方も少なくないと思います。
実際に、歯科治療の中で一度で終了するケースというのは限られています。

 

そして何をゴールとして終了とするのか、また治療のゴールがどこなのかによっても治療期間が変わってきます。
今回は、こういった治療期間や回数と実際の歯科治療との関係についてお話ししていきたいと思います。

 

【目次】

◯虫歯治療のパターン
 ◆治療ステップは虫歯の大きさ、深さで決まる
◯根管治療のパターン
 ◆歯根、根管の形は未知!
◯歯周病治療のパターン
◯治療計画は患者さんと一緒に立てるもの

虫歯治療のパターン

詰め物が取れた、歯が欠けた、冷たいものがしみるなどの訴えから虫歯治療がスタートすることが多くあります。

 

みなさんの中にも、ある日突然詰め物が取れ、歯科医院を予約したことがある方もいらっしゃるでしょう。

 

虫歯治療の基本は、虫歯の細菌が存在する部分を削り、削ったところを埋めてお口の機能を回復させる、というのものです。

 

この虫歯治療は一般的にどれくらいの期間で完了するのか、またそれを左右する要因は何でしょうか。

治療ステップは虫歯の大きさ、深さで決まる

虫歯の範囲や大きさによって、必要な治療ステップが変わってきます。

 

比較的小さい虫歯であれば、削ってその場で樹脂でつめることができるので、一回の処置で終わらせることが可能です。
ただし範囲が大きく、かつ歯と歯の間にできたような虫歯の場合はその場で詰めることが出来ないこともあります。

 

その日は詰め物の型取りをして終了し、次回に出来上がってきた詰め物をセットすることとなり、最低でも2回の通院が必要です。

 

つまり、特に強い症状がなくても、虫歯の範囲が大きければ治療ステップが増えることがあるということです。

 

一方で範囲は小さくても深くまで進行している虫歯もあります。

特に年齢が若い方に多くみられます。

 

虫歯が深いということは、削っていくと神経に近づいていくということなので、虫歯を取った後に痛みが出ることがあります。

 

一時的な痛みはあるかもしれませんが、それが続かないかどうか、予後がどうかをある一定の期間確認することがあります。
中には数ヶ月にわたって経過をみることもあります。

 

このように、虫歯治療は虫歯の範囲や深さに応じて踏む治療ステップが異なり、それによって治療期間も変わってきます。

根管治療のパターン

歯の根には「根管」と呼ばれる管が通っています。

 

根管治療とは、細菌で汚染された根管を消毒する治療をいいます。
みなさんの中にはこの歯の根の治療の時は何回も通院した、という方もいらっしゃるかもしれません。

 

実際、根管治療中の方からは特にタイトルになっている「あと何回かかるのか」という質問を多く受けます。

 

なぜ根管治療は回数がかかるのでしょうか。

◆歯根、根管の形は未知!

歯の根の形やその中の根管の形は人それぞれ、千差万別です。
特に、根管は、歯根の先端にいくに従って無数に枝分かれしているケースもあり、構造が非常に複雑です。

 

この根管をできる限りしっかり目視できるような顕微鏡も使用して治療する医院も増えてきましたが、それでも確実にその構造全てを把握することは困難です。

根管治療はこういった中で処置していくため、正しい治療法で処置しても、膿がまだ出ている、出血がある、などの症状が治まらない場合は消毒、貼薬のための通院が必要となります。

 

そして、根管内に入れたお薬をしっかり効かせるには1週間は必要という報告もあり、来院の間隔が短すぎると欲しい治療効果が得られなくなります。
また顎骨の中、つまり体の中で起こっている炎症であるため、その治療を受けている方の体調や免疫力も治療効果に影響します。

 

このように、根管治療には歯根の複雑な構造が故に、治療回数が多く必要となることがあります。

歯周病治療のパターン

歯周病とは歯を支える骨が溶けていく病気です。

 

歯周病の原因はお口の中の細菌ですが、この細菌が歯周ポケットと言われる歯と歯茎の隙間に炎症を起こし、その炎症が続くと、歯茎だけではなく骨も溶けていきます。
この歯周病の治療の第一歩は、お口の中の細菌を減らすことですが、正しいブラッシングと同時に細菌と歯垢が石灰化した歯石の除去が必要です。

 

この歯石除去に必要な治療期間、回数は、付着している場所や量、硬さ、そして歯周病の重症度などによって異なります。
重度歯周病の場合は、やはり歯石の付着範囲も広く、量も多くあるため一度で全て取り除くことはできません。複数回に分けてしっかり時間をかけて取り除くことが必要となります。

 

さらに、歯肉の状態や骨の回復などは治療後すぐに結果が得られるものではなく、長期的な目線で経過を見ていかなければなりません。
そのため、治療期間が長くなることがあります。

治療計画は患者さんと一緒に立てるもの

ここまで、虫歯治療、根管治療、歯周病治療でのそれぞれの治療期間やなぜ複数回の通院が必要なのか、などを説明してきましたがいかがでしょうか。

上で説明したように、歯科治療では一つの治療の中に多くの処置ステップがあり、また歯科には症状などの経過をみながらの治療が比較的多く含まれます。

 

こういったことから、治療期間がどうしても長くなることがある、というのをみなさんに是非知っておいていただければと思います。

 

ただ一方で、治療を受ける患者さんにおいても、生活スタイルやお仕事の状況、例えば長期出張がある、翌日は大事な行事を控えていて痛みの出る処置は避けたい、など、それによって通院できるタイミング、可能や処置などもさまざまなことと思います。

治療する側の歯科医師や歯科衛生士は少しでも効率的に、そしてスムーズに治療が進むように治療計画を組み立てていきます。

 

しかしながら、その治療計画では患者さんがなかなか通院できないとなれば、やはり治療が中断してしまいます。
実際、毎週来院されていた方がお仕事の都合がつかずに徐々に通院が途絶えるというのは少なくありません。

 

そこはやはり一番避けたいところです。

 

こういったことから、歯科医師、歯科衛生士にはご自身の生活スタイルを踏まえ、治療スケジュールの中で特に留意してほしい点があれば是非お伝え下さい。
それによって歯科医師の方も処置内容を可能な限りそれに対応するようにできるからです。

 

治療計画は歯科医師だけではなく、患者さんと一緒に立てていくものです。
今すでに治療をスタートしているがなかなか治療が進んでいないように感じている方はもちろん、これから治療スタートする方も、歯科医師や歯科衛生士と今後の治療計画や治療のゴール、通院

 

スケジュールについて是非一度お話ししてみてください。
そして今回の記事を参考に、みなさんのより良い歯科治療に繋げていただければと思います。

フィステルって何?原因や治療法を知ろう

2024年5月31日

あなたは歯ぐきにニキビのようなできものができたという経験はありませんか?

お口の中のできものにはいくつか種類がありますが、「フィステル」は比較的多くみられるできものです。

口内炎は放っておいてもなおりますが、フィステルは放置することでどんどん悪化していくので注意しなければなりません。

今回はこのフィステルについて説明していきます。

 

目次
◯フィステルとは?
 ◆症状
 ◆似た疾患
◯原因
 ◆神経が死んで細菌感染している場合
 ◆根が再び細菌に感染してしまった場合
 ◆治療のときに根の部分に穴があいた場合
 ◆歯が割れている場合
◯治療
 ◆歯の根の治療
 ◆外科的な手術
 ◆抜歯
◯まとめ

フィステルとは?

「フィステル」とはドイツ語で、日本語では「瘻孔」(ろうこう)という意味です。フィステルとは、歯ぐきの部分に膿がたまっている状態です。膿がたまると膿の袋ができ、その袋が破けると、歯ぐきに膿の出口ができます。これがフィステルです。

症状

フィステルは自然には治りませんが、痛みがおさまることがあります。歯ぐきに膿が溜まって膿の袋ができているときは、内圧が上がって痛みが出てきます。その膿の袋が破れて膿の出口ができると、痛みがなくなることが多いです。これは膿がたまって上がっていた内圧が解放されたことによって痛みがなくなっただけで、治ったわけではありません。そのまま放置しておくと悪化してしまいます。

似た疾患

フィステルに似たものとしては、口内炎や口腔がんがあります。
口内炎は1週間ほどヒリヒリとした痛みがあり、食事がしにくくなったり歯が当たると痛かったりなど生活に不便を生じますが、自然に治るものです。
口腔がんは口内炎とちがい、痛みをあまり伴わないものが多いです。また自然に治らないので、2週間以上続くできものができたら念のため歯科医院へ行ったほうが良いかもしれません。
歯周病による膿もフィステルと似た様子が現れることがあります。それぞれの病気で対応方法が異なりますので、自分で判断せずに専門家に相談しましょう。
口の中にできものができたら歯科医院へ行って診断してもらうのが良いです。

原因

フィステルができてしまう理由として、さまざまな原因があります。

神経が死んで細菌感染している場合

虫歯が進行すると、神経まで感染が広がってしまい、神経が死んでしまうことが多いです。また、怪我による外傷でも神経が死んでしまうことがあります。神経が死んでしまうと炎症を起こすので、何もしていなくても激しい痛みを伴います。痛み止めを飲んだだけで治療しなかったり、そのまま放置してしまうと、根の先から膿が排出されフィステルが形成されます。

根が再び細菌に感染してしまった場合

過去に根の治療をしたことがある歯が、もう一度感染してしまうことがあります。細菌が入り込むスペースが残っていたり、感染物質を取り切れていなかったりなど、根の治療がきちんと行われていない時にも発生します。しかし、きちんと治療が行われていたとしても根の治療の再発率は約70%とも言われており、過去に根の治療をしたことがある人には誰でも起こりうるのです。

治療のときに根の部分に穴があいた場合

根の治療の際に、処置中に穴が空いてしまうことがあります。そのようなときは時間が経つにつれて穴から細菌が入り込み、感染し、膿が作られ、フィステルが形成されます。

歯が割れている場合

神経の治療は、死んだ神経をとって、細菌が入らないように神経の代わりになる材料をつめていきます。神経を取ると歯に栄養が供給されなくなるため、神経がある歯に比べてもろく、壊れやすくなってしまいます。そのため歯ぎしりや食いしばりなどで大きな力がかかると、歯の根にヒビが入ったり、割れたりしやすくなります。割れてしまうとそこから細菌が侵入し、膿が排出されるようになり、フィステルが形成されます。

 

治療

フィステルは、形成されたまま放っておいても自然に治ることはありません。必ず治療することが必要になります。また、フィステルはレントゲン写真を撮ることによって原因が分かり、治療方法を決定します。歯科医院を受診するタイミングが遅くなると、自分の歯を残せる可能性も低くなってしまうので、不安なときはすぐ歯科医院へ行って相談しましょう。

歯の根の治療

フィステルが形成されている歯の根は細菌感染しているため、根の感染物質を綺麗に取り除き、炎症を治めます。ここで大切なのは再び感染させないことです。無菌的な環境で治療することが必須になります。

外科的な治療

上記の歯の根の治療をしても改善されない場合は、外科的な手術をおこないます。歯根端切除術といって、歯の根の方に穴を開けて、根元側から治療をおこないます。手術といっても局所麻酔だけで、日帰りで帰れるくらいの治療になります。
また適応は限られてきますが、意図的再植術をおこなう方法もあります。これは歯を一度抜いてから、口の外で処置したあとに、治した歯を植え直す治療です。

抜歯

フィステルの原因が歯が割れていることだったり、何度治療しても改善されない場合は、抜歯しなければなりません。

まとめ

いかがでしたか。フィステルは放って置くと悪化してしまいます。鑑別疾患も多くあり、すぐに対処しなければならないものもありますので、歯にできものができた場合は歯科医院を受診するようにしましょう。

【歯科医師が徹底解説】抜歯後の痛みがひどい時の対応!それはドライソケットかも?

2024年5月28日

ドライソケットの痛みの経過、治療法についてご紹介!

 

親知らずを抜いた後には偶発症が起こることがあります。

偶発症にはさまざまありますが、頻度の高いものに「ドライソケット」があります。

ドライソケットは歯の抜歯後に起こる痛みの一つです。

 

ドライソケットは抜歯した部分に

血餅(けっぺい)と呼ばれるかさぶたのようなものが形成されず、

骨が剥き出しになっている状態のことです。

 

ドライソケットになると、抜歯してから一週間経っても痛みが続きます。

痛みが一週間以上続く場合はこのドライソケットが疑われますので、早めに歯科医院を受診しましょう。

今回はこのようなドライソケットになってしまった時の対応について説明していきます。

 

 

目次
◯抜歯した後の痛み
 ◆経過良好な場合
 ◆予後が悪い場合
 ◆ドライソケットの症状
◯ドライソケットの治療
 ◆抗生物質と痛み止め
 ◆抜歯した穴をもう一度掻爬する
 ◆軟膏
◯まとめ

 

 

①抜歯した後の痛み

抜歯した後の痛みは、予想される痛みとそうでない痛みがあります。予想される痛みは正常に治っている場合でも起きるもので、経過も良好なため、あまり心配する必要はありません。予後が悪い場合に生じる痛みもありますので、見極める必要があります。

 

経過良好な場合

抜歯している最中は麻酔が効いていますが、手術が終わってから1〜2時間で麻酔が切れてきます。麻酔が切れるまでの時間は非常に個人差がありますので、終わってからすぐに痛み出す方もいれば、3時間ほど麻酔が効いたままの方もいらっしゃいます。

 

また、歯の生え方によっても使う麻酔の量や効かせたい部位が異なりますので、手術を始める前に説明いたします。麻酔が切れると、傷口の痛みが出ることがあります。

 

麻酔が切れる前に痛み止めを飲んでいただくと、傷口の痛みはほとんどなくなるか、我慢できる程度まで抑えることができます。
抜歯してから3日ほど経つと、痛み止めを飲まなくて良くなるほどに痛みがなくなってきます。

 

 

予後が悪い場合

抜歯した後の傷口が感染していたり、ドライソケットになっていたりすると、抜歯して数日経ってから強い痛みが出てきます。多くは3〜5日に出現してきます。そこから1週間以上痛みが引かない場合は感染していたり、ドライソケットになっていることが多いです。

 

 

ドライソケットの症状

ドライソケットになってしまうと、強い痛みが10日〜2週間ほど続きます。その後1〜2週間かけて徐々に痛みが引いていくことが多いですが、放置して悪化してしまうと1ヶ月以上痛みが引かない場合もあります。
なかなか痛みが引かないなと思ったらドライソケットになっている可能性がありますので、抜歯したクリニックで相談するようにしましょう。

 

 

②ドライソケットの治療法

 

抗生物質と痛み止め

痛くなったら痛み止めを飲みましょう。痛み止めの薬は4時間あけると同じものをもう一度服用することができるので、痛みが強い場合には4時間ごとに服用してください。痛みが落ち着いてきたら、服用する間隔をあけていきましょう。

ドライソケットは感染を起こしていることが多いです。抗生物質も処方されますので、処方された分は全て時間通りに服用してください。抗生物質は途中で飲むのをやめたり飲んだり飲まなかったりすると、悪さをしている原因菌の中でその抗生物質に抵抗性を示すものが現れ、抗生物質が効きにくくなってしまいます。

 

そのため、処方された分は最後まで飲み切るようにしましょう。例外として副作用が出た場合は中止することもありますし、効きにくいようでしたら抗生物質を変更することもありますので、担当医にご相談ください。

 

 

抜歯した穴をもう一度掻爬する

ドライソケットは、抜歯した後にかさぶたの役割をする血餅という物質ができなかった、もしくはうがいなどで流されてしまったことが原因です。

 

そのため、もう一度血餅を作ることで治癒を促そうということです。血餅は字の如く血の塊なので、もう一度出血させて新しいかさぶたを作ります。麻酔をして抜歯した穴を引っ掻くようにして出血させます。

 

ドライソケットになっている部分は炎症が起きているため麻酔が効きにくく、軽い痛みが生じることがあります。

 

 

軟膏

ドライソケットになってしまった部分を生理食塩水できれいに洗浄し、抗生物質の軟膏を塗布しておくことで症状が改善します。軟膏を塗っただけでは唾液で流されてしまいやすいので、抗生物質の軟膏を塗ったガーゼを詰めておくこともあります。ガーゼを詰めた場合は清潔を保つためにガーゼを交換しなければならないので、何度か通院していただかなければなりません。

 

 

 

 

③まとめ

ドライソケットになってしまった場合はご自身で痛みをコントロールするのは難しいので、歯科医師に相談してください。また、喫煙はドライソケットになりやすいと言われているので、少なくとも抜歯する前後は禁煙するようにしましょう。

 

歯を抜く前に口の中を清潔に保って感染を防ぐことも大切です。日頃から歯のクリーニングを行い、抜歯前は免疫力をつけるために体調を整えるようにしましょう。
ドライソケットになってしまっても、適切な処置を行い、注意事項を守っていただければ徐々に痛みは収まっていきます。少しでもドライソケットかもしれないと不安になったらすぐに担当医へご相談ください。

 

そのほかにも抜歯に関して気になることがございましたらぜひ当院へご相談ください。

朝起きの口腔ケア、朝の口腔状態、対応方法

2024年5月13日

皆さんは朝起きた瞬間、口の中の状態をどのように感じていますか?

ほとんどの方は粘っこいとか、気持ち悪い、と感じることが多いと思います。
実はその症状は単に一日の始まりというだけでなく、体調や健康状態や生活習慣についての重要なサインでもあります。

そこで今回は、朝起きた時の口の状態について詳しくお伝えしたいと思います。

 

目次

◯口の乾燥

◯歯垢が溜まりやすい

◯朝一にすべきはやはり歯磨き

◯舌苔と落とし方

◯口内炎の可能性も

◯朝一番に水分を取る重要性
 ◆朝水分を取る理由
 ◆歯茎のマッサージ
 ◆歯間ブラシとフロス
 ◆うがい

◯まとめ

◯口の乾燥

まず、朝起きた時の口の中は乾燥しています。一晩中、口を閉じているために唾液の分泌が少なくなり、口の中が乾燥してしまうのです。

この状態は口臭の原因となることがありますが、この状態を改善するために、就寝前と朝起きた時に十分な水分を摂取するようにしましょう。

また、朝起きた後、歯磨きをした後は口の中を清潔に保つことができ、口臭を予防することができます。

◯歯垢が溜まりやすい

また、朝起きた時の口の中にはデンタルプラーク、いわゆる歯垢がたまっています。歯垢とは、歯の表面にたまった細菌や食べかすなどが固まってできるオレンジ色や黄色い膜状の汚れのことです。この歯垢がたまることでむし歯や歯周病の原因となることがあります。

◯朝一にすべきはやはり歯磨き

一晩中寝ている間に口の中で細菌が繁殖し、口臭や不快感を引き起こします。そこで朝起きたときの第一のやることは歯磨きをすることをお勧めします。

歯ブラシは硬すぎないものを選び、1~3か月に1度程度の頻度で交換するようにすると毛のへたりも少なく良いでしょう。

歯ブラシの硬いタイプは、そもそも少ない労力で磨いた感触が豪快なため達成感や爽快感を味わいやすいというメリットで販売されています。しかし歯そのものや歯茎へのダメージなどデメリットも強いため、通常は万人にお勧めしません。

また、朝起きて歯磨きをする際には鏡も一緒に使いましょう。もし定期的に歯科医院に言って相談できていれば、磨き方で偏っている部分など個人の癖を見直しながら磨くことができます。

◯舌苔と落とし方

朝起きた時の口の中には舌苔と呼ばれる汚れがたまっています。舌苔とは、舌の表面にたまった細菌や食べかすなどが固まってできる角質を含んだ白い膜のことです。

この舌苔がたまることで口臭の原因となることがありますが、歯磨きをする際に、舌ブラシを使うことで舌苔を取り除くようにしましょう。これによって口の中を清潔に保ち、口臭を防ぐことができます。注意点としては、白く残った苔を100%取り除く必要はありません。舌を傷つけて味覚を感じにくくしてしまう恐れがあるので、うっすら残る程度で構いません。舌ブラシは安価で手に入るので、とにかく定期的に落としておきましょう。

◯口内炎の可能性も

朝起きた時の口の中は時に、口内炎ができていることがあります。口内炎はストレスや体調の乱れ、食生活の乱れなどさまざまな要因で引き起こされることがあります。

口内炎ができた際には、辛い食べ物や刺激物を避けるようにし、口腔ケアを丁寧に行うことで早めに改善されることがあります。

その他のできものや、歯が痛い、歯石などでざらざらした感じがするなど、体のサインを見逃さないためにも鏡は一緒に使うようにしましょう。もちろん、歯ブラシが当たっているかなどの確認も忘れずに行いましょう。

◯朝一番に水分を取る重要性

朝水分を取る理由

では、朝起きて歯磨き、そして口腔内のチェックが終わったら、同時に他に何かすることはあるのでしょうか?これに関してまずは、朝起きたら水を飲むことが重要です。

夜間は唾液の分泌量が減少し、口の中が乾燥しがちです。そのため、起床後にすぐに水を飲むことで口の中を潤し、細菌の繁殖を抑えることができます。また、水を飲むことで体内の新陳代謝が促進され、代謝産物を排泄することができます。

夜磨いても寝ている間は、唾液の分泌量が減ることで細菌が増殖します。夜歯磨きをして前日の食事の汚れを落とすだけでなく、その歯みがき後から朝までの蓄積した汚れも落とす意味合いも含まれます。

歯茎のマッサージ

なお歯磨きの際には、歯の表面だけでなく、歯ブラシを使って歯茎のマッサージも行うことが大切です。歯茎のマッサージは、専用商品のほかに、とにかく毛先が軟らかい歯ブラシを選びましょう。歯磨き粉は必要ないので、強くない力で歯茎にもブラシを当ててあげましょう。普段の硬めや普通タイプの歯ブラシなどでそのままやってしまうと、簡単に歯茎が必要以上に削れてしまいますので、そこは注意しておきましょう。

歯間ブラシとフロス

朝は時間も無いという方も多いでしょうが、歯磨き後にはフロスや歯間ブラシを使用して、歯と歯の間の歯垢や食べカスを取り除くこともおすすめです。歯間ブラシを使用することで、歯ブラシだけでは届きにくい部分の掃除ができ、歯の隙間から起こる虫歯や歯周病の予防につながります。また、歯磨き粉にフッ素を含むものを使うことで、虫歯の予防にもつながります。

うがい

歯磨きや歯間ケアが終わったら、口をすすいでから軽く薬物うがいをすることで、口の中の残り汚れをより多く取り除くことができます。うがいの際には、殺菌作用のあるうがい薬を使用することで、口の中の細菌の繁殖を抑えることができます。朝の口腔ケアが終わったら、朝食を摂る前には再度水を飲むことで口の中を潤すことが大切です。

これらの朝の口腔内の状態のチェックと朝の口腔ケアを行うことで、口の中の清潔さを保ち、口臭や虫歯、歯周病などのリスクを低減することができます。また、清潔な口の中は食事を楽しむためにも重要であり、健康な体を維持するためにも欠かせない要素です。

◯まとめ

朝の口腔ケアを行う際には、以下のポイントに気をつけると効果的です。

①歯ブラシを選ぶ:歯ブラシは硬すぎないものを選び、1~3か月に1度程度の頻度で交換するようにすると毛のへたりも少なく良いでしょう。

②歯磨き粉の選び方:様々な薬用成分が含まれている歯磨き粉ですが、フッ素を含む歯磨き粉を選ぶことで、むし歯予防効果を高めることができます。

③歯間ケアの重要性:歯ブラシだけではなかなか歯の間に詰まったものや汚れは取れません。歯間ブラシやフロスを使って、歯と歯の間の汚れをしっかりと取り除くようにしましょう。

④口臭予防:口臭が気になる場合は、うがい薬や舌ブラシを使用して口の中を清潔に保つことが大切です。

朝の口腔ケアは、日々の生活の中で習慣化することで、口の中の健康を維持し、全身の健康にもつながります。また、歯科医院での定期的な検診やクリーニングを受けることも口腔ケアの一環として大切です。

歯ブラシとフロス・歯間ブラシどっちが先なの!?

2024年5月11日

歯科医院で歯磨きのお話をするなかで、歯ブラシやフロス・歯間ブラシの使い方について、聞かれる事が多くあります。
今回、その使い方について、お話させて頂きます。是非参考にして下さい。

 

 

目次

◯歯ブラシとフロス・歯間ブラシどっちが先なの!?
 ◆磨く順番でおすすめなのは
 ◆フロス・歯間ブラシを使っている人の割合
 ◆フロスの種類
 ◆歯間ブラシの種類
◯磨く順番が大切な理由
 ◆磨き残しを減らすことができる
 ◆歯磨き粉を効果的に効かせます
◯まとめ

◯歯ブラシとフロス・歯間ブラシどっちが先なの!?

磨く順番でおすすめなのは

歯ブラシとフロス・歯間ブラシの順番は、「フロス・歯間ブラシが先」がおすすめです。
歯ブラシは、歯の表面の汚れや歯垢を落とすのが主な役割です。一方、フロス・歯間ブラシは、歯と歯の間の汚れや歯垢を落とすのが主な役割です。
歯ブラシで歯を磨く前に、フロス・歯間ブラシで歯と歯の間の汚れや歯垢を落としておくことで、歯ブラシに効率よく歯垢を落とすことができます。
一方、歯と歯の間の汚れや歯垢は、歯ブラシではなかなか落としきれません。そのため、フロス・歯間ブラシで歯と歯の間の汚れや歯垢を落としておくことで、歯ブラシで歯の表面の歯垢を落とす際に、歯と歯の間の汚れや歯垢を一緒に落とすことができます。

フロス・歯間ブラシを使っている人の割合

厚生労働省の令和4年の調査によると、フロスや歯間ブラシを使用している人は、全体で51%でした。これは、前回の調査である平成28年調査の37%から14ポイント上昇したことになります。
男女別に見ると、女性は63%、男性は39%と、女性の方の使用率が高い結果となりました。また、年代別に見ると、40~70代の使用率が60%を超え、若い世代よりも高くなる傾向が見られました。

 

 

フロスの種類

▶︎形

フロスの種類は、大きく分けて「糸巻きタイプ」と「ホルダータイプ」の2種類があります。
・糸巻きタイプ
糸巻きタイプは、フロスが糸状に巻かれた状態で販売されているタイプです。使い方は、糸を20cmほど切り取って、両端を親指と人差し指でつまんで使用します。
糸巻きタイプのメリットは、価格が比較的安価で、持ち運びに便利なことです。また、自分の好みの太さや長さのフロスを自由に選ぶことができます。
デメリットは、使いこなすまでに慣れが必要なことや、歯と歯の間の隙間が狭い場合は、使いづらいことです。
・ホルダータイプ
ホルダータイプは、フロスがホルダーに取り付けられた状態で販売されているタイプです。使い方は、ホルダーを握って、フロスを歯と歯の間に差し込んで使用します。
ホルダータイプのメリットは、使い方が簡単で、歯と歯の間の隙間が狭い場合でも使いやすいことです。また、指を傷つけにくいというメリットもあります。
デメリットは、糸巻きタイプに比べて価格が高価なことや、持ち運びに不向きなことが挙げられます。

▶︎素材

フロスの糸の素材には、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンの3種類があります。
・ナイロン
ナイロンは、最も一般的な素材です。滑りがよく、歯と歯の間をスムーズに掃除することができます。また、価格も比較的安価です。
・ポリエスル
ポリエステルは、ナイロンよりも強度があり、耐久性に優れています。また、滑りにくいため、歯と歯の間にしっかりと食い込ませることができます。
・ポリエチレン
ポリエチレンは、ナイロンやポリエステルよりも柔らかく、歯茎への刺激が少ない素材です。また、糸の表面が粗いため、汚れや歯垢を絡め取りやすいというメリットもあります。

▶︎コーティング

フロスの糸には、ワックスがコーティングされているタイプと、コーティングされていないタイプの2種類があります。
ワックスがコーティングされているタイプは、滑りがよく、歯と歯の間をスムーズに掃除することができます。また、糸が切れにくく、使いやすいというメリットもあります。
ワックスがコーティングされていないタイプは、歯垢を絡め取りやすいというメリットがあります。また、ワックスがないため、舌や口内の粘膜に絡みつきにくく、口臭予防に効果的です。

▶︎サイズ

フロスは、歯と歯の間の隙間の幅に合わせて選ぶことが大切です。隙間が狭い場合は、細めのフロスを選びましょう。また、隙間が広い場合は、太めのフロスを選びましょう。
一般的に、歯と歯の間の隙間の幅は、0.5mm以下の場合は「Sサイズ」、0.5~1.0mmの場合は「Mサイズ」、1.0mm以上の場合は「Lサイズ」が適しています。

歯間ブラシの種類

▶︎形

歯間ブラシの種類は、大きく分けて「ストレートタイプ」と「U字タイプ」の2種類があります。
・ストレートタイプ
ストレートタイプは、毛先がまっすぐ伸びているタイプの歯間ブラシです。歯と歯の間の隙間が狭い場合に使いやすいタイプです。
・U字タイプ
U字タイプは、毛先がU字型に曲がっているタイプの歯間ブラシです。歯と歯の間の隙間が広い場合に使いやすいタイプです。

▶︎素材

歯間ブラシの毛先の素材も、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンの3種類があります。

▶︎毛先の形状

歯間ブラシの毛先の形状には、フラットタイプ、カップタイプ、ツイストタイプの3種類があります。
・フラットタイプ
フラットタイプは、毛先が平らなタイプの歯間ブラシです。歯と歯の間の隙間が均一な場合に使いやすいタイプです。
・カップタイプ
カップタイプは、毛先がカップ型になっているタイプの歯間ブラシです。歯と歯の間の隙間が深い場合に使いやすいタイプです。
・ツイストタイプ
ツイストタイプは、毛先がねじれているタイプの歯間ブラシです。歯垢を絡め取りやすく、歯と歯の間の隙間が広い場合に使いやすいタイプです。

▶︎サイズ

フロスと同様に、歯間ブラシは、歯と歯の間の隙間の幅に合わせて選ぶことが大切です。隙間が狭い場合は、細めの歯間ブラシを選びましょう。また、隙間が広い場合は、太めの歯間ブラシを選びましょう。

◯磨く順番が大切な理由

歯ブラシとフロス・歯間ブラシの順番において、フロス・歯間ブラシを先に行う理由は、以下のとおりです。

◆磨き残しを減らすことができる

歯と歯の間の汚れや歯垢を落としておくことで、歯ブラシで効率よく歯垢を落とすことができます。
歯と歯の間の汚れや歯垢は、歯ブラシではなかなか落としきれません。そのため、フロス・歯間ブラシで歯と歯の間の汚れや歯垢を落としておくことで、歯ブラシで歯の表面の歯垢を落とす際に、歯と歯の間の汚れや歯垢を一緒に落とすことができます。

◆歯磨き粉を効果的に効かせる

歯と歯の間の汚れや歯垢を落としておくことで、歯磨き粉の有効成分(フッ素など)を歯間部にも行き渡らせることができます。
歯磨き粉には、歯垢を落とす効果や歯を強くする効果のあるフッ素が含まれています。歯ブラシで歯を磨く際に、歯と歯の間の汚れや歯垢が残っていると、歯磨き粉の有効成分が歯間部に行き渡りにくくなります。そのため、フロス・歯間ブラシで歯と歯の間の汚れや歯垢を落としておくことで、歯磨き粉の有効成分を歯間部にも行き渡らせることができます。

◯まとめ

効率よく毎日の歯ブラシを行いましょう。歯科医院で歯ブラシのチェックを受けましょう。

初診「個別」相談へのご案内

当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
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