親知らずがむし歯になったら抜くべき? むし歯になりやすい理由とは?
2024年8月29日
「親知らずはいつか抜かなきゃいけない?」
そう悩んでいる方も、多いようですね。
では、その親知らずがむし歯になったら??
絶対に抜かなければいけないのでしょうか。
そもそも、どうして虫歯になった親知らずは抜かなければいけないのでしょうか。
ここでは、親知らずとむし歯の関係について、親知らずがむし歯になった場合、どのような時に抜く必要があるのかをお話していきます。
また、親知らずがむし歯になりやすい理由についてもお話していきますね。
目次
1. 親知らずとは
親知らずとは、歯並びの最も後方に生える永久歯のことで、第三大臼歯、智歯(ちし)とも呼ばれます。
生える時期も永久歯の中で最も遅く、「気が付いたら生えていた」「親が知らないうちに生えていた」ということが多いので、「親知らず」と呼ばれるようになったそうです。
現代人の顎の大きさは小さくなってきていることから、歯の生えるスペースも少なくなっている傾向にあります。
それにより、現代人の親知らずは退化傾向にあります。
そのため、親知らずは手前の歯と比較して、形が小さいことも多く、先天的に存在しない方もいるのです。
もちろん、他の歯と同じように、真っすぐ生えてきて上下の歯で咬み合うケースもあります。
しかし、生えるスペースが足りないために斜めになって生えてくることや、歯の一部分だけ歯肉から顔を出して、その他の部分は歯肉の中に埋まっている状態のままになるケースも多く認められます。
2. 親知らずがむし歯になりやすい理由
「親知らずは虫歯になりやすい」という傾向にあります。
それはなぜなのでしょうか。
また、親知らずには、むし歯以外にも気をつけなければいけないことがあります。
「親知らずは抜いたほうが良い」という理由にも繋がりますので、あわせてみていきましょう。
◆2-1. 磨きにくさ
親知らずは、お口の中の最も奥に位置しているので、歯ブラシの毛先を届かせるのが難しい場所ということができます。
また、親知らずが完全に生えずに一部分だけ歯肉から顔をのぞかせている場合は、余計に歯ブラシの毛先が当たりにくくなります。
そのため、汚れがたまりやすく、細菌が増殖しやすいのです。
◆2-2. 萌出の方向・角度
歯列の中で、親知らずは最後に生えてきます。
そのため、親知らずが生えてこようとした時には、歯が生えるスペースが埋まってしまっていることも少なくありません。
萌出スペースが足りないことで、親知らずが斜めに生えてくることも多くなります。
すると、隣り合う歯との間に汚れの溜まりやすいスペースが生じやすくなります。
このようなスペースは、清掃がしにくい部位となり、むし歯になりやすくなるのです。
◆2-3. 咬み合わせに関与しない
親知らずが斜めに生えている場合や、反対側の親知らずが生えてこない場合など、咬み合う相手がいないことも親知らずにはよくあることです。
歯は食べ物を咬み砕く際に、歯の表面に付着している汚れが、食べ物と当たることによって除去されていく効果があります。
これを「自浄作用」といいます。
咬み合わせに関与しない歯には自浄作用が生じないので、一度付着した汚れがその場に停滞しやすくなります。
◆2-4. 親知らず特有の病気「智歯周囲炎」
親知らずには、むし歯以外にも気をつけなければいけない病気があります。
それは「智歯周囲炎」(ちししゅういえん)です。
親知らずの周囲には、汚れがたまりやすく、細菌が増殖しやすいという特徴があります。
智歯周囲炎とは、親知らず周囲で増殖した細菌の出す刺激や毒素などによって、歯周組織に炎症が生じることをいいます。
簡単に言うと、親知らずの周りが腫れて、痛みを生じてしまうのです。
放置すると腫れがひどくなり、顔が腫れることや、激しい痛み、発熱、開口障害などにもつながります。
智歯周囲炎の場合、投薬によって腫れや痛みといった症状を和らげることや、歯肉を切開して溜まった膿を出して腫れを引かせるなどの処置を行いますが、それは一時的な処置に過ぎません。
根本的な治療としては、炎症の原因となる親知らずの抜歯を行うしかありません。
一時的に炎症を抑えることはできても、今後いつ腫れるかわからないといったドキドキ感が、歯が存在する間は続くようになります。
3. どんな時に、親知らずを抜くべきか
では、親知らずは全て抜かなければいけないのでしょうか。
ここでは、親知らずにむし歯が出来たとき、どんな時に抜かなければいかないのか。
どんな時は親知らずを抜かなくてもよいのかについて、みていきましょう。
◆3-1. 親知らずを抜いたほうが良いケース
親知らずがむし歯になった場合、どのような時は抜歯を選択したほうが良いのかをみていきましょう。
- 自分で清掃することが難しい
親知らずは、お口の奥の方に生えてきます。
そのため、なかなかご自身で清掃を行うのが難しい場合もあるでしょう。
それが原因でむし歯が出来ているとしたら、例えむし歯の治療を行ったとしても、再びむし歯になるリスクが非常に高くなります。
そのような場合は、抜歯を検討するのが良いでしょう。 - 隣の歯に悪影響を及ぼす
親知らずが横向きに生えてきていて、隣の歯をグイグイ圧迫している場合や、親知らずがあることによって、隣の歯の親知らずと接している部分に汚れがたまりやすく、細菌の温床となりやすい場合。
そのような時は、隣の歯を守るために、むし歯の有無に関わらず親知らずの抜歯を選択することがあります。 - 咬み合わせに参加していない
親知らずが斜めに生えていて、咬み合わない。
咬み合う歯がないために、咬み合わせに参加していない。
そのような場合は、頑張ってむし歯の治療を行う必要がないと考えられます。
また、先述したように、咬み合わせに参加していない歯は汚れが付着しやすいため、管理も大変になります。
ブリッジの土台となる・他部位への移植の可能性があるなど、その歯の利用価値があるという場合を除いて、無理に残す必要があるのか考える必要があります。 - 何度か腫れたことがある
先ほどお話した智歯周囲炎によって何度か腫れた経験がある歯がむし歯になった場合は、抜歯していくことをおすすめします。
むし歯がなかった場合でも、頻繁に智歯周囲炎を繰り返す場合は、抜歯をおすすめします。
それには理由があります。
智歯周囲炎で腫れている時や、痛みがある時は、歯を抜くことはできません。
投薬などによって腫れを一旦鎮めてから、改めて抜歯をすることになるのです。
智歯周囲炎はいつ起こるかわかりません。
そのため、大切な仕事や試験の前などに智歯周囲炎が生じたとしても、すぐ抜歯を行うことができないのです。
女性の場合は、妊娠中や授乳中などで出来るだけ薬を服用したくない時期なども出てくるかもしれません。
そのようなことを考えると、頻繁に智歯周囲炎を繰り返す場合は、症状が落ち着いている時期に、ご自身のタイミングの良い時を見計らって抜歯をすることをおすすめします。
◆3-2. 親知らずを抜かなくても良いケース
では、親知らずを抜かずにむし歯治療を行ったほうが良い場合をみていきましょう。
- まっすぐ生えていて、上下の歯で咬み合っている
- 周囲の歯や咬み合わせなどに、悪影響を及ぼしていない
- 移植、ブリッジの土台の歯として利用する可能性がある
もちろん、治療を行うにあたって、治療器具が歯まで届き、精密な治療を行うことが出来るということが大前提となります。
その上で、親知らずの抜歯に悩んでいるようであれば、一旦むし歯の治療を行い、その上で経過をみていくという方法もあるかと思います。
4.まとめ
- 親知らずがむし歯になりやすいのは、親知らずが歯並びの最奥に位置すること、傾いて生えてくることや、歯肉に埋まった状態になることが多いため、清掃がしにくいことによる。
- 親知らずは、歯の周囲に汚れが残りやすいことから、親知らず周囲歯肉に炎症が起こる「智歯周囲炎」になることがある。
- 自分で清掃が難しい、隣の歯に悪影響を与える、咬み合わない、何度か腫れたことがある(智歯周囲炎)場合は、親知らずの抜歯を検討することを勧める。
- まっすぐ生えていて、上下の歯で咬み合っている、移植やブリッジの土台として利用する可能性がある場合は、むし歯の治療を行い、親知らずを抜歯せず残していくことを検討する。
むし歯の有無に関わらず、親知らずを抜く、抜かないで迷っている時は、歯科医院で相談してみましょう。
お口の中の状態は、人それぞれ異なります。
笠貫歯科クリニックでは、親知らずを残した場合、抜歯した場合のメリット・デメリットについて、しっかりと説明した上で、お口の中の将来について、一緒に相談させていただきます。