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スポーツ選手マウスピースなぜ??

2024年4月27日

格闘技やラグビー、アメフトなど、スポーツ選手が競技中にマウスピースをしているところを見たことはありますか?

カラフルなマウスピースを装着している選手もいて、面白いですよね。

では、スポーツ選手は、何のためにマウスピースをしているのでしょうか。

「前歯が折れないようにガードしているのかな?」

それも、もちろんあります。

実は、それ以外にもスポーツ用マウスピースを使うことには、様々な理由があるのです。

 

ここでは、スポーツ用マウスピースについてお話していきましょう。

 

目次

1. スポーツ用マウスピースの役割

 1-1. ケガの防止

 1-2. 歯の破折・すり減り、顎関節症の予防

 1-3. 脳への衝撃を和らげる

 1-4. 肉体的・精神的な安定

 1-5. 相手を傷つけることの防止

2. スポーツ用マウスピースの種類

 2-1. 歯科医院で製作するスポーツ用マウスピース

 2-2. 市販のスポーツ用マウスピース

3. スポーツ用マウスピース使用時の注意点

4. まとめ

 

 

1. スポーツ用マウスピースの役割

日本では、ボクシングや格闘技、アメリカンフットボール、ラグビー、ラクロス(女子)などの競技で、スポーツ用マウスピース(マウスガード)の使用が義務化されています。

また、硬式野球やサッカー、バスケットボールでも、マウスピース使用が推奨されています。

では、なぜスポーツにおいて、マウスピースが必要なのか、スポーツ用マウスピースの役割についてみていきましょう。

 

1-1. ケガの防止

スポーツ用マウスピースは、顔面への衝撃を和らげて、顎や口の中、唇などのケガを防ぎます。

スポーツ用マウスピースを使用することで、歯の破折、顎骨の骨折、口唇や舌、頬の粘膜の切り傷などの予防につながります。

 

1-2. 歯の破折・すり減り、顎関節症の予防

運動中は、力をグッとこめる時など、しっかりと咬みしめる機会が多くなりますね。

一般的に、人間の咬む力は自分の体重と同じ位の強さがあると言われています。

体重80kgの方は、歯や顎に80kgの力がかかるのです!

スポーツ用マウスピースを使用することで、歯や、顎の関節などに強い力が加わることを防ぎ、歯の破折・すり減り、顎関節症を予防します。

 

1-3. 脳への衝撃を和らげる

正しい位置で、しっかりと咬み合わせることで、頭・顎・首がしっかりと固定されます。

すると、身体がぶつかった際などに、脳へ伝わる振動を和らげることができます。

それによって、脳しんとうなどの脳へのダメージを軽減することができます。

 

1-4. 肉体的・精神的な安定

咬み合わせを整え、安定させることは、肉体的・精神的な安定につながります。

肉体的には、身体全体のバランスが保たれることにより、体幹が整い、身体に均等な力をかけやすくなります。

正しい位置で咬みしめる(くいしばる)ことによって、筋力が約5%アップするとも言われています。

スポーツ用マウスピースを使用することで、強い瞬発力が生まれることや、運動能力の向上が期待できるのです。

 

また、ケガのリスクを下げることができるという安心感が、精神的な安定に繋がります。

リラックスできることから、積極的なプレーを行うことができるとも言われています。

 

1-5. 相手を傷つけることの防止

選手同士の接触があるスポーツでは、自分の歯が相手選手にぶつかることなどによって、意図せず相手を傷つけてしまうことがあります。

マウスピースを用いることにより、相手を傷つけるリスクを軽減することができます。

 

 

このような様々な役割が、スポーツ用マウスピースにはあるのです。

 

 

2. スポーツ用マウスピースの種類

「自分もスポーツ用マウスピースを使ってみようかな?」

では、スポーツ用マウスピースは、どこで、どうやって作ればよいのでしょうか。

スポーツ用マウスピースには、歯科医院で作る方法と、大体の形状が完成している状態で市販されているものを、御自身で自分用に調整する方法があります。

それぞれの作り方と、その特徴についてみていきましょう。

 

2-1. 歯科医院で製作するスポーツ用マウスピース

作り方 

お口の中のチェックを行い、むし歯や歯周病など、マウスピースを作る前に必要な処置がないかを確認する。

歯および歯肉の形状の型取りを行い、その型を使って1人1人のお口の形に合ったマウスピースを製作していく。

出来上がったマウスピースをお口の中に入れて、咬み合わせのバランス調整や、お口の中に当たる箇所がないかどうかなどのチェック、および形態修正を行う。

特徴

精密な型取りを行うことにより、本人のお口の中にフィットするマウスピースを作ることができる。

・ 口を動かしても外れにくく、マウスピースを付けたまま会話や水分補給を行うことができる。

咬み合わせや辺縁の形状の調整を行うことができるので、違和感が少ない。

咬み合わせのバランスを調整することで、正しい位置でしっかり咬みしめることができるため、マウスピースの効果を最大限に発揮することができる。

スポーツ用マウスピースは保険適応外のため、費用がかかる。

スポーツ用マウスピースの製作は、自費診療の扱いになります。価格は医院によって異なりますので、問い合わせてみることをおすすめします。

 

2-2.市販のスポーツ用マウスピース

作り方 (スポーツ用マウスピースには様々な種類のものが販売されているため、ここでは一例を挙げて説明していきます。)

マウスピースを一定温度のお湯に浸して軟らかくし、自分の歯列と合わせて咬み込み、歯列の形状をマウスピースに写し取る。

冷やし固めた後、余計な部分をハサミで切り取る。

 

特徴

安価で、入手しやすい。

自分の歯並びと、マウスピースの形状が合わない場合がある。

咬み込む時にズレてしまうと、完成したマウスピースもズレが生じたままになる。

外れやすい。

 

3. スポーツ用マウスピース使用時の注意点

スポーツ用マウスピースを使用することによって、様々なメリットがあります。

しかし、注意点もありますので、みていきましょう。

 

むし歯になりやすい

マウスピースを装着している間は、歯にカバーをかけているようなものです。

通常であれば、歯面にとどまらず唾液で流されていく糖分も、マウスピースを装着することによって、ずっと同じ場所に留まり続けることになります。

それによって、むし歯のリスクが高くなるのです。

マウスピース使用中の水分補給は、糖分の含まれないものにしましょう。

スポーツドリンクには大量の糖分が含まれているため、注意が必要です。

マウスピース使用後は、出来るだけ歯磨きをしましょう。

それが難しいようであれば、うがいだけでもするように心掛けましょう。

 

マウスピースが不潔になりやすい

マウスピースを外した後そのまま放置してしまうと、マウスピース本体に細菌が繁殖します。

外した後は、出来るだけ早めに水洗する習慣をつけましょう。

また、着色や匂いが気になった場合は、マウスピース専用洗浄剤や、入れ歯洗浄剤などで漬け置き洗いをすることをおすすめします。

 

高温で変形しやすい

マウスピースは熱に弱く、高温になると変形しやすくなります。

洗う際には、お湯ではなく水で洗うようにしましょう。

また、屋外や車内など、直射日光が当たる場所や、暖房器具の近くに放置しないようにも注意が必要です。

 

歯肉が退縮しやすい

特に市販されている(自分で型を取る)マウスピースに多くみられます。

マウスピースが歯肉の形に合っておらず、強く当たっている場合。

その場所の歯肉に炎症が生じ、歯肉が下がってしまうことがあります。

定期的に検診を行い、マウスピースが自分のお口に合っているのかを確認するようにしましょう。

また、成長期には歯の位置や、歯肉の形だけでなく、顎の大きさも変化していきます。

同じマウスピースを装着し続けることで、顎の成長を妨げてしまう恐れがありますので、必ず検診を受けるようにしましょう。

 

4. まとめ

スポーツ用マウスピースは、自分及び相手選手の外傷や、歯の破折・すり減り、顎関節症を予防する。

・また、脳への衝撃を和らげる効果や、肉体的・精神的な安定感を得ることによる身体能力の向上を期待することができる。

スポーツ用マウスピースには、歯科医院で製作するものと、市販のマウスピースをご自身でお口の中に合わせていく方法のものがある。

スポーツ用マウスピースを使用することで、むし歯リスクの上昇や歯肉の退縮などのデメリットが考えられる。

・ お口の中、およびマウスピースを清潔に保つこと、定期的に歯科医院で検診を受けることが大切。

また、高温で変形しやすいので注意が必要。

 

 

スポーツ用マウスピースは、プロスポーツ選手だけが用いる特別なものではありません。

ケガの防止だけでなく、運動能力の向上も期待することができます。

スポーツをされている方だけではなく、お仕事などで力をグッと込める機会が多い方にも、スポーツ用マウスピースはおすすめしたいですね。

 

お口の中で、何か気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

絶対やって!!〜朝起きたらまず歯を磨こう〜

2024年4月22日

皆さんは朝起きてから最初にすることは何でしょうか?

 

眠気を覚ますために顔を洗う人、喉が渇いているからお水を飲む人、トイレに行く人など朝起きて最初に行う行動は様々ですよね?

 

どれも欠かせないことだとは思いますが、皆さんが健康に生活するために朝イチにして欲しいこと、

 

それはズバリ

「歯磨き(口腔ケア)」

です。

 

そこで今回は、朝イチにやってほしい「口腔ケア」について少しお話ししたいと思います。

 

目次

① 恐怖!!起床時のお口の中

 ◆朝イチのお口の状態

 ◆なぜそうなるの?

② 朝イチに歯磨きがいいことだらけ!

 ◆口臭予防

 ◆体内に菌が侵入するのを防ぐ

 ◆目覚めがスッキリ  

③まとめ

 

 

恐怖!!起床時のお口の中

朝起きたときのお口の中の状態はどうなっているのでしょうか。噂程度で聞いたことがある人もいると思います。まずは、皆さんの朝イチのお口の中がどうなっているのかをお話ししていきましょう。

ここで重要なのが、人間の体の中には、非常に多数の微生物(細菌やカビの仲間など)が存在するということです。これらは常在菌と呼ばれ、存在すること自体は何も悪いことではありません。むしろ、これらのバランスがきっちりと整っていることが健康の第一歩であると最近の研究でわかってきているほどです。

 

◆朝イチのお口の状態

お口の中も例外ではありません。非常に多くの微生物がバランスを保って存在しています。有名なお口の病気である虫歯や歯周病は、この微生物のバランスが崩れ、病気を引き起こす微生物が異常に増殖することで生じます。

さて、多くの微生物が共存しているお口の中ですが、朝イチのその状態は「恐怖そのもの」です。朝イチのお口の中のプラーク(汚れ)には1mgの中に最低でも1億個の微生物がギッシリと詰まっているとされています。イメージできないですよね?より具体的にいうと、1円玉1つ分の重さ(1g)で1000億個の微生物が詰まっているということです。これは、実は皆さんが毎日する大便に匹敵する量です。なかなかショッキングな内容ではないでしょうか?

つまり、朝イチのお口の中は例外なく、微生物だらけで、とても清潔とは言えないということです。

 

 

なぜそうなる?

では、なぜここまでの微生物が増えてしまうのでしょうか?それには微生物が増えやすい環境が寝ている間に整ってしまっているからです。寝ている間はほとんどの人に次のようなことが起きます。

 

・唾液量の減少

唾液の成分の中には、抗菌性物質、つまり、微生物の増殖を抑える作用を持つ物質が含まれます。睡眠中は体のシステム上唾液の分泌量が少なくなります。なので、睡眠中は微生物が非常に増えやすい状態になっています。

 

・口呼吸

普段の睡眠中、鼻呼吸をしている場合がほとんどですが、お口が空いていることもあります。お口が空いている状態では、水分が蒸発してしまい、お口の中が乾燥してしまいます。実は、お口の乾燥は、微生物にとっては非常に好都合で、増えやすい環境です。これに睡眠中の唾液の減少も相まって、より乾燥が進み、微生物が異常に増殖してしまいます。

 

このように、朝イチのお口の中には想像を遥かに超える量の微生物が存在します。これらは生理的な反応なので仕方がありませんが、想像するだけでゾッとしますよね。

 

朝イチに歯磨きがいいことだらけ!

さて、皆さんの朝イチのお口の状態が非常に不潔な状態ということをご理解いただいた上で、起床後すぐに歯磨きが必要なことは想像しやすいと思います。朝イチの歯磨きでは次のようなメリットがあります。

 

◆口臭予防

先ほどの理由から、朝イチの口臭は非常に強い傾向にあります。口臭は自分では気づきにくく、相手に不快な気持ちを抱かせます。歯磨きによって、お口の中の微生物の数を減らすことができるため、口臭の改善や予防を行うことができます。

 

 

◆体内に菌が侵入するのを防ぐ

歯磨きをせずにご飯を食べたと仮定すると、お口の中の微生物も一緒に飲み込むことになりますよね?これは、ご飯でなくても唾を飲み込んでも同じことが言えます。若く健康な方はそこまで問題になることはありませんが、高齢者の方たちでは、飲み込むときに気管に入ってしまい、肺炎を起こすことがあります。これが「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?朝イチの歯磨きには、この誤嚥性肺炎を予防することがあります。常にお口の中を綺麗にすることは、若い人だけでなく、高齢者の方々や、介護を必要としている方の全身の健康にも結びつくことが近年の研究で明らかになってきました。それだけ、口腔ケアは意義深く、重要なことなのです。

 

◆目覚めがスッキリ

朝お口がネバネバの状態は不快ですよね。これでは一日のスタートダッシュを快適に過ごすことはできません。歯磨きをすることで心身共にスッキリして一日のスタートダッシュを切ってみましょう。

 

これ以外にも朝イチの歯磨きには多くのメリットがあります。これだけのメリットがある歯磨きをしない方が損と言えるでしょう。朝イチの歯磨きのデメリットはただ一つ「面倒くさい」という一点のみです。朝5分早く起きて口腔ケアをやってみませんか?

 

まとめ

さて、今回は、起床後すぐの口腔ケアの重要性をお話ししました。実は起床後すぐの歯磨きも大切ですが、それと同じくらい大切なのが、夜寝る前の歯磨きです。その理由は、寝ている間に微生物が増えやすいからです。したがって、口腔ケアのタイミングとして最も重要なのは「就寝前」と「起床後」です。最低でもこの2回は欠かさずに徹底的に口腔ケアを行うようにして、お口や全身の健康を守っていきましょう。また、セルフケアでは落とせない汚れも存在します。定期的に歯医者さんに通うことで、プロフェッショナルケアを受け、自分では気付かないところについた汚れを徹底的に落としましょう。自分のお口の状態が少しでも気になれば歯医者さんに相談しましょう。そういう何気ない一歩が10年後20年後の皆さんの健康には欠かせません。

 

インプラントとブリッジ、どちらがいいの?②(自分に合った治療法とは)

2024年4月8日

どうしても歯を残せずに抜歯した場合。

失った本数が少ない時の治療方法として、インプラントとブリッジで悩まれる方が多いですね。

前回は、インプラントとブリッジの治療方法の違いについてお話していきました。

今回は、どんな方にはどちらの治療法が向いているか、具体的にみていきましょう。

 

目次

1.インプラントとブリッジの違いとは

 1-1. インプラント

 1-2. ブリッジ

2.自分に合った治療法とは?

 2-1. インプラント治療が向いている方

 2-2. ブリッジ治療が向いている方

3.まとめ

 

 

1. インプラントとブリッジの違いとは

まず、インプラントとブリッジの基本的な治療方法の違いについて、おさらいしましょう。

 

1-1. インプラント

インプラントとは、歯を失ってしまった部位の顎骨に、歯根の代わりとなるチタン製のインプラント体を埋め込み、その上に土台を立てて、人工の歯を被せる治療法です。

前後の歯を削る必要がなく、咬む力もインプラント体が受け止めるので、周囲の歯に負担がかからないのが大きなメリットです。

デメリットとしては、インプラント体を埋め込む際に外科処置(外科手術)が必要となることや、インプラント体を埋め込む部位の顎骨の状態や、血管・神経の位置など、周囲組織の状態に影響されやすいというところがあります。

また、インプラント体が骨に定着する(くっつく)のを待つ必要があるため、治療期間が6カ月~1年程度かかります。

インプラントは保険適応されないため、全て自費診療となります。

使用するインプラント体の種類や、周囲組織の状態、人工の歯の素材などによって費用が異なりますので、自分に合った治療方法および費用を相談していくことをおすすめします。

 

 

1-2. ブリッジ

ブリッジとは、失った歯の両隣の歯を土台として、3本以上の人工歯を繋げて、橋をかけるように土台の歯と連結することによって失った歯を補う治療法です。

その歴史は古く、海外では紀元前からブリッジ治療が行われていたという記録があります。

メリットとして、土台となる歯があれば、骨などの周囲組織の状態に影響を受けることなく治療を行うことができること、保険適応内で治療を行うことができ、3~4週間と比較的短期間で治療を行うことが出来ることが挙げられます。

また、外科処置の必要性がないために、持病や全身状態に左右されにくい治療法でもあります。

デメリットとしては、なんといっても土台の歯を削る必要があるということ、また、土台の歯に負担がかかることが挙げられます。

 

 

2. 自分に合った治療法とは?

インプラントとブリッジ、どちらも優れた治療法です。

では、自分に合った治療法とは、どちらなのでしょうか。

それは、御自身が何を重要視していくかによります。

インプラントが向いている方、ブリッジが向いている方に分けてみていきましょう。

 

2-1. インプラント治療が向いている方

▶︎周囲の歯を削りたくない方

歯を失った理由にもよりますが、失った歯以外ほとんどが治療をしていない歯の場合や、前後の歯が詰め物、被せものなどで治療を行っていない歯の場合、ブリッジを入れるために大きく削ってしまうのは勿体ない・・・と、思わず考えてしまいます。

インプラントならば、周囲の歯を削ることなく治療を行うことが出来ます。

 

▶︎出来るだけ再治療をしたくない方

ブリッジの場合は、土台となる歯のむし歯、破折、歯周病などによって、ブリッジ全体の再治療が必要となることがあります。

インプラントとブリッジの10年生存率(10年後にその歯が問題なく使えているかの指標)は、保険診療のブリッジが50~70%なのに対して、インプラントは90%以上とのデータもあります。

土台となる歯があまり丈夫でない、再治療のリスクを伴う場合は、それに影響されない治療法であるインプラントを選んだほうが良いかもしれません。

 

▶︎自身の歯列の一番奥に歯を入れたい場合

ブリッジは、失った歯の前後に自身の歯が存在していることが必須条件となります。

一番後方の歯を失った場合や、治療予定の部位より後方の歯を既に失っている場合は、ブリッジによる治療は行うことが出来ません。

 

2-2. ブリッジ治療が向いている方

▶︎外科処置に抵抗がある方 全身疾患がある方

インプラントに外科手術はどうしても必要です。

「歯肉を切ったり、骨に穴をあけたりはしたくない!」という方は、ブリッジを選択すると良いでしょう。

また、全身疾患がある方や、服用しているお薬の関係で観血的処置(出血を伴う外科処置)を控えたほうが良い方は、ブリッジをおすすめします。

 

▶︎治療期間を短くしたい方

インプラントは、少なくとも半年は治療期間を考えておく必要があります。

インプラントの治療途中で転院することは難しいので、長期間の通院が困難な方は、インプラント治療を行うことは難しいかもしれません。

 

▶︎費用を出来るだけ抑えたい方

インプラントは、基本的に全て自費診療です。

使用する素材や、歯および周囲組織の状態によって費用は変わってきます。

 

ブリッジは保険適応内で治療を行うことが可能です。

その場合、土台の歯は銀歯になりますので、白い歯が希望の場合は自費診療となってきます。

 

両方を自費治療と考えた場合でも、費用を比較すると、ブリッジのほうが費用を抑えられる傾向にあります。

自費診療の場合は、お口の中の診査をした上で、詳細を相談していくことをおすすめします。

 

 

3.まとめ

インプラント治療が向いている方

周囲の歯を削りたくない

出来るだけ再治療をしたくない

自身の歯列の一番奥に歯を入れたい

 

ブリッジ治療が向いている方

外科処置に抵抗がある

全身疾患がある

治療期間を短くしたい

費用をできるだけ抑えたい

 

 

インプラントとブリッジの治療方法について、様々な視点から比較してみました。

どちらも優れた治療法であり、それと同時に、どちらにもメリット・デメリットが存在します。

 

お口の中の状態、全身状態などにより、歯科医師からどちらかを勧められる場合もあります。

一定の条件をクリアすれば、どちらを選択するか、御自身の希望に委ねられることもあるかと思います。

 

生きていく上で、お口の中の機能を維持していくことは、とても重要です。

どの治療法を選択するのか、御自身のお口の中の状態とあわせて、考えてみて下さい。

 

わからないことや、聞きたいことなどございましたら、一度相談にいらしてください。

御自身が納得して治療を受けていただけることができるよう、お手伝いしていきます。

 

インプラントとブリッジ、どちらがいいの?①〈治療方法の違い〉

2024年3月31日

何らかの理由で歯を失ってしまった時。

 

なくなった歯を補う方法としては、インプラント、ブリッジ、義歯(入れ歯)の3種類があります。

 

失った歯の本数が少ない場合、インプラントとブリッジで悩まれる方が多いですね。

ここでは、インプラントとブリッジの治療方法における違いについて、お話していきましょう。

 

目次

1.インプラントとブリッジ、どんな治療法?

2.インプラントとブリッジの治療における違いとは?

 ◆歯を削る必要性

 ◆外科処置の必要性

 ◆周囲組織の状態により受ける影響

 ◆咬合力、周囲の歯への負担

 ◆メンテナンス

 ◆治療期間

 ◆費用

3.まとめ

 

1.インプラントとブリッジ、どんな治療法?

インプラントとは、歯を失った部分の顎骨に、外科手術によってチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に土台を立てて、人工の歯を被せる方法です。

一方、ブリッジとは、失った歯の両隣の歯を削って土台を作り、3本以上の人工歯を繋げて、橋をかけるように土台の歯に取り付けることで、失った歯の部分を補う方法です。

 

2.インプラントとブリッジの治療における違いとは?

では、インプラントとブリッジの治療方法にどのような違いがあるのか、比較して見ていきましょう。

 

◆歯を削る必要性

インプラントの場合は、両隣の歯を削ることなく処置を行うことができます。

 

しかし、ブリッジの場合は、両隣の歯を土台として、連結した歯を被せていく治療法のため、土台となる歯を大きく削る必要があります。

これが、ブリッジの治療の最大のデメリットです。

むし歯1つない健康な歯であっても、ブリッジの土台とする場合は、歯の表面を全周削っていく必要があるのです。

また、歯が傾いている場合や、歯の内部にある神経が表面に近い場合は、削ったあとに痛みを生じることがあります。

その場合は、神経を取る処置も必要になってきます。

さらに、健康な歯の表面を大きく削ることによって、虫歯に対するリスクが高くなります。

 

そうはいっても、ブリッジで歯の表面を覆っていれば、むし歯になりにくいような気もしますね。

しかし、汚れの残りやすい歯の根元、つまり歯と歯肉のさかい目には、被せ物と自分の歯とのさかい目が存在します。

ここから、むし歯が発生することが多いのです。

また、自分の歯質量が少なくなっているので、虫歯が大きくなると、その歯を残すことが難しくもなるのです。

 

ただし、もしも土台となる歯が既に被せ物で覆われているのであれば、ブリッジのデメリットが大きく減少します。

既に入っている人工の歯を削って外し、形を整えた上で新しくブリッジを入れていく場合は、この治療において、御自身の歯を削る量が少量で済むことになるからです。

かといって、むし歯のリスクが低下するわけではないので、引き続き注意が必要ではあります。

 

◆外科処置の必要性

ブリッジは、外科処置の必要性はありません。

 

それに対してインプラントは、外科処置(外科手術)が必須となります。

局所麻酔(部分的な麻酔)をしっかり行うので、痛みを感じることはありませんが、歯肉の切開や、顎骨へインプラント体を埋める処置などの、外科手術を行う必要があるのです。

そのため、高血圧や糖尿病などの全身疾患がある場合は、施術自体を行うことが出来ない可能性があります。

また、外科手術の際には、顎骨内の神経や血管の損傷、術後の細菌感染、インプラント周囲炎、インプラント体が顎骨に定着しない、などといったトラブルが発生する可能性もあります。

 

◆周囲組織の状態により受ける影響

インプラントは、インプラント体を埋め込む部位の顎骨の厚み、高さ、密度や、その中を走行する神経、血管の位置など、周囲組織の状態がとても重要になってきます。

年齢を重ねるにつれて、顎骨も痩せてきやすいので、インプラントを保持出来るだけの骨の量がない場合や、骨の内部の状態が良好でないと、インプラント治療を行うことが出来ません。

また、隣接する歯や歯周組織に炎症が生じていると、インプラントの予後が悪くなってしまいます。

インプラント治療を行う前に、むし歯や歯周病の治療を終わらせておく必要があります。

 

ブリッジの場合は、失った歯の前後に土台となる歯があること、また、その歯に欠損部の咬み合う力を肩代わりできるだけの強度があることが必要となります。

また、失った歯が、強い咬合力を支える歯であった場合は、それを支えるために土台となる歯を増やすこともあります。

しかし、周囲組織の骨量や神経、血管の位置などには、影響は受けません。

 

◆咬合力、周囲の歯への負担

インプラントの場合、咬合力はインプラント体である人工の歯根で受け止めます。

そのため、周囲の歯に負担がかかることはありません。

 

ブリッジの場合、ブリッジ全体にかかる力を土台の歯で受け止めます。

つまり、欠損した部分の咬合力は、土台の歯が肩代わりすることとなり、その分、土台の歯に大きな負担がかかることになります。

 

◆メンテナンス

メンテナンスは、インプラント、ブリッジ共に必要になります。

 

ブリッジは、自分の歯である土台の歯がむし歯になったり、歯周病になったりしないよう、また、負担がかかりすぎて破折を起こしたりしないように気を付ける必要があります。

特にブリッジでは、御自身の歯がない部分である人工歯周辺の清掃が難しく、汚れが残りやすい為に、口臭やむし歯・歯周病の原因となりやすいので、注意が必要です。

 

インプラントは、むし歯にはなりません。

しかし、インプラント周囲が清潔に保たれていないと、歯肉に炎症が生じ、インプラント周囲組織に炎症が広がることがあります。

これをインプラント周囲炎といいます。

インプラント周囲炎を放置すると、顎骨内で炎症が拡がり、重大な感染症を引き起こしかねません。

インプラント体の除去の必要性が出てくる可能性もあります。

 

いずれにしても、インプラント、ブリッジ共に、メンテナンスが非常に重要であるという点には変わりありません。

 

◆治療期間

インプラントの治療期間は、6カ月~12カ月位です。

毎週通院するというより、「インプラント体が骨に定着する(くっつく)のを待つ」といった、経過観察の時間が長くかかります。

また、抜歯の後で傷口が落ち着いてからインプラントの手術を行う場合や、顎骨の量が足りずに骨を足す処置などが必要になる場合は、その分治療期間が長くかかります。

 

ブリッジの治療期間は、3~4週間位です。

歯の内部の治療(根管治療)などが必要となる場合は、その分治療期間が長くなります。

 

◆費用

ブリッジは、保険適応内で治療を行うことが可能です。

その場合は、土台となる歯は銀歯になります。

自費診療で、全て白い歯を入れることも可能です。

 

インプラントは、基本的に全て自費診療となります。

 

両方を自費治療と考えた場合でも、費用を比較すると、ブリッジのほうが費用を抑えられる傾向にあります。

自費診療の場合は、お口の中の診査をした上で、詳細を相談していくことをおすすめします。

 

 

3.まとめ

インプラントは、周囲の歯を削る必要はない。

→ブリッジは、失った歯の両隣の歯を大きく削る必要がある。

 

インプラントは、外科処置が必要である。

→ブリッジは、外科処置の必要はない。

 

インプラントは、周囲組織に影響を受ける。

→ブリッジは、土台となる歯の強度は必要だが、周囲組織の影響は受けない。

 

インプラントは、周囲の歯に負担がかかりにくい。

→ブリッジは、周囲の歯に大きな負担がかかる。

 

インプラント、ブリッジ共にメンテナンスは重要である。

 

インプラントの治療期間は約半年~1年。

→ブリッジの治療期間は、3~4週間。

 

インプラントは基本的に全て自費診療。

→ブリッジは、保険診療で行うこともできる。

 

 

インプラントとブリッジの治療方法について、様々な視点から比較してみました。

どちらも優れた治療法であり、それと同時に、どちらにもメリット・デメリットが存在します。

 

どの治療法を選択するのか、御自身のお口の中の状態とあわせて、考えてみて下さい。

次回は、どのような方に、どちらの治療法が適しているのかを見ていきたいと思います。

 

わからないことや、聞きたいことなどございましたら、一度相談にいらしてください。

御自身が納得して治療を受けていただけることができるよう、お手伝いしていきます。

 

予防により、結果的に虫歯や歯周病の治療よりも安く済む!?

2024年3月22日

予防の重要性を、聞きなれない切り口からお話していきます。

是非参考にして下さい。

 

◯目次

・虫歯、歯周病と予防

 ◆自宅での予防とは

 ◆歯科医院での予防とは

・予防の重要性

・海外の状況

・安く済みます

・予防のデメリット

・まとめ

 

◯虫歯、歯周病と予防

虫歯と歯周病は、ともに口内の細菌が原因で起こる病気です。虫歯は歯そのものに穴が開く病気です。歯周病は歯肉や骨に炎症を起こす病気で、虫歯の原因菌とは別の種類の細菌が原因です。

虫歯や歯周病を予防するためには、以下の3つの対策が重要です。

①プラークを取り除き、虫歯、歯周病の原因菌を少なくする事。

プラークは歯垢とも呼ばれ、細菌や食べかすなどが歯の表面に付着したものです。プラーク中の細菌が糖分を分解して酸を作り、歯を溶かしたり、歯周病を引き起こしたりします。プラークを取り除くためには、毎日のブラッシングが基本です。

②砂糖を含む食品の摂取頻度を制限する事。

砂糖の糖分は虫歯菌の餌になる為、摂りすぎると虫歯のリスクが高まります。特に食後や間食時に甘いものを食べると、口内の酸性度が上昇し、虫歯が進行し易くなります。

糖分を摂る回数を減らすためには、食事や間食の時間を決めて守ることが大切です。また、甘いものを食べた後はすぐに水を飲んだり、ガムを噛んだりして口内を中和させることも効果的です。

③再石灰化を促し、歯の質を強くする事。

再石灰化とは、酸によって溶け出したミネラル成分が再び歯に戻る現象です。再石灰化が促進されると、歯質が強化されて虫歯に対する抵抗力が高まります。

再石灰化を促すためには、フッ化物応用やシーラントなどが有効です。フッ化物は歯の表面に塗布することで、歯質を強くする効果があります。シーラントは歯の溝に樹脂を流し込むことで、プラークや細菌の侵入を防ぐ効果があります。

 

◆自宅での予防とは

歯科での予防とは、歯科医師や歯科衛生士からのアドバイスをもとに自分で行うセルフケアと、歯科医院で行うプロケアの両方を指します。

自宅での予防、自宅でのセルフケアには、以下のような方法があります。

①歯磨き:食後30分以内に行います。歯の表面や、歯と歯茎の隙間を丁寧に磨きます。力を入れすぎないように注意します。舌専用ブラシや口腔洗浄液なども効果的です。

②食事・生活習慣:栄養バランスのよい食事で免疫力を高めます。間食は控えるか、食べた後は水を飲んだりガムを噛んだりして口内を中和させます。喫煙は避けます。

③噛み合わせ:うつぶせ寝や頬杖などのクセは、歯並びを乱す原因になります。夜間の歯ぎしりや日中の食いしばりにも注意しましょう。

 

◆歯科医院での予防とは

歯科医院での予防、歯科医院でのプロケアには、以下のような処置があります。

①検査・診断:レントゲンや唾液検査などで、口内の状態をチェックします。虫歯や歯周病の有無や進行度、口内細菌数などを確認します。

 

②スケーリング:スケーラーという器具を使って、歯石を除去します。歯石は歯周病の原因となるため、定期的に取り除くことが大切です。

 

PMTC:回転式のブラシやラバーカップなどの器具と、フッ化物入り研磨剤や吸着剤を使って、歯の表面を磨き上げます。歯垢や着色汚れを取り除きます。

 

④フッ素塗布:歯の表面に高濃度のフッ素を塗布します。フッ素には、再石灰化の促進・歯質強化・菌の酸生産抑制などの効果があります。

 

⑤シーラント:奥歯の溝や歯の側面・裏面などをフッ素入りのレジンで塞いで、歯垢がたまりにくくします。虫歯予防に有効です。

定期的に検診を受けてプロケアを受けることと、毎日のセルフケアを怠らないことが、歯の健康を保つために重要です。歯科医師や歯科衛生士からのアドバイスを参考にして、自分に合った予防法を見つけましょう。

 

◯予防の重要性

歯科での予防の重要性は、以下のような点にあります。

①歯の健康を維持する

歯は一度失うと二度と元には戻りません。自分の歯を多く残すことで、咀嚼能力や発音能力を保ち、食事や会話を楽しむことができます。予防に定期的に通うことで、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療が可能になり、歯を削る量や抜く本数を減らすことができます。予防では、歯石除去やPMTCなどの処置によって、歯垢や着色汚れを除去し、歯の美しさや清潔さを保つことができます。

 

②全身の健康を維持する

歯や口腔の健康は全身の健康にも影響します。虫歯や歯周病は口腔内だけでなく、心臓病や糖尿病などの全身性疾患の発症や悪化にも関係しています。

歯周病の原因菌は血液に入り込んで動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。また、誤嚥性肺炎や認知症とも関連しています。予防では、口腔内細菌数を減らし、免疫力を高めることで、全身の健康を守ることができます。

 

◯海外の状況

海外では、歯科の予防への意識や実践はどのような状況なのでしょうか。ここでは、日本と比較して予防歯科が先進的とされるアメリカとドイツについて紹介します。

アメリカでは、歯科医院で定期的に検診やクリーニングを受けることが一般的です。ある調査では、直近一年間に歯の健康診断を目的として歯科医を受診した回数を聞いたところ、アメリカでは「2回」と回答した人が最も多く、日本では「直近一年間では受けていない」と回答した人が最も多いという結果でした。

ドイツでは、保険制度があり、保険者は半年毎に無料で検診を受けることができます。検診では、虫歯や歯周病だけでなく、口腔がんや咬合異常などもチェックされます。また、保険者は3年間連続して検診を受けると、治療費用の自己負担率が減額される制度があります。このように、ドイツでは予防歯科が国策として推進されています。

海外の状況をお話しました。日本でも予防歯科への関心は高まってきていますが、改善の余地があると言えるでしょう。自分の歯を大切にするためにも、定期的に検診を受けてプロケアを受けることと、毎日のセルフケアを怠らないことが重要です。

 

◯予防のメリット

予防歯科の経済的なメリットは、以下のような点にあります。

 

①治療費や時間の節約

予防歯科に定期的に通うことで、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療が可能になり、歯を削る量や抜く本数を減らすことができます。

虫歯や歯周病は放置すると重篤化し、治療費や時間がかかります。また、入れ歯やインプラントなどの補綴物も高額です。

予防歯科では、定期的な検診や処置によって、虫歯や歯周病の発生・進行を抑えることができます。これにより、治療費や時間の節約になります。

 

②全身性疾患の予防

歯や口腔の健康は全身の健康にも影響します。虫歯や歯周病は口腔内だけでなく、心臓病や糖尿病などの全身性疾患の発症や悪化にも関係しています。歯周病菌は血液に入り込んで動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。また、誤嚥性肺炎や認知症とも関連しています。予防歯科では、口腔内細菌数を減らし、免疫力を高めることで、全身の健康を守ることができます。これにより、将来的な医療費の負担も軽減することができます。

 

③生活の質の向上

歯は一度失うと二度と元には戻りません。自分の歯を多く残すことで、咀嚼能力や発音能力を保ち、食事や会話を楽しむことができます。歯が健康であれば、自信を持って笑顔になることができます。また、口臭や口内感染も防ぐことができます。歯石除去やPMTCによって、歯垢や着色汚れを除去し、歯の美しさや清潔さを保つことができます。

 

◯予防のデメリット

しかし、歯科での予防にはデメリットもあります。

費用や時間がかかる事です。歯科での予防には定期的に歯科医院に通う必要があります。

検診や処置には費用が発生するため、経済的な負担になる可能性があります。

また、歯科医院に通うためには時間や交通費もかかります。

仕事や家事などで忙しい方にとっては、通院することが難しい場合もあるでしょう。

 

◯まとめ

定期的に検診を受けてプロケアを受けることと、毎日のセルフケアを怠らないことが、生涯にわたる歯の健康を保つために重要です。快適な毎日を送れるよう今回書かせて頂きました。

 

抜歯シリーズ第3弾~みんなのお悩み、下の親知らず~

2024年3月19日

前回、前々回に引き続き抜歯シリーズとして、難しい抜歯について解説しました。

さて、今回は、抜歯シリーズ第3弾。

 

若い人を中心に、近年の日本人に多い、下顎の親知らずについてお話していきたいと思います。

第2弾でも書きましたが、親知らずの悩みを抱えている方は非常に多くいます。

 

特に、下の親知らずは、近年の日本人は顎の大きさが小さくなってきているため、

真っすぐ生えてくることが少なくなってきました。

 

横から生えてくる親知らずは、様々な悪影響を及ぼします。

 

しかし、皆さんがイメージするように厄介な処置になることが多いです。

これを読んで、少しでもそんな不安が解消できればいいなと思います。

少し怖いこともお話しますが、ご勘弁ください。。。

 

目次

① 下顎の親知らずの抜歯事情

  ◆清掃困難になっている場合

  ◆痛みや腫れを繰り返している

  ◆ 手前の歯に悪影響を与えている場合

  ◆矯正治療上必要な場合

 

②横から生えた親知らずを放置しておくと?

  ◆腫れや痛みを繰り返す

  ◆ 手前の歯をダメにする

  ◆顎の骨の炎症が生じる

 

③親知らずを抜く方法は?

  ◆局所麻酔

  ◆歯茎の切開

  ◆歯の頭の周りの骨の削合

  ◆歯の頭を分割

  ◆根っこの摘出

  ◆縫合

 

④すぐに歯科医院に連絡したほうがいい偶発症

  ◆血が止まらない

  ◆抜歯後3時間程度経過しても、顎や舌がしびれている

  ◆高熱や飲み込んだ時の痛みがある

 

⑤まとめ

 

①下顎の親知らずの抜歯事情

第2弾でも解説しましたが、親知らずは約18歳ごろに生えてくる歯です。上下左右に合計4本あり、歯列の最も後方に生えてくる特徴があります。近年、日本人は様々な原因のため、顎の大きさが小さくなってきているとされています。それに伴い、最後に生えてくる親知らずに必要なスペースが足りず、まっすぐ生えてこないという方が多くなっているのが現状です。それでは、すべての親知らずを抜歯しないといけないのでしょうか?いいえ。そんなことはありません。具体的に見てみましょう。

 

◆清掃困難になっている場合

まずは、自分でのお掃除が難しくなっている時です。親知らずが横から生えていると歯と歯の間が他の部分と異なります。このため、ものが詰まりやすかったり、糸ようじを使ってもなかなか汚れが取れなかったりします。汚れがたまり続けるとどうなるか分かりますよね?このような時には抜いてあげた方が良いかもしれません。

 

 

◆痛みや腫れを繰り返している

次に、横から生えている親知らずの周りの歯茎が腫れたり、痛くなったりすることを繰り返している場合です。これは、⑴と関連します。汚れが長時間ついたままだと、炎症反応が生じます。このような不快な現象を起こしている場合、原因除去をするために抜いてあげた方がいい場合があります。

 

◆手前の歯に悪影響を与えている場合

手前の歯(12歳臼歯)に悪影響を及ぼすことも少なくありません。具体的には、根っこの部分が虫歯になったり、最悪根っこを溶かしたりすることもあります。悪くなった歯の治療をすることはもちろんですが、原因となっている親知らずを取り除いてあげないと同じことを繰り返すことになるかもしれません。

 

◆矯正治療上必要な場合

矯正治療で歯を動かすために親知らずがあると動かしにくくなります。このため、矯正治療を行う場合、親知らずの抜歯を行うことを必須にしている先生もいらっしゃいます。

 

この4つの場合に下の親知らずの抜歯が必要になることがあります。すべての親知らずについて抜歯をしなければならないというわけではありません。自分の親知らずが気になる方は是非一度歯医者さんにご相談ください。

 

②横から生えた親知らずを放置しておくと?

さて、親知らずを抜きたくないと考える方もいらっしゃると思います。もちろんその選択も悪いわけではありません。いろいろと考えてご自身が抜かないという選択をしたのならば、それが患者さんにとってはベストな選択です。したがって、それを否定することはできません。ただし、横に生えている親知らずを放置していると恐ろしいことも起こりえます。ここではどんなことが起こるのかを解説します。

 

◆腫れや痛みを繰り返す

溜まった汚れからばい菌感染を起こしてしまい、そのたびに痛みや歯茎の腫れを繰り返すことになります。これらの感染が歯の周囲だけにとどまっていればいいのですが、最悪、頬っぺたや、顎の下に膿の塊を作ってしまい、出口を求めて皮膚を突き破ったり、喉の周囲まで溜まってしまい、気道が圧迫され窒息してしまうこともあります。これは大げさに解説しているわけではなく、全国の口腔外科病院では比較的よくみられることです。

 

 

◆手前の歯をダメにする

手前の歯(12歳臼歯)が虫歯になったり、根っこが溶けたりする原因になります。こうなると当然治療をしなければなりません。虫歯の治療をすると、詰め物の周りから虫歯が広がりやすくなります。また、神経を取ってしまうと、歯の寿命が短くなってしまいます。根っこが吸収してしまったら、最悪その歯を抜かなければなりません。

 

◆顎の骨の炎症が生じる

歯は顎の骨の中に埋まっています。細菌感染が歯茎を超えて顎の骨にまで及んだ状態を骨炎(こつえん)または骨髄炎(骨髄炎)といいます。この状態は非常に難治性です。顎の骨を腐らせてしまうこともあります。感染の範囲によっては顎の骨を切り取らないといけない場合もあるので注意が必要です。

 

このように、たかが親知らずと思っていても、侮るなかれ。親知らずが原因で生じる病気は厄介なものが多く、大掛かりな手術が必要になったり、入院が必要になることも少なくありません。そんなリスクを持っているのが、横から生えてきている親知らずです。

 

③親知らずを抜く方法は?

それでは具体的に親知らずを抜く方法を解説します。皆さんのイメージする治療通り、親知らずの抜歯は患者さんへのダメージが大きくなる傾向にあります。どんな手順で行われるか見ていきましょう。ここでは、横から生えている親知らずの一般的な抜歯方法を解説します。

 

◆局所麻酔

まずは、局所麻酔です。歯医者さんによって麻酔方法は異なりますが、歯の周りにのみ麻酔をすることが多いです。そのほかに、伝達麻酔といって顎半分が麻酔される方法をとる先生もいます。どちらも適切な麻酔方法ですので、そこはご安心ください。

 

◆歯茎の切開

麻酔が効いているのを確認したら、次は歯茎の切開です。歯を完全に見えるようにするために歯茎を切る必要があります。麻酔がしっかりと効いているので痛みは感じません。

 

◆歯の頭の周りの骨の削合

歯茎を切ってめくりあげると、歯の頭は骨の中に埋まっているのが見て取れます。骨の中に完全に埋まっている状態では当然取れません。ですので、歯の周りの骨を削り、歯を視認できる状態にする必要があります。ここでも、麻酔がしっかり効いているので痛みはほとんどありません。

 

◆歯の頭を分割

横から生えている親知らずでは、歯を2つ以上のパーツに分けて取り除くのが一般的な方法です。このため、歯を根っこと頭とに分ける必要があります。歯を削る機械を使って分割していきますが、神経の近くを削るので、痛みが出る方もいます。そんなときは遠慮なく、訴えるようにしましょう。きっと麻酔を追加してくれます。

 

<h3>根っこの摘出</h3>

さて、歯の頭を割って取れたら、残った根っこを取り出すのみ。ここまでくれば、ほぼ終了しているようなものですが、根っこの状態によってはさらにパーツを分ける必要があることもあります。

 

縫合

全てを取り切ったら最後は傷口を縫い合わせておしまいです。

 

このように、横から生えている親知らずを抜くには一筋縄ではいきません。歯の生え方や歯の大きさ・形は人によって異なるため、厄介な処置になりがちです。少し怖いイメージを持ったかもしれませんが、麻酔がしっかり効いている状態で行えば、痛みを感じることはほとんどありませんのでご安心下さい。

 

④すぐに歯科医院に連絡したほうがいい偶発症

さて親知らずの抜歯後すぐに歯医者さんに連絡したほうがいい偶発症もあります。ここでは、家に帰った後、どんな時に病院に連絡をいれたり、受診した方がよいかの目安となる症状をご紹介します。

 

◆血が止まらない

親知らずの抜歯は切開や骨を削ります。これにより、出血が生じます。通常は止血を確認したのち、帰宅になりますが、家に帰っても沸くような出血がある場合にはすぐに連絡をしましょう。

 

◆抜歯後3時間程度経過しても、顎や舌がしびれている

親知らずの周りには大きな神経が2本通っています。下唇の周りの感覚を伝える神経と舌の感覚を伝える神経です。歯を抜く時にこれらの神経を傷つけてしまうこともあります。通常麻酔薬は2~3時間程度で切れてきますので、それ以上経過しても下唇の周りや舌がしびれている場合にもすぐに連絡しましょう。

 

◆高熱や飲み込んだ時の痛みがある

抜歯後は炎症反応が生じるものです。しかし、その炎症がより広範囲に生じることもあります。そのような場合、39℃程度の高熱や、飲み込んだ時の痛みが生じることが特徴です。これらの症状があれば、早急に対応しなければなりませんので、すぐに連絡しましょう。

 

ここでは3つほど紹介しましたが、その他にも注意が必要な偶発症があります。歯を抜く前に歯医者さんで説明をしっかりと受けるようにしましょう。

 

⑤まとめ

今回は下の親知らずの怖いお話をしました。親知らずの抜歯では大学病院などの専門機関を紹介されることも少なくありません。より安全に抜歯をするためにも必要なことです。自分の親知らずがどうか気になる人は、是非一度ご相談ください。

 

抜歯シリーズ第2弾~上の親知らず~

2024年3月15日

抜歯をメインテーマに扱っています。

上下親知らずの親知らずも今後書く予定です。

 

全3部作の第2部です。

上顎親知らずを抜くときの方法や注意点をまとめています。

ネットの強い若い人たちの一番の悩みの親知らずについてです。

 

 

さて、前回、抜歯シリーズの第1弾として、難しい抜歯について解説しました。

今回は、その第2弾です。

 

特に若い女性のみなさんの悩みの種の「親知らず」に焦点をあてて、解説したいと思います。

 

親知らずも上下あり、それぞれ、特徴が異なるので、

今回は上の親知らずにフォーカスしていきたいと思います。

 

これを読んで、皆さんの不安の解消や、歯医者さんに受診するきっかけにしてほしいと思います。

ちなみに、下の親知らずについては次回の第3弾で詳しくお話します。

 

目次

①みんなは生えている?~親知らず~

 ◆親知らずって?
 ◆どんな歯を抜かないといけない?

 

親知らずの抜歯方法

 ◆見えている親知らず

 ◆骨の中に埋まっている親知らず

 

③上の親知らずの抜歯後の注意点

 ◆上顎洞への穿孔(せんこう)

 ◆鼻出血

 

④まとめ

 

◯みんなは生えている?~親知らず~

皆さんの中には、親知らずが生えている人も、生えていない人もいると思います。ではまずは、親知らずって何なのかから理解していきましょう。そして、皆さんが忌み嫌う親知らずですが、実は、すべての親知らずを抜かないといけないわけではありません。ではどのような場合に抜いてしまった方がいいのでしょうか。

 

 

◆親知らずって?

「親知らず」とは第3大臼歯のことを指します。大臼歯で最もイメージしやすいのは「6歳臼歯」や「12歳臼歯」だと思います。この12歳臼歯のさらに奥にある歯が「親知らず」です。親知らずは「智歯」と呼ばれることがあります。智歯は通常、18歳ごろに生えてくる歯で、高校生くらいから、気になる方も多いのではないでしょうか。

「親知らず」は本来、他の歯と同じようにまっすぐ素直に生えてくるものです。しかし、近年の日本人の顎の骨が小さくなっているなどの影響で、まっすぐ生えてこない場合もあり、様々な悪影響を及ぼすこともあります。

 

◆どんな歯を抜かないといけない?

 「親知らず」と聞くと、「抜かないといけない」というイメージが強くあると思いますが、実際はそうではありません。まっすぐ生え、しっかりと機能している親知らずは本来は抜くべきではありません。では、どのような親知らずを抜くべきなのでしょうか。一言でいうとそれは「他の歯や骨に悪影響を及ぼす可能性のある歯」です。これ以外に矯正治療のために必要な場合もあります。具体的には、斜めや横を向いており、前の歯を押している場合や、痛みや腫れたことがあるもの、家でのケアがしにくい場合などです。

実際の歯医者さんでは、皆さんのお話を聞き、レントゲンやお口の中の診察を十分に行ったうえで、歯科医師が判断します。

このように、親知らずは抜かなくてもいい場合もあるので、まずは、歯医者さんに気軽に相談してみるといいかもしれません。

 

 

◯親知らずの抜歯方法

さて、親知らずを抜くことになった場合、どのような方法で歯を抜くことになるのでしょう。それは、歯が見えているかどうかで異なります。歯が少ししか見えておらず、大半が骨の中に入っている場合、簡単に歯を抜くことはできなくなってしまいます。それでは具体的に解説していきましょう。

 

◆見えている親知らず

歯が見えている場合、皆さんがイメージするような親知らずの抜歯になることは少ないです。慣れている歯医者さんであれば、非常に簡単に抜くことが多いです。時間にすると大体10分ほどでしょうか。

歯に力を加える器具を使って簡単に取り出すことができます。なので、上の親知らずの歯の頭が見えている場合は、比較的容易ですので、ご安心ください。

 

骨の中に埋まっている親知らず

さて、問題はこちらです。骨の中に埋まっている場合はどうでしょう。抜歯の基本として「歯の頭が見えていること」です。なので、歯が見える状態にする必要があります。つまり、歯茎を切って、骨を削り歯の頭が見えるようにする必要があります。一般的な親知らずの抜歯のイメージに近くなりますね。皆さんが怖くなるのも無理ありませんね。ですが安心してください。歯の頭が見えれば、比較的容易に歯を抜くことができるのが、上の親知らずの特徴です。また、麻酔をしっかりと効かせながら行うので、痛いということはほとんどありません。

 

親知らずの抜歯は簡単なものから難しいものまで、バリエーションが豊富です。世間では、怖いイメージが先行していますが、すべてがそうなるわけではありません。自分の親知らずを抜く必要があるのか、どれくらいの難易度になるのかをまずは信頼できる歯医者さんに相談してみましょう。

 

◯上の親知らずの抜歯後の注意点

上の親知らずを抜いた後にも注意するべきことがあります。抜歯後の腫れや痛みなどの一般的な注意点もありますが、ここでは、上の親知らずに特徴的な注意点について解説します。

 

◆上顎洞への穿孔(せんこう)

一つ目が上顎洞への穿孔です。すべての人は上顎洞という副鼻腔を持っています。上の大臼歯などの奥歯は人の構造上、根っこの先端がこの上顎洞と近い関係があり、中には、根っこの先端がこの上顎洞に貫通している場合もあります。このため、抜歯した拍子に、上顎洞に小さな穴があいてしまうことがあります。これが上顎洞への穿孔です。これを放置してしまうと、お水を飲んだ時に鼻からこぼれるということが起こります。ですがご安心ください。もしその兆候が確認された場合、処置を追加して穴をふさぐこともできます。

 

◆鼻出血

これは⑴の理由と似ています。先ほど述べた上顎洞は最終的に鼻腔と交通しています。歯を抜くと少なからず出血するものです。この出血が原因で、上顎洞に血がたまり、鼻をかんだ時に血がにじむということが起こりえます。これも安心してください。出血といっても、大量出血するほどのものではありませんし、基本的に数時間程度で止血されるものです。

 

このように、一般的に気を付けるべきこと以外に、上の親知らずを抜いた場合に特有の注意点があります。これらが生じても基本的には対処することは可能なので、ご安心ください。

 

◯まとめ

さて、今回は上の親知らずの抜歯について詳しく見ていきました。親知らずの抜歯と言えば、怖いイメージがありますが、すべてがそうなるわけではありません。また、すべての親知らずを抜かないといけないというわけでもありません。自分の親知らずがどうなのかはお近くの歯医者さんに相談してみましょう。

あなたのその歯、難しい抜歯になるかも?

2024年2月29日

歯医者さんが嫌われる理由は、怖いとか痛いといった理由がほとんどなのではないでしょうか。

そして、患者さんに最もストレスを与える治療が「抜歯」です。

 

皆さんの中には、この抜歯に苦い思い出を抱いている人も多いのではないでしょうか。

 

時間がかかった、痛い思いをしたなど、苦痛を強いる処置である抜歯ですが、皆さんの健康を守るためには必要な処置です。

 

今回は、抜歯の中でも簡単にはいかない「難抜歯」について解説します。

少し怖い内容になりますが、これを読んで、「こうならないように気をつけよう」という気持ちが少しでも高まってもらえれば幸いです。

なお、今回は、親知らずの抜歯以外の抜歯を解説します。親知らずの抜歯は続編を出しますので、心穏やかに待っていてください。

 

目次

① 筋縄ではいかない抜歯とは?

 ◆難抜歯とは?

 ◆どんな歯が対象になるの?

 

② 難抜歯の方法

 ◆歯肉切開・剥離

 ◆骨の削合

 ◆歯根分割

 

③偶発症

 ◆炎症反応

 ◆神経障害

 ◆ 抜歯窩治癒不全(ドライソケット)

 ◆出血斑

 

④まとめ

 

 

一筋縄ではいかない抜歯とは?

抜歯には、大きく分けて3つの種類があります。一つ目が「普通抜歯」です。普通抜歯とは、文字通り、抜歯をするための道具を用いて単純に歯を抜くことです。2つ目が「難抜歯」です。詳細については後述します。最後が「埋伏抜歯」です。これは親知らずの抜歯をイメージしてもらえればいいかなと思います。この親知らずの抜歯についても次回以降で詳しくお話ししますのでお楽しみにしていてください!!

 

◆難抜歯とは

さて、今回は「難抜歯」についてのお話しです。ここでいう難抜歯とは、普通抜歯に加えて、一手間加える必要のある抜歯を指します。抜歯の一手間とは、歯肉を切開したり、骨を削ったりする処置を指します。抜歯を行う歯に何らかの原因があり、単純に抜くことができない場合に何らかの処置を追加して、歯を取り出すことこそが「難抜歯」です。

 

◆どんな歯が対象になるの?

では、どのような歯が難抜歯の対象になるのでしょうか。基本的に原因は、抜かないといけない歯に問題があるからです。具体的には次の5つが代表的です。

⑴    歯が根っこだけになっている

虫歯などが原因で歯が根っこだけになっている状態を「残根(ざんこん)」と言います。残根の場合、歯が歯茎の中に入っている状態が多く、器具を入れる場所がありません。

⑵    根っこだけになった歯が骨の下に入っている

根っこだけの歯は、骨の下に入り込んでいる場合も少なくありません。このような場合にも、器具を挿入する場所を作る必要があります。

⑶    歯の根っこが複数あり、開いている

根っこが複数あったり、開きが大きかったりする場合、簡単に抜くことはできません。土に埋めた杭を2本一気に抜くことが難しいように、歯を抜く場合も、2つを一挙に抜くことはとても難しいです。

⑷    根っこの先端が大きくなっている

根っこの先端が大きくなっていることを「根肥大(こんひだい)」と言います。根肥大では、出口が小さいため、簡単に抜歯することができません。

⑸    根っこと骨が一体化している

長年炎症を繰り返している歯は時に、骨と一体化していることがあります。このような場合にも、難しい抜歯になると簡単にイメージできると思います。

 

このように、多くの場合歯が原因で、単純に器具のみで抜歯することが難しく、それ以外に一手間を加えて、抜歯しやすくすることがあります。

 

 

難抜歯の方法

それでは具体的にどのような処置を追加する必要があるのでしょうか。具体的な方法を3つ解説します。実際は、これらを組み合わせて、難抜歯を行うことがほとんどです。これらは、歯の状態によって使い分けられますが、多くの場合、複数の原因があるからです。

 

◆歯肉切開・剥離

一つ目が歯肉の切開と剥離(はくり)です。つまり、歯茎を切って、めくり上げることです。歯茎に覆われている時に用いられます。これによって、視野を確保することができます。

 

◆骨の削合

二つ目が骨を削る行為です。①と併せて用いられることがほとんどです。これは、骨の下に歯が残っている時に用いられます。骨を削り、残った歯を直視することができるようになります。また、骨と歯が癒着している場合、骨を削ることで、器具が入るスペースを作ることもできます。

 

◆歯根分割

最後が歯根を二つ以上に分ける歯根分割です。根っこが複数あったり、開き方が大きかったりする場合に用います。これを適切に行うことで、簡単に歯を抜くことができます。

 

偶発症

全ての医療には偶発症が生じます。偶発症とは、患者さんにとっての不利益の全てを指します。ここでは、難抜歯時にどのような偶発症が生じるのかを解説したいと思います。特に注意すべきものを4つ紹介したいと思います。また、中にはすぐに歯医者さんに連絡を入れるべきものもあるので、注意してください。

 

◆いわゆる炎症反応

最初は炎症反応です。具体的には、痛い、腫れた、赤くなったなどです。難抜歯では、切開や、骨を削る必要があります。このため、通常の普通抜歯よりも患者さんへのダメージが大きく、この炎症反応が強く出る傾向にあります。基本的には抜歯後2日をピークに良くなっていくものなので、歯医者さんからもらったお薬を飲んで様子を見ましょう。ただし、呼吸が苦しくなった、飲み込む時の喉の痛みや口が全く開かなくなったなどの症状がある場合はすぐにご連絡ください。

 

◆神経障害

骨の中には顔の皮膚の感覚を伝える神経が走っています。骨を削ったり、切開をしたりしたときに、これらの神経が傷ついてしまうと、感覚の異常が生じます。なので、抜歯後2、3時間経っても痺れが取れない場合には、歯医者さんにご連絡ください。

 

抜歯窩治癒不全(ドライソケット)

原因は詳しくわかっていませんが、抜歯後の治りが悪く、強い痛みを生じる方もいらっしゃいます。1週間経っても、強い痛みが続く場合は治癒不全を疑うので歯医者さんに連絡しましょう。

 

◆出血斑

血液サラサラのお薬を飲んでいる方によく見られます。青あざのようなものが生じます。基本的には吸収されるので、様子を見ておけば大丈夫です。

 

他にも、出血などもありますが、基本的には様子を見ておけば大丈夫な場合が多いのでここでは述べません。歯を抜いた後に歯医者さんで注意事項を聞かされると思いますが、それを守るようにしましょう。

 

まとめ

今回は、「難抜歯」についてお話ししました。大体のイメージを掴んでもらえればいいかなと思います。最も大切なことは、歯を抜かないような環境を整えるということです。日々のブラッシングや、定期的な受診で皆さんの歯を自分で守っていきましょう。

不幸にも、歯を抜くことになってしまった人は、前日、当日の注意点をしっかりと守り、何か気になることがあれば、歯医者さんに連絡することも大切です。何でも相談できる歯医者さんを持っておきましょう!

 

現代人に歯列不正が多いのはなぜ??

2024年2月28日

歯並びが悪い、というと、真っ先に思い浮かべるのが、歯がガタガタに並んでいる状態ではないでしょうか。

この、歯並びがガタガタになってしまう歯列不正のことを叢生(そうせい)といいます。

現代の日本人には、この叢生(そうせい)という歯列不正が増加してきているのです。

 

今回は、この歯がガタガタに並んでしまう歯列不正が現代人に多い理由について、お話していきましょう。

 

目次

1. 歯並びがガタガタになってしまう原因

2. なぜ、現代人は顎が小さくなってしまったのか

3. 顎が小さくなることのデメリットとは

4. 下顎の成長を促すには

5. まとめ

 

1. 歯並びがガタガタになってしまう原因

歯並びがガタガタになってしまう原因は、大きく分けて2つ考えられます。

1つは、顎の大きさに対して、歯の大きさが大きいこと。

 

もう1つは、歯の大きさに対して、顎の大きさが小さいことです。

40年前のデータと比較すると、歯1本1本のサイズは少し大きくなっています。

 

それに対して、顎の大きさは、前後的な奥行きは大きくなっているものの、歯列の幅は大きくなっていません。

 

つまり、ほっそりとした、顎が細い顔貌が増えて、顎の幅がしっかりとした、いわゆるえらが張っているような顔貌が減少していることになります。

そして、この顎が細い顔貌の原因ともいえる、歯列の幅が大きくならずに前後的なアーチが長い骨格によって、出っ歯や、歯並びがガタガタになりやすくなっているのです。

 

2. なぜ、顎が小さくなってしまったのか

では、なぜ現代人の顎は細長く、小さくなってしまったのでしょうか。

 

それは、現代人の食生活にあると考えられています。

歯の大きさや本数は、環境要因にはあまり左右されず、遺伝的なものによって決定されやすいと言われています。

 

それに対して、顎の大きさは、遺伝的なものに加えて、周囲の筋肉から受ける刺激に影響を受けて、成長度合いが決定すると言われています。

江戸時代以前は、日本人は日常的に固いものを食べていました。

 

そのため、顎の筋肉が発達し、それによって顎の骨の幅や厚みが増加し、いわゆるエラが張った顔貌になりやすかったのです。

しかし、江戸時代以降の日本人は、固いものをあまり食べなくなってきました。

 

それによって、顎骨に加わる筋肉からの刺激も少なくなり、その結果として、顎骨の横幅の成長が促進されずに、全体的にほっそりとした顔貌となってきているのです。

 

3. 顎が小さくなることのデメリットとは

「小顔のほうが良い!」

 

そう思っていませんか?

 

しかし、筋肉量による影響を受けるのは、下の顎だけで、固いものを咬まないからと言って、顔全体が小さくなるわけではありません。

下の顎の幅が小さくなることは、むしろデメリットのほうが大きいのです。

 

小さな鉛筆立てに、沢山の鉛筆を入れるところを想像してみましょう。

きれいに納まりきらずに、グチャグチャな方向にはみ出るようになってしまいますね。

 

お口の中も同じです。

小さな顎には、全ての歯がきれいに並ぶことができません。

 

あとから生えてくる歯は、空いているスペースに周囲の歯を押しのけて無理やり生えてくるので、ねじれてしまったり、出っ歯になったり、頬側や舌側にはみ出した形で並んでしまうのです。

ガタガタに生えてしまうと、上下でしっかり咬みあわなくなります。

 

食べ物を咬むことができる面積が、少なくなってしまいますね。

また、歯並びがガタガタになればなるほど、歯磨きが難しくなります。

 

それによって、虫歯のリスクが上がるだけでなく、歯周病のリスクも高くなるのです。

また、前歯の角度やねじれ具合によってすき間が出来てしまうと、そこから息が漏れてしまい、発音にも悪影響を及ぼす恐れもあるのです。

 

4. 下顎の成長を促すには

下顎の成長を促すためには、子供の頃からしっかりと噛んで食べる習慣をつけることが大切です。

極端に固いものを食べる必要はありません。

 

普段の食事を、よく咬んで食べるようにしましょう。

 

根菜類など、噛み応えのあるものをメニューに加えるのも効果的ですね。

よく咬んで食べることによって、素材本来の味を感じやすくなるので、薄味でも充分に満足できるようになるというメリットもあります。

 

5. まとめ

歯並びがガタガタになってしまう原因とは、顎の大きさと歯の大きさとの不調和によります。

 

特に、現代人は固いものを食べる習慣に乏しいため、顎骨が発達しにくく、顎が小さい傾向にあります。

下顎の成長を促すためには、子供の頃からしっかりと噛んで食べる習慣をつけることが大切です。

 

しかし、それでも遺伝的要因が強く出ることなどによって、歯並びが悪くなってしまうこともあります。

歯並びは、見た目の問題に加えて、食べ物を噛む力が弱くなってしまったり、発音に影響が出たり、虫歯や歯周病のリスクを高めてしまったりと、様々なデメリットを生み出します。

 

歯並びで気になることがございましたら、お気軽に当院にご相談ください。

 

入れ歯とは?(後編)

2024年2月22日

みなさんは入れ歯と聞いて、何を思い浮かべますでしょうか?

 

実は知ってそうで知らない「入れ歯」!

前編では、そもそも入れ歯とは何か?やどんな種類があるのかをご紹介しました!

 

(まだ見ていない方は▶︎こちらから)

 

後半では、そもそも入れ歯は何からできているのかや特殊な入れ歯などについてご紹介します!!

ぜひ、参考にしてみて下さいね!!

 

 

目次(後編)

3.入れ歯は何から出来ている?

 ◆「床」とは?

 ◆「人工歯」とは?

 ◆「クラスプ、バー」とは?

4.特殊な義歯

 ◆顎義歯・顎補綴(がくぎし・がくほてつ)

 ◆舌接触補助床(ぜつせっしょくほじょしょう)・PAP

 ◆スピーチエイド・パラタルリフト

5.まとめ

 

「入れ歯」は何から出来ている?

ここまで種類やメリットデメリットをご説明させていただきましたが

次に、そもそも入れ歯は何からできているかご紹介します!

 

入れ歯は床(しょう)と言われるものと人工歯(じんこうし)からなります。

局部義歯では更にクラスプと呼ばれる金具やバーと呼ばれる連結装置などが付属します。

 

◆「床」とは?

床とは義歯の土台となる部分です。入れ歯と言えばピンクのものを思い浮かべると思いますが、そのピンクの部分を床と言います。

なるべく自分の歯茎の色と違和感のない色で仕上げます。高齢の方や男性の方は少し暗めの色、女性や若い方の場合には繊維質の入った明るい色、というような感じです。

 

◆「人工歯」とは?

人工歯とは、その名のとおり人工の歯です。ピンクの床の上に人工歯を並べることで義歯で噛めるようになります。

人工歯と言っても種類がたくさんあり、患者さん個人個人の噛み合わせや噛み癖、顔の形や性別といった条件に合う人工歯を選択し、並べていきます。

材質も様々で、レジン歯と呼ばれる樹脂の材料を用いたものや、陶歯というセラミックのもの、金属からできたものまであります。

 

◆「クラスプ、バー」とは?

クラスプとは部分入れ歯にのみ付属するもので、入れ歯を固定するための「ツメ」のようなものです。バーは上あごや、下あごの離れた部分に入れ歯がまたがるような歯の欠損がある場合、橋渡しをする役目です。

クラスプやバーは保険診療か自由診療かによって形状が変わるとともに、残っている歯に可能な限り余計な負担をかけず、なおかつ、しっかり入れ歯が維持できるように歯科医師が設計します。

クラスプの種類によっては、一部歯を削る必要がある場合もあります。

 

特殊な義歯

ここまでは通常の義歯の種類やメリット・デメリットを紹介しました。

最後に、特殊な義歯についてご説明します。

 

特殊な義歯というのは、殆ど目にしたことがないと思います。

しかし、口腔癌などで通常の義歯を装着できなくなった患者さんは、そのような患者さん用の義歯があるのです。

 

◆顎義歯・顎補綴(がくぎし・がくほてつ)

歯肉にできる癌や咽頭の近くにできた癌を治療すると、上あごの骨や下あごの骨を切除するため、大きな穴が開き鼻と口がつながってしまうことや、あごの骨がえぐれてなくなってしまうことがあります。

そういった場合に、顎義歯とよばれる特殊な義歯で穴を塞ぎ、通常通りの食事を摂れるようにします。多くの場合は大学病院で製作しますが、一般の歯科医院でも製作出来る場合もありますので、かかりつけ歯科医院で相談してみましょう。

 

◆舌接触補助床(ぜつせっしょくほじょしょう)・PAP

舌接触補助床とは舌癌で舌の切除により動きが悪くなり、呑み込みがうまく出来ない、発音が出来ず、相手に言葉が伝わらないという方に装着する義歯です。

顎義歯と同じく、大学病院で製作されることが多い義歯ですが、一般歯科医院でも製作できることもあります。

 

◆スピーチエイド・パラタルリフト

これは主に唇顎口蓋裂の後遺症である、構音障害(こうおんしょうがい)に対して用いられる義歯です。唇顎口蓋裂のかたは咽頭(いんとう)の筋肉が動かず、うまく発音できないことがあります。その咽頭の筋肉の動きを補うための義歯です。一般歯科医院でも製作できる場合があります。

 

まとめ

知っているようで知らない入れ歯の世界…

いかがでしたでしょうか?

入れ歯は全てオーダーメイドです。

一人ひとり違う口の中、同じ入れ歯は世界に一つとしてありません。

24時間365日共に過ごす(かもしれない)入れ歯、やはり自分に合ったもの、ストレスなく使用できるものが良いですよね。

最後になりますが、入れ歯は生活するための「道具」です。

道具には定期的なメンテナンスが必要です。

かならず、自分の歯と同じく、かかりつけ歯科医院で定期的なメンテナンスを受けましょう。

初診「個別」相談へのご案内

当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
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