子供の歯の削らない治療(サホライド治療) 〈前編〉
2025年9月21日
はじめに
削らないむし歯治療のサホライドって? 〜サホライドはどんな時に使うの?~
小さなお子さんに虫歯が出来てしまった!
「でも、まだ、むし歯の治療なんて無理かも・・・」
そんな時、1つの選択肢として、サホライドという薬剤を用いた治療方法があります。
「歯が黒くなっちゃうんでしょ?!」
そのイメージが強いのではないでしょうか。
サホライドは、使い方によっては非常に有効な薬剤です。
しかし、歯の黒変なども含めて、使用には注意も必要です。
今回は、サホライドについて、2回に分けてお話していきます。
まずは、サホライドとは何なのか。
また、どんな時にサホライドを用いるのかについて、お話ししていきましょう。
目次
1. サホライドとは
2. サホライドの効果
2-1. 初期むし歯の進行抑制
2-2. 象牙質知覚過敏症の抑制
2-3. 二次う蝕の抑制
3. サホライドはどんな時に使う?
4. まとめ
1. サホライドとは
サホライドは、日本で虫歯が猛威をふるっていた1970年に「進行の早い乳歯のむし歯を、何とかすることはできないか」ということから開発されました。
サホライドは38%フッ化ジアミン銀を主成分とし、フッ化物イオン(フッ素)による歯の結晶の修復・強化作用と、銀イオンによる殺菌・抗菌作用によって、むし歯の働きを抑え、進行を抑制します。
2. サホライドの効果
具体的なサホライドの効果をみていきましょう。
サホライドには、大きく分けて3つの効果が期待できます。
2-1. 初期虫歯の進行抑制
サホライドを初期の虫歯に塗布することによって、むし歯の進行を抑えることが出来ます。
そのメカニズムをみていきましょう。
むし歯で歯質が軟らかくなっている部位にサホライドを塗布すると、歯の内部に銀イオンとフッ化物イオンが取り込まれます。
銀イオンは殺菌・抗菌作用が強く、食品の痛み防止や、生活雑貨の抗菌グッズとしてもよく用いられていますね。
銀イオンをむし歯の部位に作用させると、銀イオンがむし歯菌を攻撃し、増殖を抑えてくれます。
そして、フッ化物イオンが、溶かされた歯の表面に作用し、唾液による歯の修復(再石灰化)や、歯の結晶の強化を行います。
サホライドのフッ素濃度は非常に高く、55,000ppmです。
市販のフッ素入り歯磨き粉のフッ素濃度である500〜1,500ppmの約35〜100倍。
歯科医院でフッ素塗布に用いるフッ素濃度である9,000ppmの約6倍もあります。
サホライドは、この銀イオンとフッ化物イオンの2つの働きによって、初期むし歯の進行を抑制していくのです。
2-2. 象牙質知覚過敏症の抑制
サホライドの中のフッ化物イオンが、歯の神経に刺激を伝える「象牙細管」という管を封鎖します。
それによって、外からの刺激が歯の神経に伝わりにくくなり、知覚過敏の症状を抑えます。
主に、被せ物や詰め物で治す予定の歯の、知覚過敏症状の緩和に用います。
2-3. 二次う蝕の抑制
歯を削って被せ物をする前の土台となる歯の部分に、サホライドを塗布します。
それによって、被せ物の下で再びむし歯が発生することを抑制します。
3. サホライドはどんな時に使う?
サホライドは、初期むし歯の進行抑制に用いることが最も多いでしょう。
歯を削ることなく、むし歯の進行を抑えることが出来るのは、サホライドだけだからです。
では、どのような症例でサホライドを使用するのかをみていきましょう。
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歯科治療に対して恐怖心があり、むし歯を削ることが出来ないお子さん
幼い頃は、恐怖心のほうが勝ってしまい、歯を削ることが出来ないお子さんも多いかと思います。
また、むし歯の治療では、むし歯を削ったあと、お薬で詰め物をする間、ある程度じっとしている必要もあります。
小さなお子さんや、怖がりさんには、なかなか高いハードルではありますね。
そのような時期に、歯を削らずに治療を行うことのできるサホライドは、お子さんの強い味方となります。
サホライドを用いることで、まずはむし歯の進行を抑制し、むし歯の治療が出来るようになるまで心身の成長を待ってから、改めてサホライドを塗って黒くなった部位を削って、白い材料で詰め直していく、ということができるのです。 -
歯科治療が困難な高齢者、要介護者、発達障害の方など
サホライドは子供の治療と思われがちですが、最近では成人や高齢者に使用する機会も増えてきています。
通常の歯科治療を受けることが困難な、要介護の方や発達障害がある方。
抗がん剤治療などの全身的な病気の治療などで、一定期間歯科治療を受けられない方などにも有効なのです。
特に最近では、介護が必要な方の奥歯の根元の部分など、目立たない部位でのむし歯処置の際に、温存療法としてのサホライド塗布も見直されてきています。
4. まとめ
- サホライドは銀イオンとフッ化物イオンの働きにより、むし歯菌の増殖を抑え、歯質を強化することによって、初期むし歯の進行を抑制する
- 初期むし歯の進行抑制の他にも、二次う蝕の抑制、知覚過敏の抑制効果がある
- サホライドは、小さなお子さんだけではなく、介護が必要な高齢者の方など、通常のむし歯治療が困難な方々にも、幅広く用いられる
サホライドは、銀イオンの殺菌・抗菌効果と、高濃度フッ化物イオンの歯質強化効果によって、非常に強力なむし歯進行抑制効果を発揮します。
しかし、サホライドには大きなデメリットがあります。
初期むし歯で軟らかくなっている部位に塗布した際に、銀イオンがコラーゲンなどの有機物に結び付き、黒く変化するのです。
これが「サホライドを塗ると、歯が黒くなる」と言われる現象ですね。
そのため、サホライドを用いた治療は、この「歯が黒くなる」というデメリットを理解した上で、それを上回るメリットがある場合に用いていく治療であると考えています。
次回は、サホライド治療のメリット・デメリットについて、サホライド治療の注意点について、お話していきましょう。
お口の中で、気になることがありましたら、何でもご相談ください。
笠貫歯科クリニックでは、皆様のお口の健康を末永く守っていきたいと思っております。

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