マタニティー歯科の勧め マイナス1歳から始める虫歯予防②
2024年10月30日
「人生100年時代」と言われるように、日本の平均寿命は延び続けていますが、日常生活に制限のない、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」と平均寿命の間には、約10年の開きがあります。
健康上の問題などで、支援や介護を必要とする日常生活に制限のある期間が、約10年もあるということです。
いつまでも元気に過ごすためには「健康寿命」を延ばすことが大切です。
生きていくために欠かせないことは、「呼吸をすること」と「食べること」。
呼吸が楽にできる鼻、きちんと噛めて飲み込める口は、人生の質を左右します。
そして、一生使う口の土台は、お腹の中にいる時=マイナス1歳から作られるのです。
【目次】
- ◯口腔育成の第1段階は、3歳までが重要
- ◆上顎の成長
- ◆赤ちゃんの食生活と口腔との関係
- ◆早めに受診しよう
- ◯「かかりつけの歯科医院」の勧め
- ◯まとめ
口腔育成の第1段階は、3歳までが重要
「三つ子の魂百まで」と言われますが、「マイナス1歳から始める虫歯予防」のためにも、3歳までが重要な時期になります。
生まれたばかりの赤ちゃんの口の中は無菌です。
生まれてから、接する周囲の人からの細菌が赤ちゃんの口の中に移って定着し、その人固有の細菌の集団(細菌叢)が形成されます。細菌叢の50%が、いちばん接する時間が長い母親由来と言われています。特に虫歯菌は、乳歯の奥歯が生え始める18ヶ月(1歳半)頃から乳歯が全部生え揃う31ヶ月(2歳半)頃の間に最初の感染が集中しているとの研究があります。また、歯周病菌は、保護者、特に母親が歯周病を発症していると、その子供からも同じ歯周病菌が検出される率が高いことが明らかになっています。
細菌叢が善玉菌優位になるか、悪玉菌優位になるかは、3歳頃までにほぼ決まり、それが生涯に渡って続くと言われています。
上顎の成長
呼吸=鼻の土台となる上顎の前の部分(切歯骨)は、生後3ヶ月~6ヶ月の変化が最も大きく、永久歯が生える頃にはほぼ成長が終わります。
上顎を「歯が並ぶ土台」として見た場合、幅が広い方が、なんとなく将来、余裕をもって歯が並びそうだと思いませんか?
上顎、特に切歯骨の成長には、適切に哺乳・嚥下ができていることが重要です。
赤ちゃんの食生活と口腔との関係
0歳~1歳頃の赤ちゃんは、離乳食を通して、味を食感、舌触り、温度、匂い、色彩などの五感で感じながら、食べ物のおいしさを知っていきます。
「味わう」ためには、食べ物をよく噛み、舌で移動させ、舌の上の味を感じる細胞である味蕾(みらい)の色々な場所で味を感じることが必要になります。動かすことでおいしさが持続するため、食べ物を口の中に留めて舌で感じたり、よく噛んだりすることは、味覚を発達させるうえでとても重要になります。
よく噛んで味わうためには、赤ちゃんの状態に合わせた食べ物の形状を選択すること、適切な食べさせ方をすることが大切です。
また、食生活と虫歯が密接に関係していることはご存知だと思いますが、2歳~3歳は自我が発達して好き・嫌いを判断するようになります。早い時期に虫歯ができて歯科医院を受診する子供は、既に甘い物が好きだったり、 歯磨きが嫌いだったり、寝る時間が遅いなど、生活習慣が偏っていることがあります。
3歳までに身につけた嗜好や基本的な生活習慣は、その後、変えることが難しくなります。
基本的な生活習慣が確立した後から、「食生活に気をつけてください」「仕上げ歯磨きを頑張ってください」と言われても、 保護者も子供も大変な思いをすることになります。
早めに受診しよう
赤ちゃんが最初に歯科を受診するのは、1歳6ヶ月検診であることが多いと思いますが、その頃には、生涯に渡って影響する大事な時期が過ぎてしまっていることもあるのです。
この重要な時期に、歯科が関わることで、お子様が一生の財産を手に入れることができるよう情報提供し、お口の健康のお手伝いをしていきたいと思います。
マタニティの時期から、生まれてくる赤ちゃんの将来を考えて、保護者がお口を健康に育む知識を身につけることで、大変な思いをすることなく機能的で健康な口と身体を目指すことができます。
「赤ちゃんの時に知っていれば…」とならないためにも、生まれてくる赤ちゃんのことを一緒に学んでいきましょう。
「かかりつけの歯科医院」の勧め
「マタニティー歯科の勧め マイナス1歳から始める虫歯予防①」と今回で、マタニティー歯科をお勧めする理由を述べてきました。
マタニティー歯科は、「口の中の状態が悪くなったから、歯が痛くなったから行く」所ではありません。妊婦さんと生まれてくる赤ちゃんの「お口の健康を守るための歯医者」です。
「お口の健康を守るための歯医者」、それが「かかりつけの歯科医院」です。
「かかりつけ歯科医院」のポイントは、「リスクに応じたケア」を実施することにあります。一人一人の生活背景を把握し、病気のリスク因子をきちんと検査・分析して、リスク管理=定期的なメインテナンスを行うのが、かかりつけ歯科医院の役割です。
痛みやトラブルが起こった時に処置に行く歯科医院は、本当のかかりつけではありません。
虫歯で処置を行った歯は、元の健康な状態に戻ることはありません。虫歯を削って、詰めたり被せたりすれば、噛めるようにはなりますが、それは虫歯が「治った」のではないのです。
視力が悪い人が、眼鏡やコンタクトレンズを使うことに似ています。眼鏡やコンタクトを使えば「見える」ようになりますが、視力が良くなった訳ではありません。
虫歯で詰めたり被せたりした部分は、その後虫歯が再発するリスクが高くなります。何か起きてから対処するを繰り返しているのでは、口や歯の状態は以前より悪くなってしまうのです。
まとめ
・赤ちゃんのために、安心できるかかりつけの歯医者を見つけましょう!
・生まれてくる赤ちゃんのために、お母さんの口の中を健康に保つことも大切です!