歯科医に聞きたい!「この治療、あと何回で終わりますか?」
2024年6月11日
歯科医に聞きたい「この治療、あと何回で終わりますか?」
診療中に患者さんからよく尋ねられる質問の一つにこのタイトルの言葉があります。
歯医者に通院するといえば、しばらくの期間通わなければならない、通院回数が多い、というイメージを持たれている方も少なくないと思います。
実際に、歯科治療の中で一度で終了するケースというのは限られています。
そして何をゴールとして終了とするのか、また治療のゴールがどこなのかによっても治療期間が変わってきます。
今回は、こういった治療期間や回数と実際の歯科治療との関係についてお話ししていきたいと思います。
【目次】
◯虫歯治療のパターン
◆治療ステップは虫歯の大きさ、深さで決まる
◯根管治療のパターン
◆歯根、根管の形は未知!
◯歯周病治療のパターン
◯治療計画は患者さんと一緒に立てるもの
虫歯治療のパターン
詰め物が取れた、歯が欠けた、冷たいものがしみるなどの訴えから虫歯治療がスタートすることが多くあります。
みなさんの中にも、ある日突然詰め物が取れ、歯科医院を予約したことがある方もいらっしゃるでしょう。
虫歯治療の基本は、虫歯の細菌が存在する部分を削り、削ったところを埋めてお口の機能を回復させる、というのものです。
この虫歯治療は一般的にどれくらいの期間で完了するのか、またそれを左右する要因は何でしょうか。
◆治療ステップは虫歯の大きさ、深さで決まる
虫歯の範囲や大きさによって、必要な治療ステップが変わってきます。
比較的小さい虫歯であれば、削ってその場で樹脂でつめることができるので、一回の処置で終わらせることが可能です。
ただし範囲が大きく、かつ歯と歯の間にできたような虫歯の場合はその場で詰めることが出来ないこともあります。
その日は詰め物の型取りをして終了し、次回に出来上がってきた詰め物をセットすることとなり、最低でも2回の通院が必要です。
つまり、特に強い症状がなくても、虫歯の範囲が大きければ治療ステップが増えることがあるということです。
一方で範囲は小さくても深くまで進行している虫歯もあります。
特に年齢が若い方に多くみられます。
虫歯が深いということは、削っていくと神経に近づいていくということなので、虫歯を取った後に痛みが出ることがあります。
一時的な痛みはあるかもしれませんが、それが続かないかどうか、予後がどうかをある一定の期間確認することがあります。
中には数ヶ月にわたって経過をみることもあります。
このように、虫歯治療は虫歯の範囲や深さに応じて踏む治療ステップが異なり、それによって治療期間も変わってきます。
根管治療のパターン
歯の根には「根管」と呼ばれる管が通っています。
根管治療とは、細菌で汚染された根管を消毒する治療をいいます。
みなさんの中にはこの歯の根の治療の時は何回も通院した、という方もいらっしゃるかもしれません。
実際、根管治療中の方からは特にタイトルになっている「あと何回かかるのか」という質問を多く受けます。
なぜ根管治療は回数がかかるのでしょうか。
◆歯根、根管の形は未知!
歯の根の形やその中の根管の形は人それぞれ、千差万別です。
特に、根管は、歯根の先端にいくに従って無数に枝分かれしているケースもあり、構造が非常に複雑です。
この根管をできる限りしっかり目視できるような顕微鏡も使用して治療する医院も増えてきましたが、それでも確実にその構造全てを把握することは困難です。
根管治療はこういった中で処置していくため、正しい治療法で処置しても、膿がまだ出ている、出血がある、などの症状が治まらない場合は消毒、貼薬のための通院が必要となります。
そして、根管内に入れたお薬をしっかり効かせるには1週間は必要という報告もあり、来院の間隔が短すぎると欲しい治療効果が得られなくなります。
また顎骨の中、つまり体の中で起こっている炎症であるため、その治療を受けている方の体調や免疫力も治療効果に影響します。
このように、根管治療には歯根の複雑な構造が故に、治療回数が多く必要となることがあります。
歯周病治療のパターン
歯周病とは歯を支える骨が溶けていく病気です。
歯周病の原因はお口の中の細菌ですが、この細菌が歯周ポケットと言われる歯と歯茎の隙間に炎症を起こし、その炎症が続くと、歯茎だけではなく骨も溶けていきます。
この歯周病の治療の第一歩は、お口の中の細菌を減らすことですが、正しいブラッシングと同時に細菌と歯垢が石灰化した歯石の除去が必要です。
この歯石除去に必要な治療期間、回数は、付着している場所や量、硬さ、そして歯周病の重症度などによって異なります。
重度歯周病の場合は、やはり歯石の付着範囲も広く、量も多くあるため一度で全て取り除くことはできません。複数回に分けてしっかり時間をかけて取り除くことが必要となります。
さらに、歯肉の状態や骨の回復などは治療後すぐに結果が得られるものではなく、長期的な目線で経過を見ていかなければなりません。
そのため、治療期間が長くなることがあります。
治療計画は患者さんと一緒に立てるもの
ここまで、虫歯治療、根管治療、歯周病治療でのそれぞれの治療期間やなぜ複数回の通院が必要なのか、などを説明してきましたがいかがでしょうか。
上で説明したように、歯科治療では一つの治療の中に多くの処置ステップがあり、また歯科には症状などの経過をみながらの治療が比較的多く含まれます。
こういったことから、治療期間がどうしても長くなることがある、というのをみなさんに是非知っておいていただければと思います。
ただ一方で、治療を受ける患者さんにおいても、生活スタイルやお仕事の状況、例えば長期出張がある、翌日は大事な行事を控えていて痛みの出る処置は避けたい、など、それによって通院できるタイミング、可能や処置などもさまざまなことと思います。
治療する側の歯科医師や歯科衛生士は少しでも効率的に、そしてスムーズに治療が進むように治療計画を組み立てていきます。
しかしながら、その治療計画では患者さんがなかなか通院できないとなれば、やはり治療が中断してしまいます。
実際、毎週来院されていた方がお仕事の都合がつかずに徐々に通院が途絶えるというのは少なくありません。
そこはやはり一番避けたいところです。
こういったことから、歯科医師、歯科衛生士にはご自身の生活スタイルを踏まえ、治療スケジュールの中で特に留意してほしい点があれば是非お伝え下さい。
それによって歯科医師の方も処置内容を可能な限りそれに対応するようにできるからです。
治療計画は歯科医師だけではなく、患者さんと一緒に立てていくものです。
今すでに治療をスタートしているがなかなか治療が進んでいないように感じている方はもちろん、これから治療スタートする方も、歯科医師や歯科衛生士と今後の治療計画や治療のゴール、通院
スケジュールについて是非一度お話ししてみてください。
そして今回の記事を参考に、みなさんのより良い歯科治療に繋げていただければと思います。