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硬水と軟水で歯はどう変わる? ー水質と口腔環境の意外な関係

2026年2月7日

◯はじめに

私たちが日々口にする「水」は、一見同じように見えても、その成分は地域によって大きく異なります。特に注目すべきなのが、「硬水」と「軟水」の違いです。この区別は、水中に含まれるカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)といったミネラルの量、すなわち「硬度」によって定められています。

例えば、日本の水道水はほとんどが軟水ですが、ヨーロッパや中東、北アフリカなどでは硬水が主流です。このような水質の違いが、私たちの歯や口腔内の健康に影響を与えている可能性があることは、あまり知られていないかもしれません。歯石の沈着、歯の着色、さらにはエナメル質への影響など、水の「硬さ」が歯に与える影響について詳しく見ていきましょう。

◯目次

  • 硬水と軟水の基礎知識
  • 歯石と水の硬度の意外な関係
  • 歯の着色と水中のミネラルの影響
  • 硬水と炭酸水の違い:誤解されやすいポイント
  • 硬度とフッ素の違いと、フッ素の補い方
  • 地域に応じた予防ケアのすすめ
  • まとめ

◯硬水と軟水の基礎知識

「硬度」は、1リットルの水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量(mg/L)で数値化されます。WHO(世界保健機関)の基準では以下のように分類されています。

軟水:0〜60 mg/L
中程度の硬水:60〜120 mg/L
硬水:120〜180 mg/L
非常に硬水:180 mg/L以上

日本国内の平均的な水の硬度はおよそ50 mg/L程度とされており、これは軟水に該当します。地域差もあり、東京都など関東圏では70〜100 mg/L程度とやや硬めであるのに対し、北海道や東北地方は20〜40 mg/Lと非常に軟らかい水質となっています。

一方でフランス・ドイツ・イタリアといったヨーロッパ諸国では、硬度が150〜300 mg/Lを超える地域も珍しくなく、飲み慣れていない日本人が現地の水道水を飲むと「味が重い」「のど越しが悪い」と感じることもあるほどです。

◯歯石と水の硬度の意外な関係

歯石は、口腔内に残ったプラーク(歯垢)が、唾液中のミネラルと結合し、石灰化することで形成されます。特にカルシウムやリン酸塩といったミネラル成分が、歯垢の表面に沈着することで硬化し、歯石となります。

このプロセスにおいて、水に含まれるミネラル、つまり硬度が高い硬水は重要な役割を果たす可能性があります。硬水を常飲している人の唾液中では、ミネラル濃度が高まることがあり、それによって歯石がより短期間で形成されやすくなるという報告もあるのです。

実際に、欧州や中東など硬水地域の歯科医師の中には「日本人に比べて歯石が短期間で堆積する傾向がある」と指摘する声もあります。しかしながら、歯石の沈着は水の硬度だけで決まるものではなく、歯磨きの習慣や頻度、食生活、さらには唾液の分泌量や体質といった要素も大きく関与しています。そのため、「硬水=歯石が多くなる」と一概には言えませんが、歯科予防の観点からは十分に注目すべきポイントといえるでしょう。

◯歯の着色と水中のミネラルの影響

歯の着色、特に歯の表面に現れる黒い汚れ(ブラックステイン)は、見た目だけでなく、プラークの付着や歯周病のリスクにもつながります。この着色の原因の一つが、水に含まれる「鉄」や「マンガン」といった金属イオンです。

日本の水道水では、これらの成分に対し「水道水質管理の二次基準(審美基準)」が設けられており、鉄は0.3 mg/L以下、マンガンは0.05 mg/L以下と定められています。しかし、井戸水を利用している地域や、古い配管を通った水道ではこれらの値を超えることがあり、慢性的な着色の原因となることがあります。

ブラックステインが付着してしまうと、通常の歯磨きでは除去しづらいため、歯科医院での専用クリーニング(PMTC)が必要となる場合があります。歯の審美性を保つだけでなく、口腔内の清潔を維持するためにも、水質チェックは重要な予防策です。

◯硬水と炭酸水の違い:誤解されやすいポイント

「炭酸水は歯に悪い」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、炭酸水と硬水はまったく別の概念です。歯への影響を与えるのは、炭酸水の「酸性度(pH)」によるものです。pHが5.5を下回ると、歯のエナメル質が脱灰しやすくなるとされており、これは「酸蝕症(さんしょくしょう)」と呼ばれる現象です。

ただし、硬水ベースの炭酸水にはカルシウムなどの緩衝作用が働くため、酸によるエナメル質の溶解がやや抑えられるという研究結果も存在します。無糖でフレーバーのついていない炭酸水であれば、日常的に飲んでも大きなリスクにはなりにくいと考えられています。

◯硬度とフッ素の違いと、フッ素の補い方

水の硬度が歯の健康に影響を与える一方で、虫歯予防に直接関与する成分として「フッ素(フッ化物)」があります。フッ素には歯の再石灰化を促進し、初期の虫歯の進行を抑える効果がありますが、水の硬度(カルシウム・マグネシウム)とは全く別の成分です。

日本の水道水には、フッ素がほとんど含まれていないため、欧米諸国のように水道水中のフッ素で虫歯を予防することはできません。そのため、日本ではフッ素入り歯磨き粉やフッ素塗布(小児歯科で行われる処置)などで補うのが基本的な対策となっています。

◯地域に応じた予防ケアのすすめ

水質によって口腔内の環境は変化します。以下に、住んでいる地域や利用している水の性質に応じた口腔ケアのポイントをまとめました。

・硬水地域に住む方(海外赴任など):歯石がたまりやすいため、3〜4か月ごとの歯科クリーニングが推奨されます。

・井戸水や古い配管の地域に住む方:歯の着色が生じやすいため、定期的なチェックと着色除去が必要です。

・軟水地域の方(日本国内ほぼ全域):歯石はつきにくいですが、酸性飲料による酸蝕症に注意し、摂取頻度を見直しましょう。

・共通の対策:唾液の分泌を促すために、こまめな水分補給や咀嚼(そしゃく)を意識することが、口腔内を健康に保つ基本となります。

◯まとめ

水は私たちの健康を支える重要な存在でありながら、その水質の違いが歯に与える影響については、まだまだ一般に知られていません。しかし、歯科の現場や研究では、水の硬度や成分が歯石の形成や着色のリスクに関係していることが次第に明らかになってきています。

日々飲んでいる水を少し意識することで、自分に合った適切な口腔ケアを考えるきっかけになります。ぜひ、ご自身の住んでいる地域の水質にも注目して、より効果的な予防歯科を心がけてみてはいかがでしょうか。

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