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子供の歯の削らない治療(サホライド治療) 〈後編〉

2025年10月4日

はじめに

削らないむし歯治療のサホライドって? ~サホライドのメリット・デメリット~

「子供にむし歯があるけれど、まだ小さいし、歯医者さんが怖くて行けない・・・」

そんな、小さなお子さんのむし歯治療として、サホライドという薬剤を用いた治療法があります。
歯を削らずに治療を行うことができるというメリットがある反面、むし歯だった部分が黒くなるなどのデメリットを含んだ治療上の注意点もあります。
また、最近は要介護の方のむし歯治療としても、見直されてきています。

前回は、サホライドとは何なのか、どんな時に使うかについて、お話していきました。
今回は、サホライド治療のメリット・デメリットについて。
また、治療上の具体的な注意点についてもお話していきましょう。

目次

1. サホライドのメリット・デメリット
 1-1. サホライドのデメリット
 1-2. サホライドのメリット
2. サホライド塗布後の注意点
3. まとめ

1. サホライドのメリット・デメリット

サホライドにはメリットもありますが、デメリットもあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1. サホライドのデメリット

サホライドといえば、「歯が黒くなる」というイメージが強いかと思います。
サホライドを塗布した部位全てが黒くなるわけではありません。
むし歯以外の部位にはサホライドは入り込まないので、黒くなるのは、あくまでむし歯のある部位のみです。

とはいっても、表から見えやすい部位に用いると、どうしても目立ってしまうので、前歯のむし歯に使用することは抵抗がありますね。
サホライドを使用する部位は、正面から見えない前歯の裏側や、奥歯の目立たない根元の部分、歯と歯の間などのことが多いでしょう。
お子さんに使用する場合は、乳歯のみに使用することがほとんどです。

また、サホライドは、初期のむし歯の進行を抑制するもので、むし歯そのものを失くすものではありません。
そのため、お口の中の清掃ができていないと、サホライドを塗布した部分に再びむし歯菌が集結して、むし歯が進行してしまうこととなります。
サホライドは「二度とむし歯ができなくなる薬」ではないのです。

サホライドの効果を持続させるためには、「1度塗布したら終わり」ではなく、3〜6カ月おきに経過観察を行い、必要があれば再度サホライドを塗布する必要があると理解しておきましょう。

さらに、進行したむし歯にサホライドを塗布しても、十分に効果を発揮することは出来ません。
症例によっては、使用できないこともあります。

治療中の注意点としては、サホライドは無色透明の薬剤ですが、苦みがあることが挙げられます。
そのため、塗布中に舌で触らないよう、気を付ける必要があります。
また、舌で触ったり、頬や唇に付着したりすると、粘膜が黒変することがあります。
これは1週間ほどで消失しますが、やはり注意が必要ですね。

1-2. サホライドのメリット

サホライドの最大のメリットは、削らずにむし歯の進行を抑制することができる、という点です。
これによって、患者さんの負担を軽くすることができます。

小さなお子さんでいえば、
「歯医者=痛いところ、ガリガリ歯を削られるところ、怖いところ」
というマイナスのイメージを最初に植え付けることなく、歯科治療に慣れていく時間を作ることができるのです。

例えば、乳歯のむし歯進行抑制の目的でサホライドを用いる場合、サホライド塗布を3〜4回、数日間隔で行うことが望ましいとされています。
少し、面倒でしょうか。
しかし、1回の治療時間は短いので、お子さんの負担になりにくく、
「はいしゃさんって、そんなにこわいところじゃないかな?」
と、お子さん自身に思っていただけるきっかけにもなるかと思います。

デメリットでも申し上げたように、サホライドを塗布することで、むし歯の部分は黒く変化します。
しかし、「むし歯になった部分=汚れが残りやすい部分」です。
今後同じ部位にむし歯ができないよう、お子さんの仕上げ磨きの際に、黒く染まった部分を目印にして、その部位を重点的に磨いていくことができます。

また、乳歯に使用した場合、あとから生えてくる永久歯はサホライドの影響を受けないということも、利点の1つといえるでしょう。

サホライドは保険が適応されますので、費用的にも負担は少なくなります。

お子さんの成長と共に「サホライドの黒い色がやっぱり気になる」と、感じることもあるかもしれません。
そんな時は、削ったり、詰めたりができるようになるまでお子さんの成長を待って、改めてサホライドで黒変した部分を削って、白いお薬で詰め直していくことも可能です。
それまではサホライドの効果でむし歯の進行を抑制することで、改めて治療を行う時に削る歯質の量も最小限にすることもできますね。

2. サホライド塗布後の注意点

最も大切なことは、サホライドを塗ったからといって、むし歯が治ったわけではない、ということです。
サホライドを塗っても、歯磨きがしっかり出来ていなければ、再びむし歯菌が集まってきて、増殖し、歯を溶かしていきます。

つまり、むし歯ができたということは、そこにむし歯となる原因があったと考えることが大切です。
そして、歯磨きの仕方や食生活、定期健診の頻度など、サホライドで治療した乳歯が永久歯に生え変わったあとも、再びむし歯が出来ることがないように、お口の中の環境作りを行っていくことが大切なのです。

3. まとめ

  • サホライドのメリットとしては、削らずむし歯の進行抑制ができる、患者さんの負担が少ない、保険が適応される、1回の治療が短く済むことなどがある
  • サホライドのデメリットとしては、塗布したむし歯の部分が黒変する、むし歯そのものをなくすものではない、進行したむし歯には使用できない、定期的な経過観察が必要、などがある
  • サホライド塗布後は、お口の中を清潔に保ち、再びむし歯にならないよう努める必要がある。
    定期的に経過観察を行い、必要があれば再度塗布を行う。

「歯が黒くなる」というデメリットから、サホライドは敬遠される治療かもしれません。
我々としても、無理にお勧めすることはいたしません。
しかし、使い方次第では、合理的な治療法であるということができます。

「乳歯だから、虫歯になっても大丈夫。」
いいえ。
乳歯のむし歯は、進行すると、その下に控えている永久歯の形成を邪魔するだけではなく、歯並びの乱れや発音、顎全体の成長にまで悪影響を及ぼすのです。

理想としては、むし歯ができる前から、定期健診を受けるようにしましょう。
もし、むし歯ができてしまったら、サホライドを含めた様々な方法で、お子さんのお口の健康を保っていくことができるよう、一緒に考えていきましょう。

要介護の方のサホライド治療についても、ご相談ください。

笠貫歯科クリニックでは、皆様のお口の健康を末永く守っていきたいと思っております。

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