カラオケでお口だけでなく、全身の健康にもつながる!
2024年12月28日
はじめに
コロナ禍でカラオケのあり方が変わりました。最近、コロナが少し落ち着いてきて、カラオケ店の客足も戻り始めたとのことです。以前からカラオケが健康的な事は知られていましたが、最近また、健康カラオケについての報道を見聞きするようになりました。
目次
◯健康カラオケとは
◯歌う事でストレスの軽減
◯歌う事で健康に
◯まとめ
健康カラオケとは
健康カラオケとは、カラオケを歌うことで心身の健康を促進する活動のことです。カラオケは、ストレス解消や運動不足の解消、認知症予防や高血圧予防など、様々な健康効果が期待できます。
①歌う事でストレスの軽減
私たちは日々さまざまなストレスにさらされています。仕事や家庭、人間関係など、ストレスの原因は人それぞれですが、ストレスが溜まりすぎると心身の健康に悪影響を及ぼします。ストレスは不眠やイライラ、頭痛や胃痛などの身体的な症状だけでなく、うつ病や心臓病などの重大な疾患のリスクも高めると言われています。
そこで、ストレスを解消するためにおすすめなのが、歌うことです。歌うことは気分を明るくし、リラックス効果や免疫力アップなどの健康効果も期待できます。カラオケやシャワーの中で歌うだけでも効果がありますが、より効果的に歌うためには、以下のポイントに注意してみてください。
⑴ 大きな声で歌う
大きな声で歌うことは、ストレス発散に最適です。大きな声で歌うことで、気持ちを吐き出すことができます。また、大きな声で歌うことは筋肉の緊張をほぐし、ストレスを受けると分泌量が増えるストレスホルモンで知られているコルチゾールを低下させます。コルチゾールは血圧や血糖値を上昇させる作用がありますが、大きな声で歌うことでこれらの値も正常化する可能性があります。また歌う事により、分泌型IgAなどのストレスマーカーが減少します。
⑵ 腹式呼吸で歌う
腹式呼吸で歌うことは、体幹を鍛える効果があります。体幹を鍛えることで、姿勢が良くなり疲れにくい体を作ることができます。また、腹式呼吸は自律神経を整える効果もあります。自律神経は交感神経と副交感神経のバランスを調整する神経系ですが、交感神経は緊張や興奮を引き起こし、副交感神経はリラックスや回復を促します。ストレスがかかると交感神経が優位になりますが、腹式呼吸で歌うことで副交感神経に切り替わります。副交感神経に切り替わることで心拍数や血圧が下がり、リラックス効果が得られます。
⑶ 表情豊かに歌う
表情豊かに歌うことは、表情筋を動かす効果があります。表情筋を動かすことで、顔の血行が良くなり、小顔効果や美肌効果が期待できます。また、表情筋を動かすことは脳にも良い影響を与えます。表情筋は脳の高次機能と密接に関係しており、表情筋を動かすことで脳の活性化や記憶力の向上が期待できます。さらに、笑顔や楽しい表情を作ることで、気分を高揚させる脳内物質の分泌が促されます。
⑷ 懐かしい曲や元気が出る曲を歌う
懐かしい曲や元気が出る曲を歌うことは、心理的な効果があります。懐かしい曲を歌うことで、過去の良い思い出や感情を呼び起こすことができます。これはポジティブな気分になる効果があります。また、元気が出る曲を歌うことで、自分に勇気やパワーを与えることができます。これはモチベーションを高める効果があります。
⑸ 人前で歌う
人前で歌うことは、自信やコミュニケーション能力を高める効果があります。人前で歌うことは緊張感や恥ずかしさを伴いますが、それを乗り越えることで自己肯定感や自尊心が向上します。また、人前で歌うことは他者との交流や共感を生み出すことができます。これは社会的な支えや属する感覚を得る効果があります。
②歌う事で健康に
歌を歌うことで、脳の活性化やストレス解消、免疫力アップやダイエットなど、様々な健康効果が期待できます。以下に、歌うことで健康になる理由を紹介します。
脳の活性化
歌うことは、脳の様々な部位を刺激し、脳の働きをよくします。歌うときには、聴覚や視覚、運動や感情などの脳の高次機能が関与します。特に、新しい歌詞やメロディーを覚えることは、記憶力や集中力を高める効果があります。また、音楽に合わせてリズム感や表現力を発揮することは、創造性や想像力を豊かにする効果があります。さらに、歌を通して感情を表現したり共感したりすることは、コミュニケーション能力や社会性を高める効果があります。
免疫力向上
歌うことは、免疫力を高める効果があります。免疫力とは、体内に侵入したウイルスや細菌などの病原体に対抗する能力のことです。免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。しかし、歌うことで免疫グロブリンAという抗体が増加し、NK細胞という免疫細胞が活性化します。これらの免疫成分は病原体を攻撃・排除する働きがあります。また、ストレス解消によっても免疫力が向上します。
ダイエット
歌うことは、ダイエットにも効果的です。歌うことは、運動と同じくらいのカロリーを消費することができます。特に、大きな声で歌うことや踊りながら歌うことは、有酸素運動になります。有酸素運動とは、酸素を多く使って体内の脂肪を燃焼させる運動のことです。有酸素運動は、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病の予防や改善にも効果があります。
呼吸機能の改善
歌うことは、呼吸機能を改善する効果があります。呼吸機能とは、酸素を体内に取り入れて二酸化炭素を体外に排出する能力のことです。呼吸機能が低下すると、息切れや動悸、倦怠感などの不快な症状が現れます。しかし、歌うことで腹式呼吸や腹式発声を意識することができます。腹式呼吸とは、お腹をふくらませて息を吸い込み、お腹をへこませて息を吐き出す呼吸法のことです。腹式発声とは、腹式呼吸で得た息を使って声を出す発声法のことです。これらの方法は、肺や横隔膜、喉などの呼吸器官の働きを高める効果があります。
嚥下機能の向上
嚥下機能とは、食べ物や飲み物を口から食道に送り込む機能のことです。嚥下機能が低下すると、誤嚥(気管に異物が入ること)や肺炎のリスクが高まります。高齢者の死因の第一位は肺炎ですから、嚥下機能の維持・改善は、とても重要です。
- ▶︎口周りを整える
歌うことで、舌や口輪筋などの口の周りの筋肉が鍛えられます。これにより、食べ物をとらえて飲み込む力が強化されます。
- ▶︎唾液を増やす
歌うことで、唾液分泌量が増加します。唾液には抗菌作用や消化作用がありますが、それだけでなく、口の中を潤して食べ物を滑らかに飲み込む役割もあります。
- ▶︎協調性を上げる
歌うことで、呼吸筋や横隔膜などの呼吸器官の働きが高まります。これにより、呼吸と嚥下の協調性が向上し、誤嚥を防ぐ効果があります。
まとめ
健康カラオケは、心身の健康に多くのメリットをもたらします。健康カラオケは誰でも気軽に参加できる活動です。自治体や地域の集会室、民間のカラオケホールやイベントルームなどで行われています。ぜひ一度試してみてください。健康カラオケで元気になりましょう。
訪問歯科治療における歯科医師と歯科衛生士の役割分担
2024年12月23日
訪問歯科治療の役割と重要性
昨今、高齢化社会の進展や寝たきり患者数の増加により、訪問歯科治療のニーズがますます高まっています。訪問歯科治療は、歯科医師や歯科衛生士が患者さんの自宅や施設に訪問し、歯科治療を行うサービスです。チーム医療が重要となる訪問歯科治療において、歯科医師と歯科衛生士はそれぞれの専門性を活かして役割分担をすることが重要になってきます。詳細にお話させて頂きますので、是非参考にしてください。
目次
- 訪問歯科治療における歯科医師の役割
- ◆歯科診断と治療計画の作成
- ◆専門的な治療
- ◆緊急時の対応
- ◆他医療機関との連携
- ◆倫理的な配慮
- ◆継続的なケア
- ◆専門知識の向上
- ◆社会貢献
- 訪問歯科治療における歯科衛生士の役割
- ◆口腔ケア
- ◆予防指導
- ◆治療の補助
- ◆チームワーク
- まとめ
訪問歯科治療における歯科医師の役割
訪問歯科治療における歯科医師の役割は、たくさんございますが、ここではピックアップして説明させていただきます。
◆歯科診断と治療計画の作成
▶︎詳細な問診
患者さん自身の訴えだけではなく、ご家族、介護者からの情報も収集し、より詳細な問診を行います。現在の口腔状態だけでなく、過去の歯科治療歴、全身疾患、服薬状況なども把握します。患者さんの生活環境や食生活、ADL(日常生活動作)なども考慮します。
▶︎徹底した口腔検査
視診、触診、打診、探針などを行い、口腔内の状態を詳細に検査します。虫歯、歯周病、義歯の状態、粘膜の状態、顎関節の状態などを記録します。必要に応じて、レントゲン撮影や口腔内写真撮影を行います。
▶︎診断と治療計画の作成
患者さんの全身状態、生活状況、希望などを考慮し、適切な診断を行います。治療の必要性と優先順位を判断し、患者さんにとって最適な治療計画を作成します。治療目標、治療期間、治療費用などを説明します。
◆専門的な治療
▶︎幅広い治療に対応
抜歯、虫歯治療、歯周病治療、義歯治療、根管治療、インプラント治療など、幅広い治療に対応します。患者さんの身体的、精神的な負担を軽減するために、できるだけ痛みの少ない治療を行います。最新の医療機器や治療技術を導入し、質の高い治療を提供します。
▶︎患者さんへの配慮
治療前に患者さんの不安や疑問を丁寧に解消します。治療中は患者さんの体調に常に気を配り、必要に応じて休憩を挟みます。治療後は患者さんに治療内容を分かりやすく説明します。
◆緊急時の対応
▶︎迅速かつ的確な対応
患者さんの体調が悪化したり、治療中に緊急事態が発生した場合、迅速かつ的確に対応します。必要に応じて、他の医療機関と連携します。
▶︎緊急時の体制整備
緊急時の対応マニュアルを作成し、スタッフ間で共有しています。定期的に緊急時対応訓練を実施しています。
◆他医療機関との連携
▶︎患者さんにとって最適な医療を提供
他の医療機関と連携し、情報共有を行っています。患者さんの全身状態を把握し、歯科治療と全身管理を一体的に行っています。他の医療機関のスタッフと定期的に交流し、情報交換を行っています。
▶︎連携体制の構築
患者さんの同意を得て、医療機関間の情報共有の仕組みを構築しています。患者さんやご家族への説明を統一し、混乱を招かないようにしています。定期的に連携会議を開催し、患者の治療状況について話し合っています。
▶︎患者さんとの信頼関係を築く
患者さんのプライバシーと尊厳を尊重します。患者さんへの説明は分かりやすく丁寧に行うよう努めています。患者さんの意見を尊重し、治療方針を決定します。
▶︎インフォームド・コンセント
治療内容、治療のリスク、治療の費用などを患者さんに十分に説明し、同意を得るように努めています。患者さんが治療内容を理解し、納得した上で治療を受けるようにしています。
◆継続的なケア
▶︎患者さんの口腔内健康を維持する
定期的に患者さんの口腔状態を診査し、必要に応じて治療を行います。患者さんやご家族に口腔ケア指導を行います。患者さんの口腔内健康を維持するために必要なサポートを行います。
▶︎患者さんとの長期的な関係構築
患者さんとの長期的な関係を築き、信頼関係をつくってゆきます。患者さんの生活の変化やニーズに柔軟に対応します。患者さんの口腔内健康を生涯にわたって守るよう努めています。
◆専門知識の向上
▶︎最新の知識と技術を習得
訪問歯科治療に関する最新の知識と技術を習得するよう努めています。各種研修会やセミナーに積極的に参加しています。専門書籍や論文を読み、知識を深めるようにしています。
▶︎チーム医療への貢献
歯科衛生士や介護スタッフと連携し、チーム医療を提供します。チーム医療に関する知識を習得しています。チーム内で情報共有を積極的に行っています。
◆社会貢献
▶︎地域のニーズに応える
地域の歯科医療資源の不足を補い、地域住民の口腔内健康の向上に貢献するよう努めています。介護施設や高齢者向け住宅と連携し、訪問歯科治療を提供します。地域の歯科医師会や行政機関と協力し、訪問歯科治療の普及を図っています。
▶︎訪問歯科治療の普及
訪問歯科治療の必要性や重要性を啓発しています。訪問歯科治療に関する講演会やイベントを開催しています。訪問歯科治療に関する情報発信を行っています。
訪問歯科治療における歯科衛生士の役割
歯科医師は歯医者でも先生とお会いすることもあるため、イメージがつきやすいかとおもいますが、歯科衛生士や歯科助手は区別がつきづらいと思います。
さらに訪問歯科となると良い系にややこしくなりますよね。。。今回は訪問歯科治療における歯科衛生士の役割についても説明させていただきます。
◆口腔ケア
▶︎専門的な口腔ケア
歯磨き、歯間ブラシ、デンタルフロスなどを使用して、患者さんの口腔内を清潔に保ちます。口腔内マッサージを行い、唾液の分泌を促進します。嚥下機能訓練を行い、誤嚥性肺炎の予防に貢献します。
▶︎患者さんへの口腔ケア指導
患者さんやご家族に、効果的な歯磨きの方法や口腔ケア用品の使い方を指導します。患者さんの口腔状態に合わせた、個別の口腔ケアプランを作成します。定期的に口腔ケア指導を行い、患者さんの口腔ケアの習慣化をサポートします。
◆予防指導
▶︎患者さんへの予防指導
食生活指導を行い、虫歯や歯周病の予防に貢献します。フッ素塗布を行い、虫歯の予防に貢献します。口腔ケアに関する正しい知識を患者さんに提供します。
▶︎患者さんへの生活習慣改善の提案
患者さんの生活習慣を改善することで、口腔内の健康を維持できるよう提案を行います。栄養摂取の重要性を伝えます。
◆治療の補助
▶︎治療の補助
抜歯、虫歯治療、歯周病治療、義歯治療など、治療を補助します。滅菌や消毒などの感染対策を行います。患者さんの不安や疑問に答え、安心して治療を受けられるようサポートします。
▶︎患者さんへの説明
治療内容や治療後の注意事項などを患者さんに分かりやすく説明します。
◆チームワーク
▶︎チーム医療への貢献
歯科医師や介護スタッフと連携し、チーム医療を提供します。チーム内で情報共有を積極的に行います。患者さん一人ひとりに最適な治療を提供するために、チーム全体で協力します。
▶︎チーム医療の重要性
訪問歯科治療は、歯科医師、歯科衛生士、介護スタッフなど、様々な職種が連携して行うチーム医療です。チーム医療によって、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供することができます。チーム医療の質を高めるためには、コミュニケーションと情報共有が重要です。
まとめ
訪問歯科治療は、歯科医師と歯科衛生士が連携して行うチーム医療です。それぞれの専門性を活かし、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供することが重要です。訪問歯科治療における歯科医師と歯科衛生士の役割分担について説明しました。それぞれの専門性を活かし、チームワークを強化することで、質の高い訪問歯科治療を提供することが出来ます。
機能的矯正装置を使った歯列矯正の利点
2024年12月15日
こんにちは 歯列矯正と聞くとどんなイメージが浮かびますか? 歯の表面につけたブラケットという金具とそこに通したワイヤーで歯並びを整えるマルチブラケット矯正でしょうか。それともマウスピースで歯並びを整えるマウスピース矯正でしょうか。実は、小児矯正ではこのようなイメージと全く異なる歯列矯正が行われています。それは機能的矯正装置を使った歯列矯正です。機能的矯正装置を使った歯列矯正には、一般的にイメージされる歯列矯正にはないさまざまなメリットがあります。今回は、小児矯正で行われる機能的矯正装置を使った歯列矯正についてお話しします。
機能的矯正装置とは
機能的矯正装置とは、機能的矯正力を使って歯列不正の改善を図る矯正装置です。
機能的矯正力について
機能的矯正力として利用するのは、下顎を動かす咀嚼筋や舌骨上筋などの筋肉の力です。機能的矯正装置は筋肉の力を使って歯並びを整えていく矯正装置なので、単に機能的矯正装置をつけただけでは、歯並びは変わることはありません。機能的矯正装置をつけて上下の歯を噛み合わせることで、咀嚼筋や舌の筋肉を使う、もしくは必要以上に使わないようになり、矯正力が生まれます。こうすることで、顎の骨格の成長発育を整えたり、歯を理想的な位置に動かしたりするのが機能的矯正装置の役割です。
普通の歯列矯正との違い
一般的に歯列矯正としてイメージされるマルチブラケット矯正やマウスピース矯正は、器械的矯正装置と言います。これらは、矯正装置自体に矯正力が備わっており、矯正装置が歯や顎の骨にダイレクトに矯正力を加えることで、歯並びを整えていきます。機能的矯正装置そのものには矯正力は備わっていませんので、この点で機能的矯正装置と普通の歯列矯正とでは、大きく性格が異なります。
機能的矯正装置のおすすめの開始年齢
機能的矯正装置はお子さんの成長発育を利用した矯正装置です。顎の骨の成長発育は、上顎と下顎で成長期に違いがあります。症状により適した年齢が異なりますから、気がついたら適切な時期を過ぎていたということも起こり得ます。早めにご相談になることをお勧めします。
機能的矯正装置の利点
機能的矯正装置を使った歯列矯正にはどのような利点があるのでしょうか。
後戻りを起こしにくい
後戻りとは、一度きれいに整えた歯の位置が、元の位置に戻ろうとする現象です。機能的矯正装置を使った歯列矯正は、乳歯から永久歯への歯の生え変わりの時期に行います。新しく生えてきた歯の位置を、理想的な位置に時間をかけて無理がないように整えていきます。身体にとっては、初めから歯がその位置にあったような感じになりますから、歯列矯正を終えた後につきものの後戻りを起こしにくいという利点が得られます。
歯並びに影響する癖も治る
歯並びに影響する癖はいろいろあります。お子さんの場合、指しゃぶりが代表的です。指しゃぶりをする癖のあるお子さんに機能的矯正装置をつけると、機能的矯正装置が邪魔で指しゃぶりをしたくてもできなくなります。これはあくまでも一例ですが、機能的矯正装置は歯並びに影響する癖を解消させる効果も期待できます。
骨格も同時に整えられる
機能的矯正装置には、歯並びだけでなく、顎の骨格の成長発育を適切な方向に誘導する効果もあります。このため、機能的矯正装置を使った歯列矯正を受けると、歯並びがきれいになると同時に、顎の骨格もきれいに整えられます。
虫歯のリスクが低い
機能的矯正装置は、取り外しタイプの矯正装置になります。食事のときはもちろん、歯磨きのときも外します。マルチブラケット矯正のように取り外しできない矯正装置ですと、歯磨きが難しいので虫歯のリスクが高くなります。機能的矯正装置なら、歯磨きを普通にしていただけるので、虫歯になるリスクが低く抑えられます。
永久歯の歯列矯正への好影響
機能的矯正装置で歯列矯正を受けると、永久歯の歯並びになったときに歯列矯正をしなくても済む可能性が生まれます。たとえ、何らかの歯列矯正をしなくてはならなくなったとしても、機能的矯正装置を使った歯列矯正を受けていれば歯列矯正の治療期間を短く抑えられます。
機能的矯正装置の難点
利点の多い機能的矯正装置ですが、難点もあります。
時間がかかる
機能的矯正装置を使った歯列矯正はご自身の筋力を矯正力として利用するため、矯正装置自体が矯正力を生み出す一般的な歯列矯正と比べると、矯正力が弱く、したがって時間がかかってしまいます。
1日の装着時間を守らないと効果が出ない
機能的矯正装置は、夜間を中心に装着する矯正装置です。夕食後や寝る前につけ忘れるなどして、装着時間が短くなると、効果が得られません。
無くしてしまう可能性がある
機能的矯正装置は、学校に行っている間は基本的に外してあり、ご自宅で保管してもらっています。外している時間が長いため、知らず知らずのうちに置いていた場所を忘れてしまい、無くしてしまうリスクがあります。
お子さん専用
機能的矯正装置を使った歯列矯正は、お子さんの成長発育を利用して歯並びや顎の骨格を整える治療です。成長期を過ぎた大人の方には使っても効果が得られません。あくまでもお子さん用に開発された矯正装置です。
まとめ
今回は、機能的矯正装置を使った歯列矯正についてお話ししました。機能的矯正装置を使った歯列矯正は、お子さんの筋肉の力を使った歯列矯正です。
- 後戻りを起こしにくい
- 歯並びに影響する癖も治る
- 骨格も同時に整えられる
- 虫歯のリスクが低い
- 永久歯の歯列矯正への好影響
などの利点が得られます。時間がかかるなどの難点もありますが、小児矯正の優れた選択肢のひとつであることがご理解いただけたのではないかと思います。機能的矯正装置を使った歯列矯正は、専門的な知識と経験が欠かせません。もし、ご興味をお持ちになった方は、当院に是非お越しください。
今話題のマウスピース矯正の特徴について
2024年12月13日
マウスピース矯正の特徴
マウスピース型の矯正装置を用いて行う矯正治療は他の矯正治療と比べてどんな特徴があるのでしょうか?
矯正治療中であることが目立ちにくい
マウスピース矯正の一番のメリットは矯正治療中の装置が目立ちにくいということです。現在、マウスピース矯正を選択される方のほとんどがこの理由からマウスピース矯正を選んでいます。歯科矯正治療は治療期間が長く、その間口元が不自由になるのが一番のデメリットでしたが、マウスピース矯正ではほぼ透明な医療用プラスチック製の装置を用いるため、装着していても他の人には着けていることがほとんど分かりません。人と接する機会の多い方や治療中の見た目を気にする方におすすめの治療法です。
食事の時に取り外せる
他の矯正治療装置と違って、マウスピース矯正は患者さんご自身で取り外しができます。痛みがあってどうしても休みたいときや食事による着色が心配な場合などでも取り外せるので治療中にお食事の制限が出ることがあまりないのが特徴です。治療中もお食事を楽しめるのがいいですよね。
自己管理をしなければならない
マウスピース矯正はマウスピースを装着することによって矯正力が働きます。食事の後マウスピースを外したままになっていたり、夜寝るときに外して寝てしまったりすると歯にかかる力がなくなり治療の期間が長引いてしまいます。歯が治療の順番通りに動いていかないと最悪の場合、はじめからやり直しになってしまいます。また、外出先で外したままマウスピースを紛失してしまうと料金が追加でかかることがあります。装置の交換もご自身のタイミングで行っていただくため、矯正治療に対してモチベーションがあり、自己管理ができる方におすすめの治療法です。
段階に合わせて交換していくため衛生的
矯正治療中は装置が口の中に入ったままになるので汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高い状態です。ワイヤー矯正では取り外しができないものが多く、治療期間が終わって取り外すと虫歯や歯周病が進んでいたということも少なくありません。マウスピース矯正では、治療の段階に合わせてマウスピースを交換していくため、衛生的で虫歯や歯周病のリスクを抑えられる可能性があります。
治療中も快適
マウスピース型の矯正装置は医療用プラスチックで作られているため、金属をほとんど使うことがありません。段階的に歯を動かしていくため、治療中の痛みが少なく過ごせます。マウスピースはなめらかなプラスチック製なので、金属の凹凸がある装置と比べて口唇や頬の粘膜などを傷つける心配がありません。治療中に装置が歯から外れてしまい緊急で受診する必要がないことも特徴の一つです。
通院回数が少ない
マウスピース矯正では、装置の交換も患者さんご自身で行っていただきます。そのため、装置の交換のたびに受診する必要はありません。留学やお引越しなどで、通院が途絶えてしまう場合も先生と相談しながら通院の頻度を決められるため、ライフスタイルに合わせて治療を行っていただけます。
治療の期間は?
歯を移動させる量が少ないケースでは、数ヶ月で終わることもあります。平均的な治療の期間は1〜2年と言われていますが、歯の移動が多い場合や複雑な動きが必要な場合は2年以上になることもあるようです。治療の期間は従来のワイヤー矯正とほとんど変わらないと言われています。
治療の対象年齢は?
マウスピース型の矯正装置は適応年齢が幅広く、6歳頃から使えるものもあります。治療の対象年齢は治療の目的や歯列の状態などによっても異なりますので、歯科医師の先生に相談してみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか?最近では、歯並びを気にする芸能人の方もマウスピース矯正を始めて話題になっていますね。従来の方法と比べると治療中も快適に生活でき、お食事の時に取り外せることが大きなメリットです。患者さんご自身で管理していただくことによって治療の成果が変わって来てしまいますので、歯科医師の先生と相談しながら治療方法を決めていくと良いでしょう。矯正治療は一度始めてしまうと途中で治療を止めることができないので、よく考えて始めましょう。笑顔に自信を持てるようになると、性格まで明るくなりますよ。
赤ちゃんの初めての歯が生えたら、何をするべき?
2024年12月4日
赤ちゃんがすくすく育つと、お口の中に小さな乳歯が出てきます。将来、綺麗で丈夫な歯に育てる為に、最初に生えてくる歯のお手入れが大事です。乳歯がいつ頃から生えてくるか、生えてくる前、生えてきてから何をするべきか?今回は、「初めての歯が生えてきたら、何をするべきか?」について、お話させて頂きます。是非、参考にして下さい。
|目次
- ◯赤ちゃんの初めての歯は、生後6ヶ月ごろから生え始めます
- ◆歯が生える順番
- ◆歯が生える前のお口のケア
- ◆歯が生え始めたら
- ◆一日の生活の中での歯磨きのタイミング
- ◯歯磨き時の注意・工夫
- ◆⑴生後6ヶ月~1歳頃
- ◆⑵1歳~2歳頃
- ◆⑶2歳~3歳頃
- ◯まとめ
|赤ちゃんの初めての歯は、生後6ヶ月ごろから生え始めます
赤ちゃんの初めての歯は、生後6ヶ月ごろから生え始めます。これは平均的な目安であり、個人差があります。赤ちゃんの歯の生え方は、遺伝的な要因や栄養状態などによって影響されます。
◆歯が生える順番
赤ちゃんの歯が生える順番は、だいたい以下のようになります。
- 前歯:生後6~10ヶ月ごろに下の前歯が生え始め、その後に上の前歯が生えます。
- 犬歯:生後16~20ヶ月ごろに上の犬歯が生え始め、その後に下の犬歯が生えます。
- 小臼歯:生後12~16ヶ月ごろに下の小臼歯が生え始め、その後に上の小臼歯が生えます。
- 大臼歯:生後20~30ヶ月ごろに上の大臼歯が生え始め、その後に下の大臼歯が生えます。
◆歯が生える前のお口のケア
歯が生える前から、お口の中を拭いてあげる習慣をつけることが大切です。これは、赤ちゃんにお口のケアの気持ちよさを覚えてもらうためにも有効です。
お口の中を拭く時は、ガーゼや滅菌シートをぬるま湯で湿らせて、人差し指に巻き付け、歯茎や舌の表面をそっと拭きます。お口の中を拭く回数は、1日に2~3回程度が目安です。
◆歯が生え始めたら
歯が生え始めたら、歯磨きを始めることがおすすめです。歯磨きは、赤ちゃんの歯を虫歯や歯周病から守るだけでなく、歯並びや噛み合わせの発達にも重要な役割を果たします。
◆一日の生活の中での歯磨きのタイミング
歯磨きのタイミングは、食事の後や寝る前がおすすめです。特に、夜寝る前やお昼寝前は忘れずにケアしてあげましょう。赤ちゃんが眠っている間は唾液が少なく、虫歯菌が活動的になるので、虫歯になりやすいからです。
歯磨きの回数の目安は、1日に5~6回程度です。
|歯磨き時の注意・工夫
赤ちゃんの歯磨きは、赤ちゃんのお口がよく見えるように、ママやパパが安定した姿勢で行うことが大切です。赤ちゃんの歯磨きは、赤ちゃんの年齢や成長に合わせて、以下のように変えていきましょう。
⑴生後6ヶ月~1歳頃
この時期は、赤ちゃんの歯が生え始めるころです。歯磨きの姿勢は、赤ちゃんをひざに寝かせて、仰向けにするのがおすすめです 。この姿勢は、赤ちゃんのお口がよく見えるだけでなく、赤ちゃんの首や背中を支えることができます。また、赤ちゃんが動いたり暴れたりしても、安全に歯磨きができます 。歯磨きの方法は、以下のように行います。
- STEP1:ガーゼや滅菌シートをぬるま湯で湿らせて、人差し指に巻き付けます。
- STEP2:片手で赤ちゃんの頭を支えて、もう片手で人差し指で歯ぐきや舌の表面をそっと拭きます。
- STEP3:歯磨きが終わったら、赤ちゃんのお口を拭いてあげましょう。
歯が生え始めたら、赤ちゃん用の歯ブラシで磨いてあげるのが理想ですが、前歯は平らなので、ガーゼなどで歯の表面をこするように汚れを落とすのでも十分です 。歯ブラシを使う場合は、ヘッドが小さくて柔らかい毛のものを選びましょう 。歯ブラシの先端だけを使って、細かく振動させるように動かします 。力を入れすぎないように注意してください。
⑵1歳~2歳頃
この時期は、赤ちゃんの歯がほぼ生えそろうころです。歯磨きの姿勢は、赤ちゃんをひざに寝かせて、仰向けにするのを続けるか、あるいは、正座やあぐらで座ったママのひざに、子どもの頭を乗せて仰向けにするのがおすすめです 。この姿勢は、赤ちゃんのお口がよく見えるだけでなく、赤ちゃんと目が合ってコミュニケーションがとりやすいです 。歯磨きの方法は、以下のように行います。
- STEP1:赤ちゃん用の歯ブラシと歯磨き粉を用意します 。歯磨き粉は、必要に応じて使いましょう 。歯磨き粉は飲み込むと体に悪影響を及ぼす可能性があるので、赤ちゃんがうがいができるようになるまでは、無添加や低フッ素のものを選びましょう 。歯磨き粉の量は、米粒ほどで十分です 。
- STEP2:片手で赤ちゃんの頭を支えて、もう片手で歯ブラシを持ちます 。
- STEP3:歯ブラシの先端だけを使って、細かく振動させるように動かします 。力を入れすぎないように注意してください。
- STEP4:終わったら、赤ちゃんのお口を拭いてあげましょう。
⑶2歳~3歳頃
この時期は、赤ちゃんの歯がすべて生えそろい、永久歯に生え変わる準備が始まるころです。歯磨きの姿勢は、正座やあぐらで座ったママのひざに、子どもの頭を乗せて仰向けにするのを続けるか、あるいは、子どもが自分で立って、ママやパパが後ろから抱きかかえるようにするのがおすすめです 。この姿勢は、子どものお口がよく見えるだけでなく、子どもが自分で歯磨きをしたいという気持ちを尊重できます 。歯磨きの方法は、以下のように行います。
- STEP1:歯磨き粉、子どもが自分で持つ歯ブラシと、ママやパパが仕上げ磨き用に使う歯ブラシを別々に用意しましょう 。子どもが自分で歯磨きをしたいという気持ちは大事なので、歯ブラシを与えてあげても構いません 。ただし、きれいには磨けないので、仕上げ磨きは必ずしてあげましょう 。
- STEP2:子どもが自分で歯磨きをするときは、ママやパパがついていて、目を離さないようにしましょう 。歯ブラシでのどを突く事故が起きないように注意してください 。
- STEP3:仕上げ磨きのときは、歯ブラシの先端だけを使って、細かく振動させるように動かします 。力を入れすぎないように注意してください 。
- STEP4:終わったら、子どもにうがいをさせてあげましょう。
歯科検診
赤ちゃんの歯科検診は、歯が生え始める生後6カ月くらいから始めることがおすすめです。歯が生え始めると、虫歯のリスクが高まりますので、定期的に歯科医に診てもらうことが大切です。歯科検診では、歯や歯茎の状態、歯並びや噛み合わせの発達、口内環境などをチェックしてもらえます。また、フッ素塗布やシーラントなどの虫歯予防対策も受けることができます。
歯科検診の頻度は、個人差がありますが、一般的には3カ月から半年に1回程度が目安です。自治体によっては、1歳6カ月児健診や3歳児健診などの無料の歯科健診も行っていますので、ぜひ利用してみてください。歯科検診は、赤ちゃんの歯の健康を守るだけでなく、歯並びや噛み合わせの発達にも重要な役割を果たします。
|まとめ
歯科医院に行くときは、赤ちゃんの機嫌がいい時間帯を選んで、ママやパパが一緒についていてあげましょう。赤ちゃんが泣いたり嫌がったりしても、慣れていますので、気にしなくても大丈夫です。
赤ちゃんの歯のケアは、健康な歯を保つことはもちろん、体の健康や成長にも長く影響します。赤ちゃんの歯のケアに関して、わからないことや不安なことがあれば、歯科医院で相談してみましょう。
ミニインプラントとは?
2024年12月3日
デンタルインプラントの中でも、特に小さいインプラントというものがあります。従来よりも小さく、寿命および強度も確保できる上に、後発の症状も抑えられるとされます。このインプラントについて、今回は詳しく見ていきましょう。
なお、今回はインプラントの構造も含めて説明する必要があるため、専門的な用語が多くなっております。まずインプラントをご存知ない方は先にそちらから確認されることをおすすめします。
|目次
- ◯ミニインプラントとは?
- ◆「IT Implant」シリーズ
- ◆従来品との構造的な違い
- ◆新旧タイプの違い
- ◆他のインプラントとの違い
- ◆適応の幅が広がったインプラント
- ◆素材
- ◆最適な表面性状の付与
- ◯まとめ
|ミニインプラントとは?
◆「IT Implant」シリーズ
さて、ミニインプラントとはその名も、「IT Implant」というものです。プラトンジャパンという会社が販売している製品になります。(以下、製品資料からの参照を含みます)
千葉県の袖ヶ浦で開業されている飯島俊一先生とプラトンジャパンが共同開発した「IT Implant」シリーズは、歯科用インプラントの既存品における様々な問題点をクリアするとともに、超高齢社会における患者満足度向上に寄与するインプラントシステムとして期待されています。
◆従来品との構造的な違い
人工の歯根部であるフィクスチャと中の芯であるアバットメントの嵌合形態(はめあい)に、従来のスクリュータイプでなく、茶筒のようにかみ合うテーパーロック構造が採用されています。
中の芯を止めるアバットメントスクリューというものがありますが、IT Implantはこれを必要とせず、さらにアバットメントを内冠とした内外冠構造による上部構造作製を行うことで、マイクロムーブメントとよばれる微小なカタツキや余剰セメントの問題をクリアするとともに、メンテナンス時の作業性にも優れたインプラントシステムです。
◆新旧タイプの違い
IT Implant Systemは、開発背景と構造によってStypeとSEtypeの2種類に区別されます。
「IT-S Implant System」は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する「平成28年度医工連携事業化推進事業」に採択された事業テーマ「口腔内環境の変化に対応し、長期予後を確立する歯科用インプラントの開発・事業化」の支援を受け開発された製品であり、皆様が想像する人工の歯根を有する従来のインプラントシステムです。
新しい「IT-SE-Implant」は、さらに細かい口腔内での環境に耐えうるため、フィクスチャと呼ばれる人工歯根を2段構造とし、骨吸収に応じ2段目を部分的に交換することで、表面処理部の露出を回避するとともに感染を防止し、長期予後の確立を図る目的で開発を行いました。
◆他のインプラントとの違い
従来であればインプラントと上部構造はバットジョイントという、突合せ同士が平行の形をしていましたが、ITインプラントは日本の精密加工技術に基づく1.3°のテーパーロック構造の採用により、マイクロギャップ・マイクロムーブメントを軽減しインプラント周囲炎を防止することが期待できます。
◆適応の幅が広がったインプラント
インプラントとインプラントの間は、3mm以上、天然歯-インプラント間は1.5mm以上離さないといけないという決まりがあります。従来であれば、欠損に対し隣在歯が傾斜・移動してきている場合はインプラントに対する適正な間隔が取れず、症状によっては適応外となってしまうケースが多々ありました。
IT implant systemは従来のインプラントより1mm以上小さくなりますから、埋入計画は変更しなくても、インプラントフィクスチャーを変更するだけでも埋入可能になります。
◆素材
素材は、人工股関節などに使用される医療用チタン合金を採用することで、より高強度を実現しました。
一番大きい効果は、インプラント特有の歯周病であるインプラント周囲炎のリスク軽減です。
◆最適な表面性状の付与
インプラントに大事なのは初期固定です。埋入時にどれだけ初期固定が行えるかで予後が変わります。IT implant systemには人工歯根の表面に特殊加工を施すことで、早期の骨形成、強固な骨結合を実現することができました。
これにより埋入から荷重をかけるまでの治療期間が短くなるというメリットが生まれます。
|まとめ
インプラントの新しい選択肢として、材料や構造、表面性状等が進化したミニインプラント。今回はその中で代表されるITインプラントについて紹介しました。
- インプラント特有の周囲炎などの予後の改善
- 長期におけるメンテナンス性の上昇
- 小型化したことで埋入しやすくなり、適応できる人が増えた
- 表面加工で骨形成にかかる治療時間も従来より短くなった
このようにインプラントの既存品における様々な問題点をクリアすることで、超高齢社会における患者満足度向上に寄与するシステムとして期待されています。ご検討されてみてはいかがでしょうか。
マタニティー歯科の勧め マイナス1歳から始める虫歯予防④
2024年11月19日
妊娠中の口腔ケアのポイント
「人生100年時代」と言われるように、日本の平均寿命は延び続けていますが、日常生活に制限のない、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」と平均寿命の間には、約10年の開きがあります。健康上の問題などで、支援や介護を必要とする日常生活に制限のある期間が、約10年もあるということです。いつまでも元気に過ごすためには「健康寿命」を延ばすことが大切です。
生きていくために欠かせないことは、「呼吸をすること」と「食べること」。一生使う口の土台は、お腹の中にいる時=マイナス1歳から作られます。妊婦さんの心と身体の健康を大切にすることは、生まれてくる赤ちゃんの一生涯の健康を守ることにつながります。
妊娠中は、悪阻により口内環境が悪くなりやすいです。歯磨き自体が吐き気を催す原因になるため、十分に歯垢を落とし切れずに歯磨きを終えてしまうこともあるかもしれません。悪阻による嘔吐でお口の中が酸性に傾きやすくなるのも、虫歯ができやすくなる原因になります。また、歯周病菌の中には女性ホルモンを好む菌がいます。そのため、妊娠中に女性ホルモンの働きが活発になると歯周病になる可能性が高くなるのです。
悪阻で歯磨きが難しい時期は、以下のようなことに気をつけてお口のケアをすると良いと思います。
- ①体調の良い時間帯に歯磨きをする
悪阻がひどい時期は、無理に歯磨きをせずに、体調の良い時間帯を見計らって歯を磨くようにしましょう。ただし、夜寝る前だけはできるだけ歯を磨くように心掛けましょう。寝ている間は唾液の分泌量が減るので、口の中の細菌が増えやすく、虫歯や歯周病になりやすくなります。
- ②奥から前に向かって歯磨きをする
口に伝わる刺激が少ないと、吐き気を催しにくくなることがあります。悪阻の時は、歯ブラシを小刻みに動かしながら、ゆっくりと奥から前に向かって磨くようにしましょう。奥歯を磨く時には、横から歯ブラシを入れると、嘔吐反射が起きにくくなります。
- ③顔を下に向けたまま歯磨きをする
口の中に唾液や泡が溜まると、吐き気を催しやすくなります。顔を下に向けて、口の中に唾液や泡を溜めないようにしながら歯を磨くようにしましょう。
- ④デンタルフロスや歯間ブラシを使用する
悪阻の時は磨き残しが増えるので、デンタルフロスや歯間ブラシを使用して、歯と歯の間の汚れをしっかりと除去しましょう。デンタルフロスは、持ち手がついている「ホルダータイプ」が、口への刺激が少ないのでお勧めです。
- ⑤刺激の少ない歯磨剤を使う
歯磨剤の味や臭いで気持ちが悪くなってしまうことがあります。味や臭いの刺激が少ない歯磨剤を使いましょう。泡が立ちにくく、少量の使用で済むフォーム状の歯磨剤を使うのもお勧めです。場合によっては、歯磨剤を使わない磨き方もあります。
- ⑥歯ブラシはヘッドの小さいコンパクトなものを使う
歯ブラシが頰の内側や舌、歯肉に触れると、嘔吐反射が起きやすくなります。ヘッド(歯ブラシの毛の生えている部分)が小さい歯ブラシは、口に入れた時の圧迫感が少なく、頰や舌、歯肉を刺激せずに磨くことができます。
- ⑦洗口液を使う
どうしても歯磨きが難しい場合は、洗口液を使って口の中の汚れを洗い流しましょう。前後左右に液体を動かすイメージで、しっかりぶくぶくうがいをすることがポイントです。洗口液は、補助的なものですので、体調が良くなったタイミングで、1日1回は歯磨きをしましょう。
- ⑧キシリトール製品を利用する
天然の甘味料であるキシリトールには、虫歯菌の働きを弱め、プラークを着きにくくする効果があります。取り入れられるようであれば、キシリトール製品を利用しましょう。口の中に長く留まるガムやタブレットの形で摂取することがお勧めです。出産前に一定期間キシリトールを摂取した母親から生まれた子供は、虫歯のリスクが低くなるという報告もあります。
妊娠中の歯科処置による赤ちゃんへの影響
妊婦さんが歯科処置を受ける際に、レントゲン撮影や麻酔、投薬などのお腹の赤ちゃんへの影響を心配するのは自然なことです。
麻酔による赤ちゃんへの影響
虫歯処置で使われるのは局所麻酔です。胎盤を通じて、お腹の赤ちゃんに麻酔薬が届くことはありません。歯科処置で一般的に麻酔として使われているのは、キシロカインという薬です。キシロカインは、無痛分娩にも用いられているもので、通常の歯科処置に使う量であれば、問題無いと言われています。身体への負担が少ないものを、最小限の量使用します。妊婦さんが痛みを我慢するストレスはお腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼすため、局所麻酔を使って無痛的にきちんと処置を行った方が安全であると言われています。妊娠16週~27週の安定期であれば、ほとんど心配はありません。
レントゲンの赤ちゃんへの影響
赤ちゃんへの被爆が心配になると思います。妊娠15週までの初期は、感受性が高いためできるだけ避けます。妊娠16週~27週の安定期以降であれば、特に問題ありません。多くの歯科医院で使われているレントゲン撮影装置は、デジタルレントゲン撮影装置で、非常に低い線量で撮影することが可能です。ですが、どうしても心配な場合には、撮影せずにできる処置もありますので、ためらわずに歯科医師にお伝えください。
飲み薬の赤ちゃんへの影響
妊婦さんには、抗菌薬や鎮痛剤(痛み止め)を使うような抜歯などの処置は、できるだけ出産や授乳の時期を過ぎてから行うようにお勧めしますが、どうしても処置を行う必要がある場合もあります。どんな薬も、お腹の中の赤ちゃんへの安全性は保証されていません。妊娠中や授乳中でも安全に使用できる抗生剤や鎮痛剤を選び、最小限の量を使用します。
まとめ
・悪阻の時期は、口腔ケアに工夫が必要
・歯科処置に伴う赤ちゃんへの影響は、ほとんど心配がない
マタニティー歯科の勧め マイナス1歳から始める虫歯予防③
2024年11月12日
マタニティー歯科を受診するには?
「人生100年時代」と言われるように、日本の平均寿命は延び続けていますが、日常生活に制限のない、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」と平均寿命の間には、約10年の開きがあります。
健康上の問題などで、支援や介護を必要とする日常生活に制限のある期間が、約10年もあるということです。いつまでも元気に過ごすためには「健康寿命」を延ばすことが大切です。
生きていくために欠かせないことは、「呼吸をすること」と「食べること」。呼吸が楽にできる鼻、きちんと噛めて飲み込める口は、人生の質を左右します。そして、一生使う口の土台は、お腹の中にいる時=マイナス1歳から作られるのです。
お口の健康は体の健康、心の健康にもつながります。妊娠・出産をすると、女性の心と身体はいつもとは違うデリケートな状態になります。妊婦さんの心と身体の健康を大切にすることは、生まれてくる赤ちゃんの健康を守ることにつながります。
生まれてくる赤ちゃんのために、出産前の歯科検診、口腔ケア、虫歯の処置を行いましょう。
妊娠中に起こりやすいトラブル
- ①虫歯の悪化
唾液の質・量の変化や悪阻で、口の中が虫歯になりやすい状態になります。また、出産後の生活パターンの変化により歯磨きが疎かになりやすいことも、虫歯が悪化しやすい要因になります。子供の虫歯リスクを考える場合、いちばん接する時間が長い母親の口の中の状態がとても重要です。母親が定期的にメインテナンスを受けている場合、子供の虫歯になるリスクがそうでない場合の半分になると言われています。
- ②妊娠性歯周炎
女性ホルモンの影響で、普段よりも歯肉が腫れやすく、歯周病菌の活動が活発になり、妊娠性歯肉炎を発症しやすくなります。妊娠性歯周炎は、妊婦さんの約50%が経験すると言われています。適切なケアが為されないと、出産後も歯周炎が継続する場合があります。
- ③酸蝕歯
悪阻による嘔吐や味覚の変化で歯が溶かされやすく、「酸蝕歯(さんしょくし)」になりやすくなります。酸蝕歯とは、飲食物や薬品などの酸によって歯の表面のエナメル質が溶けた状態のことで、歯の表面にあるエナメル質が傷つき、徐々に薄くなることで、歯の先端部分から透明になっていきます。症状としては、熱い物や冷たい物がしみる(知覚過敏)、歯の艶が失くなる、歯が擦り減って象エナメル質の下の象牙質が露出して斑らに見えたりします。虫歯は虫歯菌が原因ですが、酸蝕歯には細菌が関与していません。
- ④妊娠性エプーリス
エプーリスは歯肉にできる良性のしこりのようなもの(腫瘤)で、炎症や刺激に対する反応により形成されます。歯磨きにより出血したり、痛みが生じる場合があります。大きくなると、歯が動かされて、歯並びが悪くなることがあります。妊娠性エプーリスは出産後に自然に消退することが多く、経過観察となりますが、自然に消退しない場合には、外科的に切除することがあります。
- ⑤姿勢の変化による腰痛・咬み合わせのずれ
お腹が大きくなってくると体の重心バランスが変化します。反り腰になりやすく、咬み合わせに影響が出る場合があります。
- ⑥親不知などの炎症の悪化
赤ちゃんを母親の免疫機能から守るための免疫機能の低下(免疫寛容)により、元々炎症がある箇所が悪化する場合があります。
- ⑦妊娠糖尿病
妊娠すると、ホルモンの影響で、インスリンが効きにくい状態になり、血糖値が上昇しやすくなります。妊婦さんの約1%~3%が、妊娠糖尿病を発症すると言われています。糖尿病になると、細菌に対する抵抗力や組織の修復力の低下、口腔内の乾燥が生じ、歯周病を悪化させます。歯周病にかかってしまった妊婦さんは、歯周病菌によりインスリンの働きが阻害され、血糖コントロールを悪くしてしまうため、糖尿病のリスクが高まります。
妊娠中の歯科受診のタイミング
- ①妊娠初期:15週まで
切迫早産が起こりやすい時期です。歯の痛みや歯茎の腫れなどの急性症状がある場合には、応急処置のみ行います。特に4週~8週は慎重に治療にあたり、12週までは口腔内の診査やクリーニング程度にしておきます。レントゲン撮影や、麻酔、投薬などは注意が必要です。
- ②妊娠中期:16週~27週
安定期になります。ほとんどの歯科治療を行えます。レントゲン撮影や、麻酔、投薬なども可能になります。出産前の比較的安定しているこの時期に、治療を行うことが望ましいです。
- ③妊娠後期:28週以降
お腹がかなり大きくなり、治療体位が苦しくなることがあります。早産や急な陣痛に備え、治療は応急処置に留めます。治療が必要な場合は出産後に改めて治療を行います。
妊娠中の歯科受診時に注意すること
- 治療前に、妊娠第何週であるかを歯科医師にきちんと伝えましょう。受診時には、母子手帳を持参しましょう。
- 歯科処置では、長時間同じ体勢を取り続けることになります。通常、歯科処置中は仰向けになります。姿勢が苦しいと感じる場合には、すぐ歯科医師に知らせ、別の楽な姿勢にしてもらいましょう。
- 処置中に体調が悪くなった場合や、処置に対して不安がある場合は、遠慮なく歯科医師に伝えましょう。
「十月十日」というくらい、妊娠期間は長期間に及びます。妊娠中は悪阻や唾液の減少など、口内環境が悪化しやすくなります。妊娠中に虫歯処置を受けても大丈夫ですから、痛みを我慢しないで歯科を受診するようにしましょう。
とは言え、レントゲン撮影や麻酔、抗生物質の服用などを妊娠中に行うことについて、胎児への影響を考えて不安な気持ちを持つ妊婦さんは多いと思います。妊娠中の歯科処置をできるだけ避けるために、妊娠する前の段階=普段から、お口の中を良い状態にしておくことが理想です。
妊娠中・出産を望む方は、未来を見据えて、計画的に歯科を受診することが大切になってきます。
まとめ
・妊娠中は、口腔内環境が悪化し、トラブルが起こりやすい
・妊娠中の歯科処置は、16週~27週の安定期が望ましい
・妊娠前から口の中を良い状態にしておくことが望ましい
マタニティー歯科の勧め マイナス1歳から始める虫歯予防②
2024年10月30日
「人生100年時代」と言われるように、日本の平均寿命は延び続けていますが、日常生活に制限のない、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」と平均寿命の間には、約10年の開きがあります。
健康上の問題などで、支援や介護を必要とする日常生活に制限のある期間が、約10年もあるということです。
いつまでも元気に過ごすためには「健康寿命」を延ばすことが大切です。
生きていくために欠かせないことは、「呼吸をすること」と「食べること」。
呼吸が楽にできる鼻、きちんと噛めて飲み込める口は、人生の質を左右します。
そして、一生使う口の土台は、お腹の中にいる時=マイナス1歳から作られるのです。
【目次】
- ◯口腔育成の第1段階は、3歳までが重要
- ◆上顎の成長
- ◆赤ちゃんの食生活と口腔との関係
- ◆早めに受診しよう
- ◯「かかりつけの歯科医院」の勧め
- ◯まとめ
口腔育成の第1段階は、3歳までが重要
「三つ子の魂百まで」と言われますが、「マイナス1歳から始める虫歯予防」のためにも、3歳までが重要な時期になります。
生まれたばかりの赤ちゃんの口の中は無菌です。
生まれてから、接する周囲の人からの細菌が赤ちゃんの口の中に移って定着し、その人固有の細菌の集団(細菌叢)が形成されます。細菌叢の50%が、いちばん接する時間が長い母親由来と言われています。特に虫歯菌は、乳歯の奥歯が生え始める18ヶ月(1歳半)頃から乳歯が全部生え揃う31ヶ月(2歳半)頃の間に最初の感染が集中しているとの研究があります。また、歯周病菌は、保護者、特に母親が歯周病を発症していると、その子供からも同じ歯周病菌が検出される率が高いことが明らかになっています。
細菌叢が善玉菌優位になるか、悪玉菌優位になるかは、3歳頃までにほぼ決まり、それが生涯に渡って続くと言われています。
上顎の成長
呼吸=鼻の土台となる上顎の前の部分(切歯骨)は、生後3ヶ月~6ヶ月の変化が最も大きく、永久歯が生える頃にはほぼ成長が終わります。
上顎を「歯が並ぶ土台」として見た場合、幅が広い方が、なんとなく将来、余裕をもって歯が並びそうだと思いませんか?
上顎、特に切歯骨の成長には、適切に哺乳・嚥下ができていることが重要です。
赤ちゃんの食生活と口腔との関係
0歳~1歳頃の赤ちゃんは、離乳食を通して、味を食感、舌触り、温度、匂い、色彩などの五感で感じながら、食べ物のおいしさを知っていきます。
「味わう」ためには、食べ物をよく噛み、舌で移動させ、舌の上の味を感じる細胞である味蕾(みらい)の色々な場所で味を感じることが必要になります。動かすことでおいしさが持続するため、食べ物を口の中に留めて舌で感じたり、よく噛んだりすることは、味覚を発達させるうえでとても重要になります。
よく噛んで味わうためには、赤ちゃんの状態に合わせた食べ物の形状を選択すること、適切な食べさせ方をすることが大切です。
また、食生活と虫歯が密接に関係していることはご存知だと思いますが、2歳~3歳は自我が発達して好き・嫌いを判断するようになります。早い時期に虫歯ができて歯科医院を受診する子供は、既に甘い物が好きだったり、 歯磨きが嫌いだったり、寝る時間が遅いなど、生活習慣が偏っていることがあります。
3歳までに身につけた嗜好や基本的な生活習慣は、その後、変えることが難しくなります。
基本的な生活習慣が確立した後から、「食生活に気をつけてください」「仕上げ歯磨きを頑張ってください」と言われても、 保護者も子供も大変な思いをすることになります。
早めに受診しよう
赤ちゃんが最初に歯科を受診するのは、1歳6ヶ月検診であることが多いと思いますが、その頃には、生涯に渡って影響する大事な時期が過ぎてしまっていることもあるのです。
この重要な時期に、歯科が関わることで、お子様が一生の財産を手に入れることができるよう情報提供し、お口の健康のお手伝いをしていきたいと思います。
マタニティの時期から、生まれてくる赤ちゃんの将来を考えて、保護者がお口を健康に育む知識を身につけることで、大変な思いをすることなく機能的で健康な口と身体を目指すことができます。
「赤ちゃんの時に知っていれば…」とならないためにも、生まれてくる赤ちゃんのことを一緒に学んでいきましょう。
「かかりつけの歯科医院」の勧め
「マタニティー歯科の勧め マイナス1歳から始める虫歯予防①」と今回で、マタニティー歯科をお勧めする理由を述べてきました。
マタニティー歯科は、「口の中の状態が悪くなったから、歯が痛くなったから行く」所ではありません。妊婦さんと生まれてくる赤ちゃんの「お口の健康を守るための歯医者」です。
「お口の健康を守るための歯医者」、それが「かかりつけの歯科医院」です。
「かかりつけ歯科医院」のポイントは、「リスクに応じたケア」を実施することにあります。一人一人の生活背景を把握し、病気のリスク因子をきちんと検査・分析して、リスク管理=定期的なメインテナンスを行うのが、かかりつけ歯科医院の役割です。
痛みやトラブルが起こった時に処置に行く歯科医院は、本当のかかりつけではありません。
虫歯で処置を行った歯は、元の健康な状態に戻ることはありません。虫歯を削って、詰めたり被せたりすれば、噛めるようにはなりますが、それは虫歯が「治った」のではないのです。
視力が悪い人が、眼鏡やコンタクトレンズを使うことに似ています。眼鏡やコンタクトを使えば「見える」ようになりますが、視力が良くなった訳ではありません。
虫歯で詰めたり被せたりした部分は、その後虫歯が再発するリスクが高くなります。何か起きてから対処するを繰り返しているのでは、口や歯の状態は以前より悪くなってしまうのです。
まとめ
・赤ちゃんのために、安心できるかかりつけの歯医者を見つけましょう!
・生まれてくる赤ちゃんのために、お母さんの口の中を健康に保つことも大切です!
マタニティー歯科の勧め マイナス1歳から始める虫歯予防①
2024年10月25日
「人生100年時代」の土台はお腹の中で作られる
「人生100年時代」と言われるように、日本の平均寿命は延び続けていますが、日常生活に制限のない、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」と平均寿命の間には、約10年の開きがあります。
健康上の問題などで、支援や介護を必要とする日常生活に制限のある期間が、約10年もあるということです。
いつまでも元気に過ごすためには「健康寿命」を延ばすことが大切です。
生きていくために欠かせないことは、「呼吸をすること」と「食べること」。
呼吸が楽にできる鼻、きちんと噛めて飲み込める口は、人生の質を左右します。
「マタニティー歯科」という言葉を聞いたことがありますか?
「マタニティー歯科」は、妊婦さんと生まれてくる赤ちゃんを対象にした歯科です。妊娠がわかっている方だけでなく、これから妊娠を望む方や、授乳中の方も対象に含まれます。妊婦さんや赤ちゃんが生まれた方に特有の身体や体調の変化を考慮した検査・歯科処置・予防処置を行います。
「妊娠・出産と歯医者って、何の関係があるの?」と思う方もいると思います。実は、妊娠・出産と歯科は、密接に関係しているのです。
マタニティー歯科は「お母さん」のため
出産した後のお母さんは、「歯がボロボロになってしまう」「お口の状態が悪くなってしまう」という噂を聞いたことがありますか?現在60代~80代の方が「お母さん」だった頃は、「子供を1人産むと歯が1本無くなる」と言われていたそうです。歯科医院でも、「子供を生む度に歯が悪くなって、もうボロボロ」「子供に栄養を取られたから、骨も歯も弱くなった」と仰る高齢の女性は少なからずいらっしゃいます。
調査内容・結果
2014年4月、東京医科歯科大学の研究者グループにより、以下のような疫学調査の結果が発表されました。
〝出産回数が増えると将来、歯を失いやすくなる――。東京医科歯科大学の植野正之准教授らのグループは16日、こんな疫学調査の結果を発表した。妊娠や出産の過程で虫歯になりやすくなるうえ、歯科治療を受ける機会が減るのが原因と考えられるという。妊娠中も虫歯予防や治療に積極的に取り組むことが必要だという。
1990年に秋田県に住んでいた40~59歳の男女に歯科に関するアンケート調査をし、2005年に歯科検診を受けた約1200人(男性562人、女性649人)の結果を解析した。女性は出産回数を「0回」から「4回以上」まで5グループに分けて、親知らずを除く28本の永久歯のうち残っている数を比べた。
その結果、4回以上出産しているグループの残っている歯は約15本。0回の約18本や1回の約19本に比べて約3本少なかった。回数が多くなると残っている歯の数が減っていた。かみ合わせに大事な奥歯の上下のペアの数を見ても同様の傾向を示した。
男性では子供の数別に比べたが、残っている歯の数と関連はなかった。
妊娠・出産ではホルモンや口の中の細菌のバランスの変化で免疫力が低下し、虫歯や歯茎などの歯周組織が壊れやすくなる。このため「妊娠が繰り返されると歯を失うリスクが上がる」(植野准教授)。
妊娠中の歯科治療が胎児に悪影響を及ぼすという説のため治療を避ける妊婦もいるが、通常の虫歯治療ならば問題はなく、科学的な根拠はないという。〟
(日本経済新聞 2014年4月16日号 https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1600I_W4A410C1CR0000/)
この調査から考えられることは?
結論は「出産回数が増えると、歯を失うリスクが高まる」。
しかし、お腹の中の赤ちゃんに骨や歯のカルシウムが取られて歯を失ったわけではありません。このような結果になったのは、妊娠中や出産後のお母さんの口のケアが不十分だったからです。
妊娠・出産をすると、心と身体はいつもとは違う状態になります。口も身体の一部ですから、口の中もいつもとは違う状態になります。以下のような理由から、虫歯や歯周病が悪化しやすいと考えられます。
- ①母体から見れば「異物」である赤ちゃんを母体の免疫機能から守るため、妊娠中は体全体の免疫機能が低下します。虫歯も歯周病も感染症ですから、悪化しやすい状態になります。
- ②妊娠中は、唾液の分泌量が低下すると共に、唾液の質が変化してネバネバした状態になります。また、いつもは中性の唾液がやや酸性に傾き、虫歯菌が産生する酸を中和する働きが弱まるため、歯が溶かされやすい状態になります。
- ③女性ホルモンの分泌量が変化して、女性ホルモンを栄養源とする歯周病菌が増える傾向があります。女性ホルモンの影響で、普段よりも歯肉が腫れやすくなり、妊娠性歯肉炎を発症しやすくなります。
- ④悪阻により歯磨きが難しくなることがあります。また、悪阻による嘔吐で歯が溶かされやすい状態になります。
- ⑤味覚が変化して酸っぱい物を好むようになり、口の中が酸性に傾き、歯が溶かされやすくなります。
- ⑥悪阻で小分けにして食べるため、飲食回数が増えて、口の中が酸性になる時間が長くなり、歯が溶かされやすくなります。
- ⑦悪阻や体調の変化、授乳により歯科の受診が難しく、処置が中断したり、処置が必要な歯が放置される傾向があります。
- ⑧妊娠・出産で生活パターンが変わり、子供優先となるため、自分のことが後回しになりやすく、歯磨きや通院が疎かになりがちです。
マタニティー歯科は「赤ちゃん」のため
子供の口や歯を健康に育てる口腔育成は、お母さんのお腹の中にいる時=マイナス1歳からスタートしています。
唇や上顎(口蓋)は、妊娠8週~10週頃にでき上がります。上顎の形は、健全な呼吸機能に影響します。妊娠7週~10週頃には、子供の歯(乳歯)の芽となる歯胚(しはい)が形成されます。また、妊娠3か月半頃になると、大人の歯(永久歯)の歯胚の形成も始まります。妊娠4~5ヶ月頃には歯胚が硬い組織になる石灰化が始まっています。石灰化に必要なカルシウムやリンは、お母さんの血液から供給されます。歯胚は、歯を支える骨(歯槽骨)の中で時間をかけて発育し、やがて歯として口の中に生えてきます。
妊娠中のお母さんの健康状態や栄養状態が、赤ちゃんの口や歯に大きく影響するのです。
また、生まれたばかりの赤ちゃんの口の中は無菌ですが、身近で接している人から徐々に細菌が伝搬して、その人固有の細菌の集団(細菌叢)が形成されます。
細菌のDNAを解析した研究によると、細菌叢の50%が、いちばん接する時間が長い母親由来なのだそうです。細菌叢の細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に分類されますが、お母さんの口の中の悪玉菌を減らして、赤ちゃんに移さないようにすることが、生涯に渡って虫歯や歯周病になりにくいお口作りのためには大切です。
歯周病菌が血管内に入り込むと、歯周病菌が作り出す炎症物質が胎盤を刺激して、子宮に陣痛に似た収縮を引き起こし、早産・低体重児出産などのリスクが高まることも明らかになっています。
お腹の赤ちゃんのためにも、お母さんのお口の中を健康に保つようにしましょう。
まとめ
・マタニティー歯科は、妊婦さんと生まれてくる赤ちゃんを対象にした歯科
・妊娠中や出産後は、虫歯や歯周病のリスクが高くなる
・生まれてくる赤ちゃんのために、お母さんの口の中を健康に保つことが大切