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インプラントとブリッジ、どちらがいいの?①〈治療方法の違い〉

2024年3月31日

何らかの理由で歯を失ってしまった時。

 

なくなった歯を補う方法としては、インプラント、ブリッジ、義歯(入れ歯)の3種類があります。

 

失った歯の本数が少ない場合、インプラントとブリッジで悩まれる方が多いですね。

ここでは、インプラントとブリッジの治療方法における違いについて、お話していきましょう。

 

目次

1.インプラントとブリッジ、どんな治療法?

2.インプラントとブリッジの治療における違いとは?

 ◆歯を削る必要性

 ◆外科処置の必要性

 ◆周囲組織の状態により受ける影響

 ◆咬合力、周囲の歯への負担

 ◆メンテナンス

 ◆治療期間

 ◆費用

3.まとめ

 

1.インプラントとブリッジ、どんな治療法?

インプラントとは、歯を失った部分の顎骨に、外科手術によってチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に土台を立てて、人工の歯を被せる方法です。

一方、ブリッジとは、失った歯の両隣の歯を削って土台を作り、3本以上の人工歯を繋げて、橋をかけるように土台の歯に取り付けることで、失った歯の部分を補う方法です。

 

2.インプラントとブリッジの治療における違いとは?

では、インプラントとブリッジの治療方法にどのような違いがあるのか、比較して見ていきましょう。

 

◆歯を削る必要性

インプラントの場合は、両隣の歯を削ることなく処置を行うことができます。

 

しかし、ブリッジの場合は、両隣の歯を土台として、連結した歯を被せていく治療法のため、土台となる歯を大きく削る必要があります。

これが、ブリッジの治療の最大のデメリットです。

むし歯1つない健康な歯であっても、ブリッジの土台とする場合は、歯の表面を全周削っていく必要があるのです。

また、歯が傾いている場合や、歯の内部にある神経が表面に近い場合は、削ったあとに痛みを生じることがあります。

その場合は、神経を取る処置も必要になってきます。

さらに、健康な歯の表面を大きく削ることによって、虫歯に対するリスクが高くなります。

 

そうはいっても、ブリッジで歯の表面を覆っていれば、むし歯になりにくいような気もしますね。

しかし、汚れの残りやすい歯の根元、つまり歯と歯肉のさかい目には、被せ物と自分の歯とのさかい目が存在します。

ここから、むし歯が発生することが多いのです。

また、自分の歯質量が少なくなっているので、虫歯が大きくなると、その歯を残すことが難しくもなるのです。

 

ただし、もしも土台となる歯が既に被せ物で覆われているのであれば、ブリッジのデメリットが大きく減少します。

既に入っている人工の歯を削って外し、形を整えた上で新しくブリッジを入れていく場合は、この治療において、御自身の歯を削る量が少量で済むことになるからです。

かといって、むし歯のリスクが低下するわけではないので、引き続き注意が必要ではあります。

 

◆外科処置の必要性

ブリッジは、外科処置の必要性はありません。

 

それに対してインプラントは、外科処置(外科手術)が必須となります。

局所麻酔(部分的な麻酔)をしっかり行うので、痛みを感じることはありませんが、歯肉の切開や、顎骨へインプラント体を埋める処置などの、外科手術を行う必要があるのです。

そのため、高血圧や糖尿病などの全身疾患がある場合は、施術自体を行うことが出来ない可能性があります。

また、外科手術の際には、顎骨内の神経や血管の損傷、術後の細菌感染、インプラント周囲炎、インプラント体が顎骨に定着しない、などといったトラブルが発生する可能性もあります。

 

◆周囲組織の状態により受ける影響

インプラントは、インプラント体を埋め込む部位の顎骨の厚み、高さ、密度や、その中を走行する神経、血管の位置など、周囲組織の状態がとても重要になってきます。

年齢を重ねるにつれて、顎骨も痩せてきやすいので、インプラントを保持出来るだけの骨の量がない場合や、骨の内部の状態が良好でないと、インプラント治療を行うことが出来ません。

また、隣接する歯や歯周組織に炎症が生じていると、インプラントの予後が悪くなってしまいます。

インプラント治療を行う前に、むし歯や歯周病の治療を終わらせておく必要があります。

 

ブリッジの場合は、失った歯の前後に土台となる歯があること、また、その歯に欠損部の咬み合う力を肩代わりできるだけの強度があることが必要となります。

また、失った歯が、強い咬合力を支える歯であった場合は、それを支えるために土台となる歯を増やすこともあります。

しかし、周囲組織の骨量や神経、血管の位置などには、影響は受けません。

 

◆咬合力、周囲の歯への負担

インプラントの場合、咬合力はインプラント体である人工の歯根で受け止めます。

そのため、周囲の歯に負担がかかることはありません。

 

ブリッジの場合、ブリッジ全体にかかる力を土台の歯で受け止めます。

つまり、欠損した部分の咬合力は、土台の歯が肩代わりすることとなり、その分、土台の歯に大きな負担がかかることになります。

 

◆メンテナンス

メンテナンスは、インプラント、ブリッジ共に必要になります。

 

ブリッジは、自分の歯である土台の歯がむし歯になったり、歯周病になったりしないよう、また、負担がかかりすぎて破折を起こしたりしないように気を付ける必要があります。

特にブリッジでは、御自身の歯がない部分である人工歯周辺の清掃が難しく、汚れが残りやすい為に、口臭やむし歯・歯周病の原因となりやすいので、注意が必要です。

 

インプラントは、むし歯にはなりません。

しかし、インプラント周囲が清潔に保たれていないと、歯肉に炎症が生じ、インプラント周囲組織に炎症が広がることがあります。

これをインプラント周囲炎といいます。

インプラント周囲炎を放置すると、顎骨内で炎症が拡がり、重大な感染症を引き起こしかねません。

インプラント体の除去の必要性が出てくる可能性もあります。

 

いずれにしても、インプラント、ブリッジ共に、メンテナンスが非常に重要であるという点には変わりありません。

 

◆治療期間

インプラントの治療期間は、6カ月~12カ月位です。

毎週通院するというより、「インプラント体が骨に定着する(くっつく)のを待つ」といった、経過観察の時間が長くかかります。

また、抜歯の後で傷口が落ち着いてからインプラントの手術を行う場合や、顎骨の量が足りずに骨を足す処置などが必要になる場合は、その分治療期間が長くかかります。

 

ブリッジの治療期間は、3~4週間位です。

歯の内部の治療(根管治療)などが必要となる場合は、その分治療期間が長くなります。

 

◆費用

ブリッジは、保険適応内で治療を行うことが可能です。

その場合は、土台となる歯は銀歯になります。

自費診療で、全て白い歯を入れることも可能です。

 

インプラントは、基本的に全て自費診療となります。

 

両方を自費治療と考えた場合でも、費用を比較すると、ブリッジのほうが費用を抑えられる傾向にあります。

自費診療の場合は、お口の中の診査をした上で、詳細を相談していくことをおすすめします。

 

 

3.まとめ

インプラントは、周囲の歯を削る必要はない。

→ブリッジは、失った歯の両隣の歯を大きく削る必要がある。

 

インプラントは、外科処置が必要である。

→ブリッジは、外科処置の必要はない。

 

インプラントは、周囲組織に影響を受ける。

→ブリッジは、土台となる歯の強度は必要だが、周囲組織の影響は受けない。

 

インプラントは、周囲の歯に負担がかかりにくい。

→ブリッジは、周囲の歯に大きな負担がかかる。

 

インプラント、ブリッジ共にメンテナンスは重要である。

 

インプラントの治療期間は約半年~1年。

→ブリッジの治療期間は、3~4週間。

 

インプラントは基本的に全て自費診療。

→ブリッジは、保険診療で行うこともできる。

 

 

インプラントとブリッジの治療方法について、様々な視点から比較してみました。

どちらも優れた治療法であり、それと同時に、どちらにもメリット・デメリットが存在します。

 

どの治療法を選択するのか、御自身のお口の中の状態とあわせて、考えてみて下さい。

次回は、どのような方に、どちらの治療法が適しているのかを見ていきたいと思います。

 

わからないことや、聞きたいことなどございましたら、一度相談にいらしてください。

御自身が納得して治療を受けていただけることができるよう、お手伝いしていきます。

 

予防により、結果的に虫歯や歯周病の治療よりも安く済む!?

2024年3月22日

予防の重要性を、聞きなれない切り口からお話していきます。

是非参考にして下さい。

 

◯目次

・虫歯、歯周病と予防

 ◆自宅での予防とは

 ◆歯科医院での予防とは

・予防の重要性

・海外の状況

・安く済みます

・予防のデメリット

・まとめ

 

◯虫歯、歯周病と予防

虫歯と歯周病は、ともに口内の細菌が原因で起こる病気です。虫歯は歯そのものに穴が開く病気です。歯周病は歯肉や骨に炎症を起こす病気で、虫歯の原因菌とは別の種類の細菌が原因です。

虫歯や歯周病を予防するためには、以下の3つの対策が重要です。

①プラークを取り除き、虫歯、歯周病の原因菌を少なくする事。

プラークは歯垢とも呼ばれ、細菌や食べかすなどが歯の表面に付着したものです。プラーク中の細菌が糖分を分解して酸を作り、歯を溶かしたり、歯周病を引き起こしたりします。プラークを取り除くためには、毎日のブラッシングが基本です。

②砂糖を含む食品の摂取頻度を制限する事。

砂糖の糖分は虫歯菌の餌になる為、摂りすぎると虫歯のリスクが高まります。特に食後や間食時に甘いものを食べると、口内の酸性度が上昇し、虫歯が進行し易くなります。

糖分を摂る回数を減らすためには、食事や間食の時間を決めて守ることが大切です。また、甘いものを食べた後はすぐに水を飲んだり、ガムを噛んだりして口内を中和させることも効果的です。

③再石灰化を促し、歯の質を強くする事。

再石灰化とは、酸によって溶け出したミネラル成分が再び歯に戻る現象です。再石灰化が促進されると、歯質が強化されて虫歯に対する抵抗力が高まります。

再石灰化を促すためには、フッ化物応用やシーラントなどが有効です。フッ化物は歯の表面に塗布することで、歯質を強くする効果があります。シーラントは歯の溝に樹脂を流し込むことで、プラークや細菌の侵入を防ぐ効果があります。

 

◆自宅での予防とは

歯科での予防とは、歯科医師や歯科衛生士からのアドバイスをもとに自分で行うセルフケアと、歯科医院で行うプロケアの両方を指します。

自宅での予防、自宅でのセルフケアには、以下のような方法があります。

①歯磨き:食後30分以内に行います。歯の表面や、歯と歯茎の隙間を丁寧に磨きます。力を入れすぎないように注意します。舌専用ブラシや口腔洗浄液なども効果的です。

②食事・生活習慣:栄養バランスのよい食事で免疫力を高めます。間食は控えるか、食べた後は水を飲んだりガムを噛んだりして口内を中和させます。喫煙は避けます。

③噛み合わせ:うつぶせ寝や頬杖などのクセは、歯並びを乱す原因になります。夜間の歯ぎしりや日中の食いしばりにも注意しましょう。

 

◆歯科医院での予防とは

歯科医院での予防、歯科医院でのプロケアには、以下のような処置があります。

①検査・診断:レントゲンや唾液検査などで、口内の状態をチェックします。虫歯や歯周病の有無や進行度、口内細菌数などを確認します。

 

②スケーリング:スケーラーという器具を使って、歯石を除去します。歯石は歯周病の原因となるため、定期的に取り除くことが大切です。

 

PMTC:回転式のブラシやラバーカップなどの器具と、フッ化物入り研磨剤や吸着剤を使って、歯の表面を磨き上げます。歯垢や着色汚れを取り除きます。

 

④フッ素塗布:歯の表面に高濃度のフッ素を塗布します。フッ素には、再石灰化の促進・歯質強化・菌の酸生産抑制などの効果があります。

 

⑤シーラント:奥歯の溝や歯の側面・裏面などをフッ素入りのレジンで塞いで、歯垢がたまりにくくします。虫歯予防に有効です。

定期的に検診を受けてプロケアを受けることと、毎日のセルフケアを怠らないことが、歯の健康を保つために重要です。歯科医師や歯科衛生士からのアドバイスを参考にして、自分に合った予防法を見つけましょう。

 

◯予防の重要性

歯科での予防の重要性は、以下のような点にあります。

①歯の健康を維持する

歯は一度失うと二度と元には戻りません。自分の歯を多く残すことで、咀嚼能力や発音能力を保ち、食事や会話を楽しむことができます。予防に定期的に通うことで、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療が可能になり、歯を削る量や抜く本数を減らすことができます。予防では、歯石除去やPMTCなどの処置によって、歯垢や着色汚れを除去し、歯の美しさや清潔さを保つことができます。

 

②全身の健康を維持する

歯や口腔の健康は全身の健康にも影響します。虫歯や歯周病は口腔内だけでなく、心臓病や糖尿病などの全身性疾患の発症や悪化にも関係しています。

歯周病の原因菌は血液に入り込んで動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。また、誤嚥性肺炎や認知症とも関連しています。予防では、口腔内細菌数を減らし、免疫力を高めることで、全身の健康を守ることができます。

 

◯海外の状況

海外では、歯科の予防への意識や実践はどのような状況なのでしょうか。ここでは、日本と比較して予防歯科が先進的とされるアメリカとドイツについて紹介します。

アメリカでは、歯科医院で定期的に検診やクリーニングを受けることが一般的です。ある調査では、直近一年間に歯の健康診断を目的として歯科医を受診した回数を聞いたところ、アメリカでは「2回」と回答した人が最も多く、日本では「直近一年間では受けていない」と回答した人が最も多いという結果でした。

ドイツでは、保険制度があり、保険者は半年毎に無料で検診を受けることができます。検診では、虫歯や歯周病だけでなく、口腔がんや咬合異常などもチェックされます。また、保険者は3年間連続して検診を受けると、治療費用の自己負担率が減額される制度があります。このように、ドイツでは予防歯科が国策として推進されています。

海外の状況をお話しました。日本でも予防歯科への関心は高まってきていますが、改善の余地があると言えるでしょう。自分の歯を大切にするためにも、定期的に検診を受けてプロケアを受けることと、毎日のセルフケアを怠らないことが重要です。

 

◯予防のメリット

予防歯科の経済的なメリットは、以下のような点にあります。

 

①治療費や時間の節約

予防歯科に定期的に通うことで、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療が可能になり、歯を削る量や抜く本数を減らすことができます。

虫歯や歯周病は放置すると重篤化し、治療費や時間がかかります。また、入れ歯やインプラントなどの補綴物も高額です。

予防歯科では、定期的な検診や処置によって、虫歯や歯周病の発生・進行を抑えることができます。これにより、治療費や時間の節約になります。

 

②全身性疾患の予防

歯や口腔の健康は全身の健康にも影響します。虫歯や歯周病は口腔内だけでなく、心臓病や糖尿病などの全身性疾患の発症や悪化にも関係しています。歯周病菌は血液に入り込んで動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。また、誤嚥性肺炎や認知症とも関連しています。予防歯科では、口腔内細菌数を減らし、免疫力を高めることで、全身の健康を守ることができます。これにより、将来的な医療費の負担も軽減することができます。

 

③生活の質の向上

歯は一度失うと二度と元には戻りません。自分の歯を多く残すことで、咀嚼能力や発音能力を保ち、食事や会話を楽しむことができます。歯が健康であれば、自信を持って笑顔になることができます。また、口臭や口内感染も防ぐことができます。歯石除去やPMTCによって、歯垢や着色汚れを除去し、歯の美しさや清潔さを保つことができます。

 

◯予防のデメリット

しかし、歯科での予防にはデメリットもあります。

費用や時間がかかる事です。歯科での予防には定期的に歯科医院に通う必要があります。

検診や処置には費用が発生するため、経済的な負担になる可能性があります。

また、歯科医院に通うためには時間や交通費もかかります。

仕事や家事などで忙しい方にとっては、通院することが難しい場合もあるでしょう。

 

◯まとめ

定期的に検診を受けてプロケアを受けることと、毎日のセルフケアを怠らないことが、生涯にわたる歯の健康を保つために重要です。快適な毎日を送れるよう今回書かせて頂きました。

 

抜歯シリーズ第3弾~みんなのお悩み、下の親知らず~

2024年3月19日

前回、前々回に引き続き抜歯シリーズとして、難しい抜歯について解説しました。

さて、今回は、抜歯シリーズ第3弾。

 

若い人を中心に、近年の日本人に多い、下顎の親知らずについてお話していきたいと思います。

第2弾でも書きましたが、親知らずの悩みを抱えている方は非常に多くいます。

 

特に、下の親知らずは、近年の日本人は顎の大きさが小さくなってきているため、

真っすぐ生えてくることが少なくなってきました。

 

横から生えてくる親知らずは、様々な悪影響を及ぼします。

 

しかし、皆さんがイメージするように厄介な処置になることが多いです。

これを読んで、少しでもそんな不安が解消できればいいなと思います。

少し怖いこともお話しますが、ご勘弁ください。。。

 

目次

① 下顎の親知らずの抜歯事情

  ◆清掃困難になっている場合

  ◆痛みや腫れを繰り返している

  ◆ 手前の歯に悪影響を与えている場合

  ◆矯正治療上必要な場合

 

②横から生えた親知らずを放置しておくと?

  ◆腫れや痛みを繰り返す

  ◆ 手前の歯をダメにする

  ◆顎の骨の炎症が生じる

 

③親知らずを抜く方法は?

  ◆局所麻酔

  ◆歯茎の切開

  ◆歯の頭の周りの骨の削合

  ◆歯の頭を分割

  ◆根っこの摘出

  ◆縫合

 

④すぐに歯科医院に連絡したほうがいい偶発症

  ◆血が止まらない

  ◆抜歯後3時間程度経過しても、顎や舌がしびれている

  ◆高熱や飲み込んだ時の痛みがある

 

⑤まとめ

 

①下顎の親知らずの抜歯事情

第2弾でも解説しましたが、親知らずは約18歳ごろに生えてくる歯です。上下左右に合計4本あり、歯列の最も後方に生えてくる特徴があります。近年、日本人は様々な原因のため、顎の大きさが小さくなってきているとされています。それに伴い、最後に生えてくる親知らずに必要なスペースが足りず、まっすぐ生えてこないという方が多くなっているのが現状です。それでは、すべての親知らずを抜歯しないといけないのでしょうか?いいえ。そんなことはありません。具体的に見てみましょう。

 

◆清掃困難になっている場合

まずは、自分でのお掃除が難しくなっている時です。親知らずが横から生えていると歯と歯の間が他の部分と異なります。このため、ものが詰まりやすかったり、糸ようじを使ってもなかなか汚れが取れなかったりします。汚れがたまり続けるとどうなるか分かりますよね?このような時には抜いてあげた方が良いかもしれません。

 

 

◆痛みや腫れを繰り返している

次に、横から生えている親知らずの周りの歯茎が腫れたり、痛くなったりすることを繰り返している場合です。これは、⑴と関連します。汚れが長時間ついたままだと、炎症反応が生じます。このような不快な現象を起こしている場合、原因除去をするために抜いてあげた方がいい場合があります。

 

◆手前の歯に悪影響を与えている場合

手前の歯(12歳臼歯)に悪影響を及ぼすことも少なくありません。具体的には、根っこの部分が虫歯になったり、最悪根っこを溶かしたりすることもあります。悪くなった歯の治療をすることはもちろんですが、原因となっている親知らずを取り除いてあげないと同じことを繰り返すことになるかもしれません。

 

◆矯正治療上必要な場合

矯正治療で歯を動かすために親知らずがあると動かしにくくなります。このため、矯正治療を行う場合、親知らずの抜歯を行うことを必須にしている先生もいらっしゃいます。

 

この4つの場合に下の親知らずの抜歯が必要になることがあります。すべての親知らずについて抜歯をしなければならないというわけではありません。自分の親知らずが気になる方は是非一度歯医者さんにご相談ください。

 

②横から生えた親知らずを放置しておくと?

さて、親知らずを抜きたくないと考える方もいらっしゃると思います。もちろんその選択も悪いわけではありません。いろいろと考えてご自身が抜かないという選択をしたのならば、それが患者さんにとってはベストな選択です。したがって、それを否定することはできません。ただし、横に生えている親知らずを放置していると恐ろしいことも起こりえます。ここではどんなことが起こるのかを解説します。

 

◆腫れや痛みを繰り返す

溜まった汚れからばい菌感染を起こしてしまい、そのたびに痛みや歯茎の腫れを繰り返すことになります。これらの感染が歯の周囲だけにとどまっていればいいのですが、最悪、頬っぺたや、顎の下に膿の塊を作ってしまい、出口を求めて皮膚を突き破ったり、喉の周囲まで溜まってしまい、気道が圧迫され窒息してしまうこともあります。これは大げさに解説しているわけではなく、全国の口腔外科病院では比較的よくみられることです。

 

 

◆手前の歯をダメにする

手前の歯(12歳臼歯)が虫歯になったり、根っこが溶けたりする原因になります。こうなると当然治療をしなければなりません。虫歯の治療をすると、詰め物の周りから虫歯が広がりやすくなります。また、神経を取ってしまうと、歯の寿命が短くなってしまいます。根っこが吸収してしまったら、最悪その歯を抜かなければなりません。

 

◆顎の骨の炎症が生じる

歯は顎の骨の中に埋まっています。細菌感染が歯茎を超えて顎の骨にまで及んだ状態を骨炎(こつえん)または骨髄炎(骨髄炎)といいます。この状態は非常に難治性です。顎の骨を腐らせてしまうこともあります。感染の範囲によっては顎の骨を切り取らないといけない場合もあるので注意が必要です。

 

このように、たかが親知らずと思っていても、侮るなかれ。親知らずが原因で生じる病気は厄介なものが多く、大掛かりな手術が必要になったり、入院が必要になることも少なくありません。そんなリスクを持っているのが、横から生えてきている親知らずです。

 

③親知らずを抜く方法は?

それでは具体的に親知らずを抜く方法を解説します。皆さんのイメージする治療通り、親知らずの抜歯は患者さんへのダメージが大きくなる傾向にあります。どんな手順で行われるか見ていきましょう。ここでは、横から生えている親知らずの一般的な抜歯方法を解説します。

 

◆局所麻酔

まずは、局所麻酔です。歯医者さんによって麻酔方法は異なりますが、歯の周りにのみ麻酔をすることが多いです。そのほかに、伝達麻酔といって顎半分が麻酔される方法をとる先生もいます。どちらも適切な麻酔方法ですので、そこはご安心ください。

 

◆歯茎の切開

麻酔が効いているのを確認したら、次は歯茎の切開です。歯を完全に見えるようにするために歯茎を切る必要があります。麻酔がしっかりと効いているので痛みは感じません。

 

◆歯の頭の周りの骨の削合

歯茎を切ってめくりあげると、歯の頭は骨の中に埋まっているのが見て取れます。骨の中に完全に埋まっている状態では当然取れません。ですので、歯の周りの骨を削り、歯を視認できる状態にする必要があります。ここでも、麻酔がしっかり効いているので痛みはほとんどありません。

 

◆歯の頭を分割

横から生えている親知らずでは、歯を2つ以上のパーツに分けて取り除くのが一般的な方法です。このため、歯を根っこと頭とに分ける必要があります。歯を削る機械を使って分割していきますが、神経の近くを削るので、痛みが出る方もいます。そんなときは遠慮なく、訴えるようにしましょう。きっと麻酔を追加してくれます。

 

<h3>根っこの摘出</h3>

さて、歯の頭を割って取れたら、残った根っこを取り出すのみ。ここまでくれば、ほぼ終了しているようなものですが、根っこの状態によってはさらにパーツを分ける必要があることもあります。

 

縫合

全てを取り切ったら最後は傷口を縫い合わせておしまいです。

 

このように、横から生えている親知らずを抜くには一筋縄ではいきません。歯の生え方や歯の大きさ・形は人によって異なるため、厄介な処置になりがちです。少し怖いイメージを持ったかもしれませんが、麻酔がしっかり効いている状態で行えば、痛みを感じることはほとんどありませんのでご安心下さい。

 

④すぐに歯科医院に連絡したほうがいい偶発症

さて親知らずの抜歯後すぐに歯医者さんに連絡したほうがいい偶発症もあります。ここでは、家に帰った後、どんな時に病院に連絡をいれたり、受診した方がよいかの目安となる症状をご紹介します。

 

◆血が止まらない

親知らずの抜歯は切開や骨を削ります。これにより、出血が生じます。通常は止血を確認したのち、帰宅になりますが、家に帰っても沸くような出血がある場合にはすぐに連絡をしましょう。

 

◆抜歯後3時間程度経過しても、顎や舌がしびれている

親知らずの周りには大きな神経が2本通っています。下唇の周りの感覚を伝える神経と舌の感覚を伝える神経です。歯を抜く時にこれらの神経を傷つけてしまうこともあります。通常麻酔薬は2~3時間程度で切れてきますので、それ以上経過しても下唇の周りや舌がしびれている場合にもすぐに連絡しましょう。

 

◆高熱や飲み込んだ時の痛みがある

抜歯後は炎症反応が生じるものです。しかし、その炎症がより広範囲に生じることもあります。そのような場合、39℃程度の高熱や、飲み込んだ時の痛みが生じることが特徴です。これらの症状があれば、早急に対応しなければなりませんので、すぐに連絡しましょう。

 

ここでは3つほど紹介しましたが、その他にも注意が必要な偶発症があります。歯を抜く前に歯医者さんで説明をしっかりと受けるようにしましょう。

 

⑤まとめ

今回は下の親知らずの怖いお話をしました。親知らずの抜歯では大学病院などの専門機関を紹介されることも少なくありません。より安全に抜歯をするためにも必要なことです。自分の親知らずがどうか気になる人は、是非一度ご相談ください。

 

抜歯シリーズ第2弾~上の親知らず~

2024年3月15日

抜歯をメインテーマに扱っています。

上下親知らずの親知らずも今後書く予定です。

 

全3部作の第2部です。

上顎親知らずを抜くときの方法や注意点をまとめています。

ネットの強い若い人たちの一番の悩みの親知らずについてです。

 

 

さて、前回、抜歯シリーズの第1弾として、難しい抜歯について解説しました。

今回は、その第2弾です。

 

特に若い女性のみなさんの悩みの種の「親知らず」に焦点をあてて、解説したいと思います。

 

親知らずも上下あり、それぞれ、特徴が異なるので、

今回は上の親知らずにフォーカスしていきたいと思います。

 

これを読んで、皆さんの不安の解消や、歯医者さんに受診するきっかけにしてほしいと思います。

ちなみに、下の親知らずについては次回の第3弾で詳しくお話します。

 

目次

①みんなは生えている?~親知らず~

 ◆親知らずって?
 ◆どんな歯を抜かないといけない?

 

親知らずの抜歯方法

 ◆見えている親知らず

 ◆骨の中に埋まっている親知らず

 

③上の親知らずの抜歯後の注意点

 ◆上顎洞への穿孔(せんこう)

 ◆鼻出血

 

④まとめ

 

◯みんなは生えている?~親知らず~

皆さんの中には、親知らずが生えている人も、生えていない人もいると思います。ではまずは、親知らずって何なのかから理解していきましょう。そして、皆さんが忌み嫌う親知らずですが、実は、すべての親知らずを抜かないといけないわけではありません。ではどのような場合に抜いてしまった方がいいのでしょうか。

 

 

◆親知らずって?

「親知らず」とは第3大臼歯のことを指します。大臼歯で最もイメージしやすいのは「6歳臼歯」や「12歳臼歯」だと思います。この12歳臼歯のさらに奥にある歯が「親知らず」です。親知らずは「智歯」と呼ばれることがあります。智歯は通常、18歳ごろに生えてくる歯で、高校生くらいから、気になる方も多いのではないでしょうか。

「親知らず」は本来、他の歯と同じようにまっすぐ素直に生えてくるものです。しかし、近年の日本人の顎の骨が小さくなっているなどの影響で、まっすぐ生えてこない場合もあり、様々な悪影響を及ぼすこともあります。

 

◆どんな歯を抜かないといけない?

 「親知らず」と聞くと、「抜かないといけない」というイメージが強くあると思いますが、実際はそうではありません。まっすぐ生え、しっかりと機能している親知らずは本来は抜くべきではありません。では、どのような親知らずを抜くべきなのでしょうか。一言でいうとそれは「他の歯や骨に悪影響を及ぼす可能性のある歯」です。これ以外に矯正治療のために必要な場合もあります。具体的には、斜めや横を向いており、前の歯を押している場合や、痛みや腫れたことがあるもの、家でのケアがしにくい場合などです。

実際の歯医者さんでは、皆さんのお話を聞き、レントゲンやお口の中の診察を十分に行ったうえで、歯科医師が判断します。

このように、親知らずは抜かなくてもいい場合もあるので、まずは、歯医者さんに気軽に相談してみるといいかもしれません。

 

 

◯親知らずの抜歯方法

さて、親知らずを抜くことになった場合、どのような方法で歯を抜くことになるのでしょう。それは、歯が見えているかどうかで異なります。歯が少ししか見えておらず、大半が骨の中に入っている場合、簡単に歯を抜くことはできなくなってしまいます。それでは具体的に解説していきましょう。

 

◆見えている親知らず

歯が見えている場合、皆さんがイメージするような親知らずの抜歯になることは少ないです。慣れている歯医者さんであれば、非常に簡単に抜くことが多いです。時間にすると大体10分ほどでしょうか。

歯に力を加える器具を使って簡単に取り出すことができます。なので、上の親知らずの歯の頭が見えている場合は、比較的容易ですので、ご安心ください。

 

骨の中に埋まっている親知らず

さて、問題はこちらです。骨の中に埋まっている場合はどうでしょう。抜歯の基本として「歯の頭が見えていること」です。なので、歯が見える状態にする必要があります。つまり、歯茎を切って、骨を削り歯の頭が見えるようにする必要があります。一般的な親知らずの抜歯のイメージに近くなりますね。皆さんが怖くなるのも無理ありませんね。ですが安心してください。歯の頭が見えれば、比較的容易に歯を抜くことができるのが、上の親知らずの特徴です。また、麻酔をしっかりと効かせながら行うので、痛いということはほとんどありません。

 

親知らずの抜歯は簡単なものから難しいものまで、バリエーションが豊富です。世間では、怖いイメージが先行していますが、すべてがそうなるわけではありません。自分の親知らずを抜く必要があるのか、どれくらいの難易度になるのかをまずは信頼できる歯医者さんに相談してみましょう。

 

◯上の親知らずの抜歯後の注意点

上の親知らずを抜いた後にも注意するべきことがあります。抜歯後の腫れや痛みなどの一般的な注意点もありますが、ここでは、上の親知らずに特徴的な注意点について解説します。

 

◆上顎洞への穿孔(せんこう)

一つ目が上顎洞への穿孔です。すべての人は上顎洞という副鼻腔を持っています。上の大臼歯などの奥歯は人の構造上、根っこの先端がこの上顎洞と近い関係があり、中には、根っこの先端がこの上顎洞に貫通している場合もあります。このため、抜歯した拍子に、上顎洞に小さな穴があいてしまうことがあります。これが上顎洞への穿孔です。これを放置してしまうと、お水を飲んだ時に鼻からこぼれるということが起こります。ですがご安心ください。もしその兆候が確認された場合、処置を追加して穴をふさぐこともできます。

 

◆鼻出血

これは⑴の理由と似ています。先ほど述べた上顎洞は最終的に鼻腔と交通しています。歯を抜くと少なからず出血するものです。この出血が原因で、上顎洞に血がたまり、鼻をかんだ時に血がにじむということが起こりえます。これも安心してください。出血といっても、大量出血するほどのものではありませんし、基本的に数時間程度で止血されるものです。

 

このように、一般的に気を付けるべきこと以外に、上の親知らずを抜いた場合に特有の注意点があります。これらが生じても基本的には対処することは可能なので、ご安心ください。

 

◯まとめ

さて、今回は上の親知らずの抜歯について詳しく見ていきました。親知らずの抜歯と言えば、怖いイメージがありますが、すべてがそうなるわけではありません。また、すべての親知らずを抜かないといけないというわけでもありません。自分の親知らずがどうなのかはお近くの歯医者さんに相談してみましょう。

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