機能的矯正装置を使った歯列矯正の利点
2024年12月15日
こんにちは 歯列矯正と聞くとどんなイメージが浮かびますか? 歯の表面につけたブラケットという金具とそこに通したワイヤーで歯並びを整えるマルチブラケット矯正でしょうか。それともマウスピースで歯並びを整えるマウスピース矯正でしょうか。実は、小児矯正ではこのようなイメージと全く異なる歯列矯正が行われています。それは機能的矯正装置を使った歯列矯正です。機能的矯正装置を使った歯列矯正には、一般的にイメージされる歯列矯正にはないさまざまなメリットがあります。今回は、小児矯正で行われる機能的矯正装置を使った歯列矯正についてお話しします。
機能的矯正装置とは
機能的矯正装置とは、機能的矯正力を使って歯列不正の改善を図る矯正装置です。
機能的矯正力について
機能的矯正力として利用するのは、下顎を動かす咀嚼筋や舌骨上筋などの筋肉の力です。機能的矯正装置は筋肉の力を使って歯並びを整えていく矯正装置なので、単に機能的矯正装置をつけただけでは、歯並びは変わることはありません。機能的矯正装置をつけて上下の歯を噛み合わせることで、咀嚼筋や舌の筋肉を使う、もしくは必要以上に使わないようになり、矯正力が生まれます。こうすることで、顎の骨格の成長発育を整えたり、歯を理想的な位置に動かしたりするのが機能的矯正装置の役割です。
普通の歯列矯正との違い
一般的に歯列矯正としてイメージされるマルチブラケット矯正やマウスピース矯正は、器械的矯正装置と言います。これらは、矯正装置自体に矯正力が備わっており、矯正装置が歯や顎の骨にダイレクトに矯正力を加えることで、歯並びを整えていきます。機能的矯正装置そのものには矯正力は備わっていませんので、この点で機能的矯正装置と普通の歯列矯正とでは、大きく性格が異なります。
機能的矯正装置のおすすめの開始年齢
機能的矯正装置はお子さんの成長発育を利用した矯正装置です。顎の骨の成長発育は、上顎と下顎で成長期に違いがあります。症状により適した年齢が異なりますから、気がついたら適切な時期を過ぎていたということも起こり得ます。早めにご相談になることをお勧めします。
機能的矯正装置の利点
機能的矯正装置を使った歯列矯正にはどのような利点があるのでしょうか。
後戻りを起こしにくい
後戻りとは、一度きれいに整えた歯の位置が、元の位置に戻ろうとする現象です。機能的矯正装置を使った歯列矯正は、乳歯から永久歯への歯の生え変わりの時期に行います。新しく生えてきた歯の位置を、理想的な位置に時間をかけて無理がないように整えていきます。身体にとっては、初めから歯がその位置にあったような感じになりますから、歯列矯正を終えた後につきものの後戻りを起こしにくいという利点が得られます。
歯並びに影響する癖も治る
歯並びに影響する癖はいろいろあります。お子さんの場合、指しゃぶりが代表的です。指しゃぶりをする癖のあるお子さんに機能的矯正装置をつけると、機能的矯正装置が邪魔で指しゃぶりをしたくてもできなくなります。これはあくまでも一例ですが、機能的矯正装置は歯並びに影響する癖を解消させる効果も期待できます。
骨格も同時に整えられる
機能的矯正装置には、歯並びだけでなく、顎の骨格の成長発育を適切な方向に誘導する効果もあります。このため、機能的矯正装置を使った歯列矯正を受けると、歯並びがきれいになると同時に、顎の骨格もきれいに整えられます。
虫歯のリスクが低い
機能的矯正装置は、取り外しタイプの矯正装置になります。食事のときはもちろん、歯磨きのときも外します。マルチブラケット矯正のように取り外しできない矯正装置ですと、歯磨きが難しいので虫歯のリスクが高くなります。機能的矯正装置なら、歯磨きを普通にしていただけるので、虫歯になるリスクが低く抑えられます。
永久歯の歯列矯正への好影響
機能的矯正装置で歯列矯正を受けると、永久歯の歯並びになったときに歯列矯正をしなくても済む可能性が生まれます。たとえ、何らかの歯列矯正をしなくてはならなくなったとしても、機能的矯正装置を使った歯列矯正を受けていれば歯列矯正の治療期間を短く抑えられます。
機能的矯正装置の難点
利点の多い機能的矯正装置ですが、難点もあります。
時間がかかる
機能的矯正装置を使った歯列矯正はご自身の筋力を矯正力として利用するため、矯正装置自体が矯正力を生み出す一般的な歯列矯正と比べると、矯正力が弱く、したがって時間がかかってしまいます。
1日の装着時間を守らないと効果が出ない
機能的矯正装置は、夜間を中心に装着する矯正装置です。夕食後や寝る前につけ忘れるなどして、装着時間が短くなると、効果が得られません。
無くしてしまう可能性がある
機能的矯正装置は、学校に行っている間は基本的に外してあり、ご自宅で保管してもらっています。外している時間が長いため、知らず知らずのうちに置いていた場所を忘れてしまい、無くしてしまうリスクがあります。
お子さん専用
機能的矯正装置を使った歯列矯正は、お子さんの成長発育を利用して歯並びや顎の骨格を整える治療です。成長期を過ぎた大人の方には使っても効果が得られません。あくまでもお子さん用に開発された矯正装置です。
まとめ
今回は、機能的矯正装置を使った歯列矯正についてお話ししました。機能的矯正装置を使った歯列矯正は、お子さんの筋肉の力を使った歯列矯正です。
- 後戻りを起こしにくい
- 歯並びに影響する癖も治る
- 骨格も同時に整えられる
- 虫歯のリスクが低い
- 永久歯の歯列矯正への好影響
などの利点が得られます。時間がかかるなどの難点もありますが、小児矯正の優れた選択肢のひとつであることがご理解いただけたのではないかと思います。機能的矯正装置を使った歯列矯正は、専門的な知識と経験が欠かせません。もし、ご興味をお持ちになった方は、当院に是非お越しください。