ミニインプラントとは?
2024年12月3日
デンタルインプラントの中でも、特に小さいインプラントというものがあります。従来よりも小さく、寿命および強度も確保できる上に、後発の症状も抑えられるとされます。このインプラントについて、今回は詳しく見ていきましょう。
なお、今回はインプラントの構造も含めて説明する必要があるため、専門的な用語が多くなっております。まずインプラントをご存知ない方は先にそちらから確認されることをおすすめします。
|目次
- ◯ミニインプラントとは?
- ◆「IT Implant」シリーズ
- ◆従来品との構造的な違い
- ◆新旧タイプの違い
- ◆他のインプラントとの違い
- ◆適応の幅が広がったインプラント
- ◆素材
- ◆最適な表面性状の付与
- ◯まとめ
|ミニインプラントとは?
◆「IT Implant」シリーズ
さて、ミニインプラントとはその名も、「IT Implant」というものです。プラトンジャパンという会社が販売している製品になります。(以下、製品資料からの参照を含みます)
千葉県の袖ヶ浦で開業されている飯島俊一先生とプラトンジャパンが共同開発した「IT Implant」シリーズは、歯科用インプラントの既存品における様々な問題点をクリアするとともに、超高齢社会における患者満足度向上に寄与するインプラントシステムとして期待されています。
◆従来品との構造的な違い
人工の歯根部であるフィクスチャと中の芯であるアバットメントの嵌合形態(はめあい)に、従来のスクリュータイプでなく、茶筒のようにかみ合うテーパーロック構造が採用されています。
中の芯を止めるアバットメントスクリューというものがありますが、IT Implantはこれを必要とせず、さらにアバットメントを内冠とした内外冠構造による上部構造作製を行うことで、マイクロムーブメントとよばれる微小なカタツキや余剰セメントの問題をクリアするとともに、メンテナンス時の作業性にも優れたインプラントシステムです。
◆新旧タイプの違い
IT Implant Systemは、開発背景と構造によってStypeとSEtypeの2種類に区別されます。
「IT-S Implant System」は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する「平成28年度医工連携事業化推進事業」に採択された事業テーマ「口腔内環境の変化に対応し、長期予後を確立する歯科用インプラントの開発・事業化」の支援を受け開発された製品であり、皆様が想像する人工の歯根を有する従来のインプラントシステムです。
新しい「IT-SE-Implant」は、さらに細かい口腔内での環境に耐えうるため、フィクスチャと呼ばれる人工歯根を2段構造とし、骨吸収に応じ2段目を部分的に交換することで、表面処理部の露出を回避するとともに感染を防止し、長期予後の確立を図る目的で開発を行いました。
◆他のインプラントとの違い
従来であればインプラントと上部構造はバットジョイントという、突合せ同士が平行の形をしていましたが、ITインプラントは日本の精密加工技術に基づく1.3°のテーパーロック構造の採用により、マイクロギャップ・マイクロムーブメントを軽減しインプラント周囲炎を防止することが期待できます。
◆適応の幅が広がったインプラント
インプラントとインプラントの間は、3mm以上、天然歯-インプラント間は1.5mm以上離さないといけないという決まりがあります。従来であれば、欠損に対し隣在歯が傾斜・移動してきている場合はインプラントに対する適正な間隔が取れず、症状によっては適応外となってしまうケースが多々ありました。
IT implant systemは従来のインプラントより1mm以上小さくなりますから、埋入計画は変更しなくても、インプラントフィクスチャーを変更するだけでも埋入可能になります。
◆素材
素材は、人工股関節などに使用される医療用チタン合金を採用することで、より高強度を実現しました。
一番大きい効果は、インプラント特有の歯周病であるインプラント周囲炎のリスク軽減です。
◆最適な表面性状の付与
インプラントに大事なのは初期固定です。埋入時にどれだけ初期固定が行えるかで予後が変わります。IT implant systemには人工歯根の表面に特殊加工を施すことで、早期の骨形成、強固な骨結合を実現することができました。
これにより埋入から荷重をかけるまでの治療期間が短くなるというメリットが生まれます。
|まとめ
インプラントの新しい選択肢として、材料や構造、表面性状等が進化したミニインプラント。今回はその中で代表されるITインプラントについて紹介しました。
- インプラント特有の周囲炎などの予後の改善
- 長期におけるメンテナンス性の上昇
- 小型化したことで埋入しやすくなり、適応できる人が増えた
- 表面加工で骨形成にかかる治療時間も従来より短くなった
このようにインプラントの既存品における様々な問題点をクリアすることで、超高齢社会における患者満足度向上に寄与するシステムとして期待されています。ご検討されてみてはいかがでしょうか。