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メタボリックシンドロームと歯周病

2024年8月26日

メタボと歯周病。
全く別の病気だと思われがちですが、実は、メタボと歯周病の間には、密接な相関関係があることをご存じですか?
今日は、メタボと歯周病について、両者の関係とその対処法についてお話ししていきましょう。

目次

1. メタボってなに? 肥満とは違うの?

まずは、メタボとは何なのか。肥満との違いについてみていきましょう。

身体の中には、2種類の「脂肪」が存在します。
「内臓脂肪」と「皮下脂肪」です。

肥満とは、脂肪の種類にかかわらず、身体に脂肪が過剰に蓄積した状態のことです。
肥満の基準としてはBMI指数で判断し、BMIが25以上のことを肥満とみなします。
(BMI : Body Mass Index 世界共通の肥満度の指標。体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m))

それに対して、身体の中に内臓脂肪の蓄積が認められるのがメタボリックシンドロームです。
日本におけるメタボリックシンドロームの基準は、腹囲が男性で85cm以上、女性で90㎝以上あるということに加えて、
高血圧・高血糖・脂質代謝異常のうち、2つ以上が基準値を超える状態になります。

内臓脂肪の蓄積は、動脈硬化や高血圧、糖尿病、心筋梗塞などの心臓病、脳卒中、高脂血症などの生活習慣病を引き起こしやすくします。
メタボリックシンドロームは内臓脂肪症候群とも言われ、生活習慣病の予防・重症化及び合併症を防止するために、2008年度からメタボリックシンドロームに着目した特定健康診査が行われるようになりました。
そして、2018年度から健診の際の質問票に歯科の要素が組み込まれました。
これは、メタボリックシンドロームに歯科領域が密接に関わっているということが、判明したからなのです。

2. メタボリックシンドロームと歯周病の関係

メタボリックシンドロームの人は、歯周病にかかりやすく、また悪化しやすいという統計結果が出ています。
また、歯周病はメタボリックシンドロームを悪化させる原因になることも知られています。

では、メタボリックシンドロームと歯周病がどのように関わっているのかをみていきましょう。

◆2-1. メタボリックシンドローム ➡ 歯周病

メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪の蓄積量が多く認められます。
内臓脂肪が蓄積すると、炎症性物質(サイトカイン)が放出されます。
すると、血糖値を調節するインスリンの働きが悪くなり、血糖値が下がりにくくなります。(高インスリン血症)
その影響を受けて、全身の血管の状態が悪くなり、栄養や酸素を全身に運ぶ能力が低下し、免疫力も低下することとなります。
その結果、感染症にかかりやすくなったり、全身の臓器に悪影響が及んだりするのです。
歯周病という観点から考えてみると、歯肉および歯を支える歯槽骨の血流が悪くなることで、歯周病菌に対する免疫力が低下します。
その結果、歯周病になりやすく、また、悪化しやすくなるのです。

◆2-2. 歯周病 ➡ メタボリックシンドローム

では、今度は歯周病側からみてみましょう。
歯周病では、歯周病性細菌が歯肉ポケット及び歯肉に入り込み、増殖します。
それによって、歯肉に炎症が生じます。
炎症によって歯肉内の血管が拡張し、歯周病原性細菌が血流に乗って心臓や全身に回ります。
近年の研究により、この歯周病原性細菌は、炎症性物質(サイトカイン)を放出することがわかってきました。
つまり、全身の血流に乗った歯周病原性細菌が炎症性物質(サイトカイン)を放出し、血糖値を調節するインスリンの効きを悪くするのです。
その結果、血糖値が下がりにくくなる高インスリン血症を引き起こします。
それによって、メタボリックシンドロームを発症・悪化させてしまうこととなるのです。

3. 歯科の観点からみた メタボで改善すべきこと・歯周病で改善すべきこと

ここでは、歯科としての観点からみた、メタボリックシンドローム、および歯周病の改善方法をみていきます。

◆3-1. 歯周病で改善すべきこと

歯周病からメタボリックシンドロームを引き起こさないように、どのようなことに気をつけていけば良いのかをみていきましょう。

1. 毎日の歯磨きをていねいに

歯周病予防の基本は、毎日の歯磨きですね。
自分に合った歯ブラシを使って、丁寧に磨く習慣をつけましょう。
歯ブラシだけではなく、歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助清掃具を用いることで、ぐっと効果が上がります。

2. 定期検診の受診

お口の中の状態や、生活習慣、持病の有無によっても定期検診の頻度は異なります。
決められた期間での定期検診を受けるようにしましょう。
検診の際には、むし歯の有無だけではなく、歯肉の状態や歯石の有無、ブラッシングの仕方などもチェックしていきます。
歯磨きの仕方は、どうしても癖がつきやすいものです。
歯科医院で磨き残しやブラッシング圧などのチェックを受けることで、ご自宅での毎日のブラッシングをより効果的に行うことが出来るようになります。
歯を支えている歯槽骨や顎骨、顎関節の状態なども、レントゲン写真などによって定期的に確認していくと良いでしょう。

◆3-2. メタボリックシンドロームで改善すべきこと

次に、メタボリックシンドロームを引き起こさないように、お口の中で出来ることをみていきましょう。

1. よく咬んで食べる

メタボリックシンドロームは、生活習慣病です。
そのため、改善のためには、生活習慣を見直すことが大切になってきます。
歯科の領域で、メタボ対策として出来ることは、「よく咬んで食べること」です。
よく咬んで食べることには、様々なメリットが存在します。

  • よく咬んで食べることにより早食べの習慣を改善することができる
  • よく咬むことにより、満腹中枢が刺激され、食べすぎを防ぐことができる
  • 咬むことにより唾液の分泌が促進され、唾液による口腔内の殺菌・消毒効果や自浄作用を期待することができる
  • 食べ物が細かく粉砕されることで、消化酵素と混ざりやすくなる。それにより、消化を助け、胃腸の負担を軽減することができる

2. 早めに歯の治療を行う

よく咬むためには、歯があることが必要です。
そのためにも、今ある歯を長く使っていくことが出来るようにしていく必要があります。
むし歯は放置しても治りません。
早めに治療を行うことで、失う歯質の量を最小限にすることが出来ます。
また、残せない歯や、既に失われた歯をそのまま放置してしまうことにより、周囲の歯まで悪影響を受けることが多くあります。
歯を失った部分は、ブリッジ、義歯、インプラントなどの補綴処置を行うことで、再び咬むことが出来るようになります。

3. 歯科検診を定期的に行う

歯を失う原因の第一位は、歯周病です。
そして、歯周病は、本人の自覚がないままに静かに進行していきやすい病気でもあります。
気付いた時には歯周病がかなり進行していた・・・ということにならないよう、定期的な検診を欠かさないようにしましょう。
また、歯を失う原因の第二位はむし歯です。
検診では、むし歯のチェックも行っていきますので、ご安心ください。

4. まとめ

  • メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積に加えて、高血圧・高血糖・脂質代謝異常が認められることにより、心臓病や糖尿病・脳卒中などの生活習慣病になるリスクが高い状態のこと
  • メタボリックシンドロームでは血流の流れが悪くなり、歯周病になりやすく、悪化しやすい
  • 歯周病では、メタボリックシンドロームでの血流の流れを悪くする物質(サイトカイン)と同じサイトカインの放出が認められるため、メタボリックシンドロームの発症・悪化を引き起こしやすくなる。
  • つまり、メタボリックシンドロームと歯周病は、お互いにその発症と悪化に関与している。
  • 歯周病で改善すべきことは、「毎日の歯磨き」「定期的な歯科検診の受診」である
  • メタボリックシンドロームで改善すべき口腔内のこととしては、「よく咬んで食べる」「早めに歯科治療を行う」「定期的な歯科検診の受診」である

メタボリックシンドロームと歯周病。
この2つは、お互い体に悪影響を与えてしまう間柄なのです。

しかし、別の視点からみれば、メタボリックシンドロームを改善することは、歯周病の進行抑制となり、
また、歯周病を改善することは、メタボリックシンドロームの発症および進行を抑えることが出来るともいえるのです。

将来の生活習慣病を予防するためにも、今できることを実行していきましょう。
笠貫歯科クリニックでは、お口の中から皆様の全身の健康作りのお手伝いをしていきます。

お口の中で気になることがあれば、何でもご相談ください。

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