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摂食嚥下障害とは?食事でむせる原因と放置する3つのリスク

2026年9月21日

◯はじめに

「最近、食事中にむせることが増えた」「飲み込みにくい」と感じていませんか? 年齢のせいだと軽く考えがちですが、それは「摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害」の可能性があります。

摂食嚥下とは、食べ物を認識して口に取り込み、胃へと送り込む一連の動作を指します。この流れがうまくいかない状態を放置すると、低栄養や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)など、命にかかわるリスクが高まります。

この記事では、摂食嚥下障害の原因や具体的な症状、ご家庭でできる対策について、歯医者の視点でわかりやすく解説します。

ご家族の「食べる力」を守るための参考にしてください。

◯摂食嚥下障害が疑われる主な症状

「食べる」という動作は、私たちが無意識に行っている非常に複雑な運動です。

加齢や病気によってこの機能が低下すると、食事中や食後にさまざまなサインが現れます。ご家族の様子に以下のようなサインがないか、確認してみましょう。

◆食事中にむせたり咳き込んだりする

最も分かりやすいサインは、食事中の「むせ」です。

特に汁物や、お茶などのサラサラした水分を飲んだときに激しく咳き込む場合は注意が必要です。

本来、食べ物や飲み物は「食道」を通って胃へ運ばれます。しかし、飲み込むタイミングがずれると、誤って空気の通り道である「気管」に入ってしまうことがあります。これが「誤嚥(ごえん)」です。

体は気管に入った異物を出そうとして反射的に激しくむせます。ただし、誤嚥してもむせが起こらない場合もあるため、食事中や食後の小さな変化を見逃さないことが大切です。

◆食べ物が口に残って飲み込みにくい

食事に時間がかかるようになったり、いつまでも口の中に食べ物を溜めていたりすることも、摂食嚥下障害のサインの一つです。

食べ物を飲み込むためには、舌を使って食べ物をまとめ、喉の奥へ押し出す筋力が必要になります。この筋力が衰えると、一度で飲み込みきれずに口の中に残ってしまったり、何度もゴクンと飲み込み直したりする様子が見られるようになります。以前よりも「食べるスピードが遅くなった」「一口の量が減った」と感じる場合は、飲み込みの力が低下しているサインといえるでしょう。

◆食後に声がかすれて痰が絡む

意外と知られていないのが、食後の「声」の変化です。

食事を終えたあとに、ガラガラとした「湿った声」になったり、何度も咳払いをして痰(たん)を絡ませたりしていませんか?

これは、飲み込みきれなかった食べ物や水分が、喉の入り口付近に残っていることが原因です。飲み込みきれなかった食べ物や水分が喉に残っていると、食後にガラガラとした湿った声が聞かれることがあります。本人がむせていなくても、食後に声の質が変わる場合は、喉の機能がスムーズに働いていない可能性が考えられます。

◯摂食嚥下がうまくいかないと引き起こされる3つの問題

食べ物を飲み込む力が低下すると、単に食事がしづらくなるだけではありません。全身の健康状態を脅かす深刻な事態につながる恐れがあるため、注意が必要です。

◆誤嚥性肺炎を発症してしまう

最も注意しなければならないのが、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という病気です。

これは、本来なら胃に入るべき食べ物や唾液が、誤って気管から肺に入り込むことで引き起こされます。

お口の中には多くの細菌が存在しており、細菌を含む唾液や食べ物などが誤って気管から肺に入ることで、肺炎を引き起こすことがあります。ご高齢の方にとって肺炎は命に関わる重篤な病気の一つであり、日々の食事における誤嚥を防ぐことが非常に重要になります。

◆低栄養や脱水症状に陥る

食事のたびにむせたり飲み込みにくさを感じたりすると、食べることを避けるようになり、食事量が減ってしまうことがあります。必要なエネルギーや栄養素を十分に摂取できなくなると、低栄養状態に陥り、免疫力や体力が低下します。

さらに、水分でむせることを恐れてお茶や水を飲むのを避けるようになると、脱水症状を引き起こす危険性も高まります。人間の体は多くの水分を必要としており、特に高齢期は脱水に気づきにくいため、十分な配慮が欠かせません。

◆食事の楽しみが奪われる

食べることは、日々の生活における大きな喜びの一つです。

しかし、むせる恐怖や飲み込めないもどかしさがあると、食事の時間が苦痛に変わってしまいます。

家族と同じメニューを食べられなくなったり、外食を避けるようになったりすることで、精神的なストレスを抱える方も少なくありません。食事の楽しみが失われることは、生活の質(QOL)を大きく下げる原因といえるでしょう。

◯摂食嚥下機能が低下してしまう主な3つの原因

なぜ、年齢を重ねるとともに飲み込む力が衰えてしまうのでしょうか。その背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。

◆加齢による筋力の低下

足腰の筋力が衰えるのと同じように、喉や舌、顎など食べたり飲み込んだりするために使う筋肉の力も、加齢とともに低下することがあります。この筋力低下が、飲み込む力を弱める大きな要因です。

食べ物を喉の奥へ送り出す力や、飲み込む際に気道を守る機能が低下することで、誤嚥を起こしやすくなります。加齢による変化は誰にでも起こり得るため、日頃からお口周りの筋肉を使う意識を持つことが大切です。

◆脳卒中など疾患による影響

脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後遺症として、摂食嚥下障害が現れることがあります。脳から筋肉へ「飲み込む」という指令がうまく伝わらなくなるためです。

また、パーキンソン病などの神経難病によって筋肉のコントロールが難しくなり、症状が出現することもあります。基礎疾患がある場合は、その病気の影響を考慮したうえで、適切な対応を検討する必要があります。

◆歯の欠損や合わない入れ歯の使用

歯医者の視点から特にお伝えしたいのが、お口の中の環境が与える影響についてです。歯を失ったままにしていたり、合わない入れ歯を使い続けていたりすると、食べ物を十分に噛み砕きにくくなることがあります。食べ物を十分に噛めないと、飲み込みやすい状態にまとめにくくなり、スムーズな嚥下を妨げる原因になります。しっかりと噛める状態を保つことは、スムーズな嚥下を行うための第一歩になります。

◯摂食嚥下障害を防ぐための対策と歯医者での対応

ご家族の「食べる力」を守るためには、日常的な工夫と専門家によるサポートの両方が必要不可欠です。ご家庭で取り組める対策と、歯医者で受けられる対応について解説します。

◆お口の体操やリハビリを行う

お口周りの筋肉を鍛えるために、毎日の生活に体操を取り入れることをお勧めします。例えば、口を大きく開け閉めする運動や、舌を前後左右に動かす体操が効果的です。

また、食事の前にお口を動かして唾液の分泌を促すことで、食べ物を飲み込みやすくする準備が整います。無理のない範囲で、毎日の習慣として続けていくことが大切です。

◆食事の形態や食べる姿勢を工夫する

飲み込みやすいように食事の工夫をすることも、誤嚥を防ぐ有効な手段です。パサパサした食べ物は避け、水分に適切なとろみをつけることで、飲み込みやすくなる場合があります。ただし、適した食事の形態やとろみの程度は嚥下機能によって異なるため、専門家の評価や指導を受けることが大切です。あごが上がった状態だと気管が開きやすくなるため、食事の際は軽くあごを引いた姿勢を保つこともポイントです。座る椅子の高さやテーブルの位置を調整し、安定した姿勢で食事ができるようにサポートしてあげてください。

◆歯医者で入れ歯の調整や口腔ケアを受ける

ご家族だけで悩まず、ぜひ歯医者を頼ってください。合わない入れ歯を調整したり、必要に応じて新しい入れ歯を作製したりすることで、噛む機能の改善につながる場合があります。また、定期的な口腔ケアで歯石や汚れを取り除き、お口の中を清潔に保つことは、誤嚥性肺炎の予防においても重要です。歯茎の健康状態をチェックし、患者様一人ひとりに合ったブラッシング指導を受けることも非常に有益です。

◯まとめ:摂食嚥下障害のサインに気づいたら早めに歯医者へ相談を

食事中のむせや飲み込みにくさは、決して放置してよいものではありません。摂食嚥下障害のサインに早めに気づき、適切な対応につなげることが、ご家族の健康を守るうえで大切です。

むせや飲み込みにくさが続く場合は、かかりつけの歯科医院や医療機関に早めに相談しましょう。必要に応じて、嚥下機能の詳しい検査や専門的な支援につなげてもらうことが大切です。

お口の健康を整えることで、いつまでも美味しく、そして楽しく食卓を囲めるようサポートいたします。

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